夏目漱石「行人」考察(10) 一郎の苦悩は「モテたいよ」
1、一郎の苦悩に即座につっこむ二郎
「御前メレジスという人は知ってるか」
「名前だけは聞いています」
(略)
「その人の書翰の一つのうちに彼はこんな事を云っている。――自分は女の容貌に満足する人を見ると羨ましい。女の肉に満足する人を見ても羨ましい。自分はどうあっても女の霊というか魂というか、所謂スピリットを攫まなければ満足が出来ない。それだからどうしても自分には恋愛事件が起らない」
「メレジスって男は生涯独身で暮したんですかね」
(「兄」二十)
(※ 著作権切れにより引用自