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Vaio Stera ~転生先で推し変しかけてる~ 一章#3「急に色んな人達に絡まれて創田クンよくわかってないよの回」

前回

VaioStera ストーリー
創田結人は、「バーチャルの星海へ異世界転生」する。
そこでは、異なる異世界からやってきた異世界のVチューバーである、「Vstar」達が存在していた。
Vstar達は、己の世界のVstar文化を滅びから救うために、Virtual Battle Royaleという、Vstarとしてのパフォーマンスバトルにて勝利を目指す。
創田結人と、Vstar達に戦いの中で待ち受けるものとは!?

会議室らしき一室。とあるVstarのチームの会議が行われており、その会議が終了する所だった。

「ということで、最初のバトルである『ファーストロイヤル』の三か月前のファン獲得戦はこの路線でいくと。そうまとまったという事で。あと、最近は『ねおんわーるど』にプロデューサーが加わったらしい。それも、俺様達と同じく異世界転生者だと。後で様子を見に行くぞ」

茶髪の美麗な男性らしきVstarが、会議室によく使われそうなデスクの近くに置いてある椅子に座っている、三人のVstarに声を掛けていた。

1人は、椅子の上でうずくまるオレンジ髪で黒いジャケットの男性。1人は、雪のように耽美な白と水色の髪の男性。1人は、緑を貴重とした服の小柄なVstarだった。

「へぇ……ようやくあそこが楽しくなりそうだねぇ……。”クイーン”もようやく勝負に本腰入れるんじゃないかな?」

 
 耽美な白と水色の髪の男性は、楽しそうに語る。

「どうせろくなやつじゃない……」

言葉に憎しみが混じった声でつぶやく緑色の女性のVstar。

「素人はこわいすよ……いや素人だからこそ可能性を秘めてるのか……? ああ、不安だ不安だ……」

 
やたらとネガティブな、オレンジ色の髪の男性。

「ハァ……。覇王、そのオフの時のやたらとネガティブな状態、なんとかならんのか? 若干被害妄想じみてるぞ」
「すいませんガテリアさん……。この姿でもですね……。この世界に来てから、ずっとVstarやる時のテンションでいられないんすよ……。ああ、素人怖い」

オレンジ髪の男性は、何かに怯えるようにガタガタと震えていた。

「アハハ。ヴェインちゃんは相変わらず心配性だねー。大丈夫だよ、いざって時にテンション高くなったら最高のヴェインちゃんになるからさ」
「のんきだな、すのう」

やれやれ、という感じの緑色の女性。

「りぼんちゃんはもうちょっと肩の力抜いた方がいいよー? あと笑うと絶対可愛いって! ほら、にこーって」
「ふん」

そういって、りぼんと呼ばれたVstarは会議室から去っていった。

「あら、相変わらずつれないな、りぼんちゃんは」
「スノウ……。もうちょっとお前は気遣いを覚えろ。アイツは、かなり色々とあったんだ」

 
 呆れた様子のガテリア。そこでスノウは、妖しい笑みを見せる。

「それは皆に当てはまるから、それはいいっこ、なし。さて、ボクらも会いにいこか、ヴェインちゃん」
「ええ、会うのか!?!? 怖いやつだったらどうするんだ!?!?」
「いい加減にしろ覇王……」

はぁ、と溜息をつく茶髪の男性らしきVstar。

「スノウ、連れてけ」
「はいよー。ヨイショお」
「降ろしてくれーー!!! 誰か! へるぷ!! へるぐぇえ……!!」
「大人しくさせといたよ」

スノウの首絞めで、大人しくされるヴェイン。

「グッドだ、行くぞ。りぼんにゅーも呼んでおけ」
「オッケー! 『こねちゃん』でとりま伝えとくね!!」

そうして茶髪の男性らしきVstarと、覇王を抱えたスノウが、会議室らしき場所を出た。

 
〇ー〇ー〇
 

その後、コロニーは創田にスマートフォンらしきものを渡し、「ご案内は以上となりまぁす♪ あとはフェニ達から説明を聞いてくれ、ではまた今度」と、ゲームでたまに見るデジタルな粒を残しながら消えていった。

これを見て創田は、「ますますVRSNSみたいていうかゲームみたいだ」と思っていた。

さらにその後、フェニ達に連れられるがままに創田来た場所は、広場のカフェテリアみたいな場所だった。

途中、色々な景色とかをチラ見していた創田だったが、VRSNSってこういう感じなんだろうなぁとは、思った。
デジタルで綺麗な風景が広がる感触を、リアルタイムで体感する経験は、創田にとっては新鮮な体験だった。
また、他で動いてるバーチャルキャラクター、『アバター』を見ていると、まるでゲームの世界の住人が生きているような感触を得ていた。

カフェテリアについた後は、テーブルに付き、そこで女性ら(?)三人と、席を向かい合って座っていた。
目の前にいる人物達に対してゲームみたいだと印象を持っている創田とはいえ、女性との距離が近い事に若干ながら照れていた。

「あ、あの……これから何を……?」
「それはね、ユイト君をあれやこれやをて・ほ・ど・き♡ するんだよ。フェニちゃんとレンちゃんの後にね」
「いやしませんよ?」
「いきなり何言ってんの? 酒でも飲んだ?」
「てへぺるん☆」
(てへぺろみたいだ……)

そんな三人のやり取りを創田は見ていた。仲が良さそうだな、と雰囲気から感じていた。
さてさて、と言いながらXesyは本題に入る。

「新人プロデューサーユイト君にむけて、チュートリアル! だって他にも色々と説明しなきゃね! VBRもだけど、とくにワタシ達の事をね~~」

と、Xesy(ゼシー)。

「なるほど……」
「私達も、正直最初に来た時は『分からない』が多かったので、順に説明していきますね」

と、青髪の美少女レンが言う。というか創田にとっては、(このレンって子、露出多いな)と思っており、若干目をそらしていた。
というか腕を肩までだして、腹も出ていて足もかなり出ているのは、色々と最早「水着っぽい」と思った。
そこをXesyに感づかれたのか、Xesyがからかってきた。

「んん~? ユイト君若干レンちゃんの方から目をそらしてるね~?」
「プロデューサー? 別にみても怒りませんよ?」
「えっと、その……」
「あれだね!! ゆいと君は女の子耐性が無いってやつだね!」
「ヴッッッ!!!」
「すごいダメージが入ったね~。でもそのうちレンちゃんをずっと見ていたくなる時が来るから大丈夫だよ」
「あ、あははは……」

レンから若干の苦笑いをされてしまい、創田は若干落ち込んだ。確かに、今の今までそこまでリアルの女性と縁があるわけではなかったが、そこまでハッキリ言われるのは中々のダメージではあった。

「ま、わかんなかったらそのスマホでぱぱっと見る感覚で調べたらいいよ!! ヘイなんとか! ってやつだね!」

と元気にいうフェニ。この美少女はグイグイ来てるので、ここまで接近されるものだろうかと、創田は若干どぎまぎしていた。
ここの女性達(?)は、さっきからアタックが強いので、女性と縁が無かった創田としては、なんというか、未知の体験、という感じだった。

それにしてもと、創田は若干美少女達(?)から目をそらし、周りに目を向ける。
先程のビル施設らしき場所から出た周りの景色や人物を見ると、本当に色んなアバターらしき存在が歩いていたり、摩訶不思議な建物が見えていた。
創田自身はVRSNSはやったことないものの、きっとやるとこんな感じなんだろうなと思っていた。

「とりま何から聞く~?」
「そうですね、色々と聞きたい事は山ほどあるんですけど……」

まるで、いきなり選択肢が膨大なオープンワールドのゲームに連れてこられたような感覚の創田。
だが、「まずはこれだよな」と思い、質問した。

「皆さんについて、改めて自己紹介を良いですか? 詳細とかも聞きたいですし」
「オッケー! じゃあまずはアタシからだね!!」

元気よく切り出したのは、ピンク髪の美少女、楠咲フェニだった。

「アタシは、最初にも言ったけど、バーチャルStarの楠咲フェニ! 元気にする事をモットーに動画投稿や配信してるよ!!」
「なんだか、本当にネットで活動する人みたいですね……」
「まぁ、キミの世界だと名前はブイチューバー、だっけ? それみたく、アタシ達の世界では『Virtual Star』というのがあって、そこでは『Vstar』って呼ばれてるの。まぁアバター纏ってネットで活動する人、って覚えてもらえたらいいよ!!」
「なるほどですね」

Vチューバーとは、創田の世界では「アバターを纏ったネット活動者の総称」みたいな所があったりする。ようはそのVチューバーが別の世界では、Vstarと言われてるようなものだろう。創田はそのように解釈をした。

「ここのXesyことぜっちゃんは同じ世界。ちなみにこの青髪せくしーぷりちーなレンちゃんは違う世界出身だよ!」
「え? 全員同じ世界出身じゃないんですか?」

また複雑な事になってきて混乱しそうになる創田。こういうのって全員同じ出身が普通では? と思ってしまう。

「まぁ気持ちはわかるけど、早い話レンちゃんと気があってね~。そこでチーム組んだの~」
「あの時は、二人に助けられましたからね……。一蓮托生、だと思ってます」
「それは言いっこなし! レンちゃんの勇敢さに、アタシは賭けたい! って思ったから組んだの!!」
「なにか、色々あったんですね?」

その事を聞くと、途端に三人の顔色が変わる。すると、フェニは気まずそうに、こう言った。

「それは……まぁ。あわせて、色々『ありすぎた』ね」
「色々あったね~。どうしようフェニちゃん、何から話そうか?」
「できれば言いたいのは山々なんだけど……。それはまた今度で!!」

一瞬暗い顔を見せたフェニ。その顔には何かがあるな、と。鈍い創田でも察する事ができた。重いというか、重すぎるのはきっと気のせいであって欲しい。

「そう、ですね。無理に話したくなければ、大丈夫ですよ」
「やさし~~~! 気が利くね、プロデューサー!!」
「まぁ……、私の方でもそのうち言いますね」

と、何か気まずそうなレン。

「とりま説明に戻るとして! ぜっちゃん! 自己紹介を!」
「あいあい~。わたしはX、e、s、yと書いてゼシーだよ~。特技は対戦ゲーム! よろしくね~」
「ぜっちゃんはイジると面白いって覚えてたらいいよ!」
「はいイジラれキャラで~~す、ってそうなの!?」

勢いよくツッコむXesy。創田的には、「まんざらでもない」という顔に見えた。

「え、今更って感じですか?」
「も~~、レンちゃんもやめて~~!」
「あと普段の口調がかなり変わる」
「あー、それは、うん。めちゃくちゃかわる~」
「その時だと、男ってなりますね」
(どんな感じだというんだろう……)

と、創田は思わずにはいられなかった。

「次! レンちゃん!!」
「はい!! 世界創造系Vstarのレン・テオピースです! 特技はエネルギーを用いた創作です! 改めてよろしくお願いします、プロデューサー!!」
「まぁ、未熟者ですけど……」

と、恐縮に思う創田。そこで、今度は、こういう質問をした。

「皆さん、動画チャンネルってもってますか?」
「うん、あるよ! 私達以外の全員もチャンネルを持ってると思う!!」
「なるほど……」

どんな専門用語が飛び出てくるかと思ったが、世界が別でもそこは同じらしい。

「創田くんはどんな動画を出しているか、を聞きたいと思うけどその前にする説明があるの。アタシとぜっちゃんが住む世界と、レンちゅあんが住む世界の話だね! ぜっちゃん、タブレット持ってる?」
「おけまる~! あよいしょ」

Xesyがゲームのウインドウらしきものを空中に出して、そこのウインドウ欄の中からタブレットが出現した。

「おお、ゲームっぽい!!」
「でしょ~? わたしも最初、ここVRゲームっぽいなぁって、思ったんだよね~」
「アタシもVRSNS使ってた時はそれっぽいなぁって思った! レンちゃんは?」
「私はVRSNSを使った事は無いですけど、確かにゲームっぽいなって思いましたね。でも私のとこだとどっちかというとAR? の方がそれを演出してた感はありましたね」
「ARってアレですよね、空間に映像を映し出す的な」
「そうそう~。レンちゃんの世界も特殊だけど、そういう技術は発展してるね~。とりま、話を戻して、タブレットでこういう世界を出しま~~~す!」

そういうと、空間に映像を映し出す。そこには、創田が見慣れたと感じるビル群がそこに映し出されていた。

「え、僕が住んでたとこと同じ?」
「まぁまぁ、ちょい待ち。ゆいと君の世界の事は少し知ったけど、アタシとぜっちゃんと同じ感じだね。多分違うのはVstar文化の発展具合かな」
「違うのは、フルダイブVRゲームとか、リアルビジョンVstarていう『Vstarをパネル一枚でその場に映し出す技術』とか、1万人Vstarライブ技術とか~!」

と、勢いよく説明するXesy。

「1万人? 僕がいた世界……そういう事をやるには1万人もいなかったような……」

創田の世界では、1万人ほどVチューバーになった人はいたが、その規模でのコラボはそこまで無かった。

「1万人Vstar運動会が凄くてね~~、皆で追いかけっことか玉入れとか、水泳とかをやれてたんだよ~」
「それもあるけど、何よりも凄いのは!! なんと、一つの国レベルでVstarがいた! って事だよ!! なんと2億人がVstar!」
「2億人!?」

創田はフェニ達とほぼ同じ地球だと仮定して、世界人口もほぼ同じと想定すると、全人類の約40分の1がVstarというのは、確かに国家設立ができると感じていた。

「そこまで盛り上がってるんですね……」
「まぁ、盛り上がってはいたんだけどね……」
「……うん。ごめんけど、まだゆいと君には言えない、かな」

そこで途端にうつむくフェニ。その顔を見るに、かなり重い事があったんだなと創田は察し、滅んだ理由は二人が言うまでは聞かないでおこうと、心に決めておいた。

「嫌であるならば、無理しないでください。人には言えない事、一つや二つあるものです。いきなり来た身ですし、それは自分の中で取っておいてください」
「……ユイトくん、優しいね」
「秘密は無理に掘り起こさない主義ですから」

創田の人生経験上、こういう事は無理に喋らせないのが良いと、学んでいた。
相手を自分に深入りさせないというのもあるが、無理に喋らせるのは、相手が心のどこかで強い負担を強いらせてしまうものだと、父親から学んだ事ではあった。

「あちゃー、元気づける立場なのに、ニュービーのゆいと君に、元気づけられちゃったね! こりゃアタシらのチームも安泰かな!!」
「はじめは私も少し不安でしたけど、創田さん、いや結人さんなら大丈夫ですね」
「持ち上げすぎですよ」
「大丈夫!! アタシが蒔きすぎた種というのもあるし、その内伝えるね!!」

元気そうになるフェニを見て、少し安心する創田。よくわからないけど、とりあえず彼女らの心の整理を大事にしようと、彼は思っていた。蒔き過ぎた種、というのも気になるが今は聞かない事にした。

「お次はレンちゃん~!」
「はい! じゃ、早速ですが、左手を御覧ください」
「左手?」

そう促され、レンの綺麗な左手に注目する創田。
なんと、彼女の手の根本から光の玉が出現し、そこから機械が出てきた。

機械のチューブや鉄の液体のような物が形を形成していく。

その機械は彼女の手に纏っていき、次第に大きな手の形へと変貌していく。
最終的には、「なんかとがった指を持つロボットっぽい手」になっていた。

「おお~!?」
「レンちゃんのそれ、相変わらず凄いよね~~~! 男心、ぢゃなかった、めっちゃロマンを揺さぶるよね~!!」
「わかる! めっちゃカッコいいもん!! せくしーくーるだよレンちゃん!!」
(若干だけどアタックが多いな……、フェニさんのレンさんに向けてのアピールが……)
「私の手は『World Maker』といって、自分の創りたい世界と光を表現するのに使うんです。大地を操ったりして山とかも創れますし、土の壁も創れます。光に関しては、レーザーや映像を作れたりします。この中には皆さんの言うスマホみたいな機能を持ったCPUがあって、色々とできるですよ」
「めちゃくちゃファンタジーって感じがする……」
「ね、ファンタジーだよね」

創田の一言に強く頷くフェニ。

「今回は、コチラの映像を見せますね」

そう言うとレンの機械の手から、映像が映し出される。そこには、何やら円錐代に近い形のドーム状の建物が映し出されていた。

「これは?」
「このドーム状の建物は、私達の世界では、塔と言って、これがきっかけで『塔世界』と呼ばれるようになったんですよ」
「ちなみにわたしらの方は、『Vstar発展世界』だね~」
「なるほど……」

確かに、フェニ達の世界のⅤstar文化はこれ以上ない程発展しているという感じがした。
これ以上ないピッタリな言葉だろう。

「私達の世界では、2030年頃に地球規模で地殻変動が起きて、人口の約半分がいなくなったんですよね。そこで、多数の怪物が生まれたり、人類の中にエネルギーを操る人間が誕生したりしました。私達は外の脅威から逃れる為に、塔と呼ばれる建物を建てて、そこに暮らしています」
「なんだか、ファンタジー小説みたいだ……」
「他の世界の方もファンタジーですけど、私の場合だと良く言われますね。私が生きてる時代だと、ドームの数も増えて怪物の脅威も減りましたので、代わりにVstar文化が発展していった時代となりました」
「レンさんの世界にも、Vstarが?」

ここで、創田は最初にフェニが言っていた、「どうして他の世界にVstarがいるかはわからない」という言葉を思い出した。
文化がある程度共通する、というのはあるとは思うが、世界を越えても存在するVstarというのはどういう事なのだろうか。
創田は、そのあたりに強く謎を感じていた。

「不思議ですよね。世界を越えてVstarが存在している。しかも、6つの世界に。理由は分からないですけど、これもきっと理由があるのではと、勝手に思ってますね」
「きっと並行世界を越えたってやつだよ~」
「並行世界、か……」

そういや異世界って平行世界に該当するのだろうか。と思った創田だが、その考えには執着しなかった。

「話を戻して、私の世界では他の塔と塔を繋ぐ役割として、Vstarが存在してて、Vstarのエンターテインメントが文化を発展させたって感じですね。そこでは、コラボを『Collaboration Link of Tower to Tower 』、『くると』って呼んでて。まぁコラボですが。とにかくコラボを大事にしてて、塔と塔同士の絆を深めていったってのがありますね」
「文化の架け橋ってやつだね~」

なるほど、とXesyの解釈に同意する創田。所謂、文化の繋ぎを離れた塔同士が繋がって文化を大事にしていってるようなものだと、創田はそう感じとっていた。

「キズナこそがVstar! とも言われてましたね。でも、それを独占しようとした勢力もいたりして大変でしたね。ここら辺は……今は混乱すると思うので、また今度話しますね」

そういってレンは、ロボットのような左手に光を纏わせ、左手を元に戻した。

「まぁ私も色々ありまして、半ば二人と自分の所の世界の為に、と思って『ねおんわーるど』としてフェニさんとXesyさんと手を組んだ感じですね」
「レンちゃん、フェニって呼んで!!」
「あ、はい……フェ……ニ……。私が所属していた世界というのはこんな感じですね」
「なるほど、貴重な体験でした」

レンの話はまるでファンタジー小説の世界を恥ずかし気もなく聞かされたと感じていた創田だったが、いざこうして目の前の本人がいると、リアリティを感じていた。
だが、ねおんわーるどという言葉は初めて聞いた。
創田の印象としては、『この3人のチーム名なのかな』と思った。

「次は、どんな動画出しているか、なんだけど、とりあえず1人ずつ出していこうか! じゃあアタシから!!」

フェニがVRSNSで物を実体化させるみたく、手からポリゴンを出し、それがスマホの形へと成っていった。

ピンク色のスマホをフェニは操作し、創田に画面を見せる。そこで、見る前に創田は疑問を抱く。

「今更なんですけど、この世界ってネットがあるんですか? 動画というワードを聞いてたらあるかなって思って」
「そうだね、まずそこからだよね。早い話、アタシたちの世界に似ているレベルだよ!! そこの住人がSNSしてたり動画サイト見てたりするよ!! どれぐらい似ているかというと、細かい所まで似ている感じ!!」
「異世界にまで来てネットですか……」

一体全体、ネットワークの仕組みとかどうなっているんだろうとは思ったが、説明を聞くのは絶対面倒なので聞かない事にした創田だった。

「んじゃ、話を戻してー、アタシは元気にするをモットーに活動してるの!! んで、動画はざっくりまとめてあるやつから適当に流すね!!」
「どれどれ」

創田はフェニのスマホの画面を覗き込む。そこには、なんというか。
爆発、という言葉が似合う映像が流れてきた。

『おはフェニーーーックス!! 今日も一日立ち上がっていこう!!』
『やればできるんだから!!! いける!! いける!! いけそう!! いける!! いけるんじゃああああ!!!!』
『気合が欲しい!?!?!? 気合を注入ー!! ドーーーン!! ズバーーン!!! ドドトドーーーーン!!!』
『たまには、ゆっくり休もう?』
『おはよおお! 朝フェニーーックス!!! どかん!! どかああん!!』
『夢は、言ってれば叶う!!! 私から元気をもらえば!! かなう!!! ドドーーーン!!』
『地球中の元気を貴方に!! ハアアアアア!! 元気のないキミに元気をおおおおおお!!!!!! おるああああ!!!』
『疲れた時には、やすもう』

「元気出た? ゆいと君」
「元気というか無理やりニトロを注入してくるような動画ばかりでしたね」

あと音量が若干でかく、少し耳がキーンとなっていた。創田の目には、ひたすら高いテンションのノリを出してくるような動画が多数あり、不思議と体が熱くなっていた。

(なんか有名なテニス選手がこういうのだったの思い出したな……)

名前は忘れたけど、「もっと、熱くなれよおおおお!!」に通じるモノを感じた創田だった。

「では、次に私のをどうぞ、プロデューサー」
「どれどれ……おおう」

そこには、手から青い光の固まりを出現させながら、何かモンスターらしきものを創る映像がそこにあった。

「え、なにこれ?」

創田は驚かずにはいられなかった。なんというか、CGを手で動かしている、という印象の映像がそこには流れていた。

「いつ見ても凄いよね~」
「うん! まさに異世界の技術! って感じ」
「そう言ってもらえると嬉しいです……。元の世界では、そこまで評価はされませんでしたから……」
「私、後でレンちゃんの動画拡散するね!! 確かこの世界のSNSでゲットしたアカウントがあるし、そこでする!!」
「使いこなしてるのが凄いですね……」
「あとで使い方教えるねプロデューサ~」

了解、と創田は軽く返事。元の世界でも使えるようなSNSがあるのは驚きなのだが、それより気になる事があった。
SNSがあっても、ゆいたんのは見れないよな、と。
彼女らはSNSを楽しんでいるようだったが、自分としては、SNSは色んな推しのVチューバーや推しのゆいたんのアカウントさえ見れれば、特には気にしてなかった。
果たして、この世界でもSNSを見る意味はあるのだろうか。

「んじゃ、最後にわたし~」

そう考えているうちに、Xesyが画面を見せようとする。そこで、とあるグループが声をかけてきた。

「ごきげんよう、ねおんのお嬢様方。その席、俺様達も加わろう」
「え、ガテくん? ていうか、『リベル』の皆?」

フェニが驚いた顔を見せ、創田が後ろを振り返ると、そこには茶髪の美麗な男性らしきアバターと、何やら大柄の男性を抱えている、ファンタジーの王子様のような恰好をした美少年がそこにいた。

「噂の、異世界転生してきた新人プロデューサーの顔を一目見ようと思ってな。スノウ。そろそろ覇王を起こしとけ」
「はいは~い!! 起きて、ヴェインちゃん! あ、よいしょ~!」

美少年が、大柄の男を降ろす。そしてその大柄の男は、起き上がって、不安そうに周りを見回していた。

「はっ! またもやオレはスノウに連れてこられたのか!? ここはどこだ!? 敵基地か!?」
「もう、ビビりでネガティブはモテないよー? ほら、席をねおん組のとこにつけて~ー!」
「うっ……ビビりについては分かった、努力しよう。テーブル運べばいいんだな」

 
 そう言って、ヴェインと呼ばれたオレンジ色のオールバックヘアーの男が、カフェテリアのテーブルを拝借し、ねおんわーるどの所の机へ寄せた。

「失礼しますよっと、お嬢さん方」
「は~い、ヴェイくんまたスノーに連れてこられたんだ、相変わらずだね~」
「ははっ……。また知らない人に対して怖いなぁって思っちまって……」
「結人さんは怖くないですよ、むしろとても良い人です! 会ってすぐですけど、仲良くなれると信じてます!!」
「……へぇ、そこまで言うのか」

声色が途端に変わった、ヴェインと呼ばれた男。そこで急に彼は、目の色が変わる。

「よお、妖精ちゃん!! 異世界に来てまだ不安がってないかい? 帰りたいと思ってないかい? 家族との絆を感じていたいかい? それは全てポジティブノン、ダイ! そう、この俺、は、おおおう!! ヴェイイイイイン!! が、いれば心配ないってやつだぜベイベッ!!」

途端に決めポーズをして、一瞬でどこから出したかわからないマイクが現れ、自己紹介をするヴェイン。創田はひたすら困惑して、「は、はぁ」としか言うほか無かった。

「覇王(はおう)ヴェインだ! よろしくだぜぃ!! そうだ、スマホの『こねちゃん』は使ったかい? あれは便利だからとりま俺が登録しとこう!! ちょっとそこ失礼!!」
「!?」

すると、ヴェインが創田の懐に手を入れ、そこから創田のスマホを取り出す。

「えーと、ここをこうして、ハイ終わり!! ついでにねおんとリベサの俺ら全員と友達登録しといたぜ?」
「え、えっと」
「まぁ『こねちゃん』っていうのは『Conect Chanel』つってチャットアプリみたいなもんだ!! 妖精ちゃんの世界にもあるだろ? チャットが来たらぴろーんってなるアレ」
「あ、ありますけど……」

ヴェインの言うチャットアプリというのは、所謂『メッセージを送り合って内密なやり取りをするアプリ』の事を言っているのだろうと、創田は思った。

「おい覇王、落ち着け。まずは俺様達、『反逆之従騎士(リベル・サーヴァンツ)』の自己紹介からだろう」
「おっとすまんな、ガテちょん!!」
「ハハハ! ガテちょんだって!!」

と、王子みたいな美少年が笑う。ガテリアと呼ばれていた人物は、やれやれ、という感じだった。

「変な勘違いされるから止めろ。どうも、フェアリー。俺様はガテリア・フォンドルフ。投資家系Vstarだ。よろしく」
「創田結人です。よろしくお願いします」

投資家系っていうのは、凄い響きだなぁと創田は感じた。お金の話とかをしてくれるのかな、と思った。

「挨拶のよいジャパニーズだな。礼儀正しいのは、良い事だ」
「はい……。(なんかキャラがコロニーと被ってるような)」
「そこでこっちの危険人物がうおっ……!?」

 
乱暴にガテリアがどかされ、そこには創田に跪いて手をとってきた、王子の様な男性がいた。

「初めまして子猫ちゃん。ボクはスノウ。全てを持っている王子様さ。好きなのはキミの様なカワイイ子猫ちゃんです、よろしく」
「は、はい……(え、なんだ!? 離してくれない!?)」

創田は自分の手がかなり力強く手が握られており、手を離したくても離せなかった。
いわゆる、「コイツヤバイ」状態である。

「キミの声、キミの容姿、キミの魂!! ボクのこの魂に大きな一本が立てられる程感じた!! なんてステキな殿方だろう!! いっそこの場で襲ってしまいたい!!」
「オイオイスノウ……」
「というわけで毎晩セッ〇スを約束してつきあほげあ!!!」

何かとんでもない事を言われた気がする創田だが、途端にヴェインがスノウの頭をしばいた事で忘れた。

「このあんぽんたん!!! 何初対面の相手を卑猥な事に誘ってんだ!!!」
「え~~~ヴェインちゃんいいじゃん久しぶりに滅茶苦茶好みだったし~~~~」
「ダメだよ~! ユイト君は私のものなんだから~!」
「お、なんだボインくん。お前から食ってやろうか?」
「ヤダ!! ヘンタイ!!」
「けち~~~」
「フェニ……なんですかこの地獄は……」
「いや~~~アタシげらっげらっ笑いながら見てる」

あひゃひゃと笑うフェニ。いや助けてと、創田は思わずにはいられない。

「いやフェニ、貴様も止めろ。自分のトコのプロデューサーの危機だぞ一応……」
「いいから子猫ちゃん早くディープキスから」
「お前は黙れ!!!」
「いてゃい!!!」

あひゃひゃひゃと笑いながらコチラを見ているフェニ。創田は「早くニゲタイ早くニゲタイ早くニゲタイ」と、危険感知センサーが働きまくっていた。

「まぁーなんだ、りぼんは今いねぇけど、とりあえずウチらの紹介から」

と、ヴェインが話を切り出そうとしたときに、サイレンかと思うものがすぐそばで響き渡った。

「あああああアアアアアアアアア!?!?」
「「「!?!?!?」」」

一斉に何事かと振り返る一同。するとそこには。
純白のドレス。純白の髪。青いバラの髪飾り。
そして。
フェニにそっくりな顔を持つ美少女がそこにいた。

「え、フェニさんが……」

もう一人、という前に。その美少女は途端に叫びながら創田に向かって突進し始めた。

「ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「えっ、えっ、えっ」
「リイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!」
「ほげああああああ!!!」

周囲を盛大に吹き飛ばしながら創田に猛烈なタックルをぶちかますフェニそっくりの美少女。
そして1秒も待たずに。

「好き!! 愛してる!!! 結婚する!!!! そして今度こそ一生を添い遂げさせる!!!!!!」

と早口で叫び、そして。

創田にディープキスをしはじめた。 

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次回


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