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息子に紡ぐ物語

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1男1女の子供を持つ平凡なサラリーマンと、父で作家の「長谷部さかな」は、不思議なキッカケから毎日メールをやりとりすることに。岡山県の山奥にある見渡す限りの土地や山々はどのように手…
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2022年11月の記事一覧

【361日目】:病むことの意味

【361日目】:病むことの意味

ご隠居からのメール:【病むことの意味】

病むことにも意味があるとすれば、それはどんな意味だろうか。病むという体験をしてよかったという意味かもしれない。

我が八十三年の生涯をふりかえると、風邪、結核、脳梗塞、肺炎という四種類の病気を罹患した記憶が残っているが、いずれの場合も、無事恢復している。恢復していなければ、こうして生きながらえて、駄文を書き散らすこともない。そう考えると、病むことの意味には

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■【より道‐120】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_尼子氏の滅亡

■【より道‐120】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_尼子氏の滅亡

出雲国の守護代であった、尼子経久は、京極氏の意思を継ぎ、山陰山陽の11ヶ国を制するほどの時代を築きました。

その後、家督を継いだ孫の尼子晴久は、安芸の国人、毛利元就の吉田郡山城を攻撃するも、退陣する結果となり、一時的に勢力を衰退させてしまいましたが、再び、国人たちを配下に治めて、ついには、8ヶ国の守護大名にまで、勢力を拡大させました。

しかし、最終的に西国の覇者となる人物は、毛利元就です。

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【360日目】:老いることの意味

【360日目】:老いることの意味

ご隠居からのメール:【老いることの意味】

老いるとはどういうことか。開けてびっくり玉手箱、太郎は白髪のおじいさん、という悲哀をかみしめることか。いや、白髪は一本も残っていないぞ。歯もみんな抜けてしまった。目は一寸先も見えない。そのうえ、足腰はめっきり衰え、味覚嗅覚障害に悩まされ、認知症が進行中の老いさらばえた身体ーーこの状態で生きていくことに何の意味があるのか。

それでも意味はあるのだと、フラ

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【359日目】:生きることの意味

【359日目】:生きることの意味

ご隠居からのメール:【生きることの意味】

入院中はヒマがたっぷりあり、養老孟司『バカの壁』を二度にわたって読む機会に恵まれた。これもコロナのおかげである。

世の中には、「話せばわかる」と思っている人がいる人が多いが、それはウソか、幻想であると、養老先生はいう。人間同士がお互いに理解したいと思っても、口先だけのことばで理解しあうのは不可能に近く、たいていの人間は話してもわからない。そのうち、テロ

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【358日目】:健康経過観察(三回目)

【358日目】:健康経過観察(三回目)

ご隠居からのメール:【健康経過観察(三回目)】

順天堂大学付属浦安病院で三回目の健康経過観察を受けた。間質性肺炎の炎症はほとんど消えており、新しくできた炎症は一切見られないので、ほぼ完治したみてよいと医師はいう。これにて一件落着である。めでたし、めでたし。

ただし、緩下剤として酸化マグネシウム錠とピムロ顆粒一か月分の処方箋を渡された。一か月後からは市中のかかりつけクリニックから処方箋をもらって

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■【より道‐119】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_尼子晴久という男

■【より道‐119】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_尼子晴久という男

尼子経久は、「応仁の乱」という、足利将軍家の因果応報の時代に生まれました。青年期になると家督を継いで11年間も続いた戦乱の後処理を進めるも、室町幕府から難癖をつけられ、落人となってしまいまいます。

その後、自らの主城、月山富田城を奪還することに成功しますが、そのころからでしょうか。道理の通らない無秩序で、武士道という拠り所のみで支えられた戦国の世を、尼子経久は、その潮流に身を任せ、一気に領土を広

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【357日目】:緊急事態宣言かまん延防止措置など重点措置か

【357日目】:緊急事態宣言かまん延防止措置など重点措置か

ご隠居からのメール:【緊急事態宣言かまん延防止措置など重点措置か】

新型コロナウイルスの感染症対策として日本政府がこれまでに発出したのは緊急事態宣言が四回、まん延防止等重点措置が二回である。それぞれの適用期間は次の通り。

このうち、第二回目のまん延防止等重点措置の適用期間中には私自身も感染が確認され、入院を体験した。その後、私は退院し、まん延防止等重点措置は全面解除されたが、では、それによって

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【356日目】:心が先か神経が先か

【356日目】:心が先か神経が先か

ご隠居からのメール:【心が先か神経が先か】

ニワトリが先か、タマゴが先か。心が先か、神経が先か。「心を整える」のが先か、「自律神経を整える」のが先か。 この難問は、せんじつめると、唯物論か唯心論か、になる。

頭をひねりながら、健全なる精神は健全なる身体に宿る、ということわざを思い出した。英語でいえば、A sound mind in a sound body. 「心を整える」のが先か、「自律神経

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【355日目】ナムアミダブツかアーメンか

【355日目】ナムアミダブツかアーメンか

ご隠居からのメール:【ナムアミダブツかアーメンか】

人間は罪深い存在である。常日頃は勇ましい言動をしていても、死の淵に直面すると、気が弱くなり、神仏に頼りたくなる。死に瀕したときに、どんなホンネをもらすかを含めて総合的に判断しなければならない。たとえば、正宗白鳥がアーメンととなえ、佐藤紅禄がナムアミダブツととなえて、あの世に逝ったのがその例だ。人間の本質は常日頃のタテマエの言動だけで判断すると真

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■【より道‐118】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_塩冶興久という男

■【より道‐118】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_塩冶興久という男

いつの頃か、尼子経久の活躍は、西の覇者、大内義興を凌駕するほどになったようです。

その背景には、同族で近江国守護の六角定頼と通じていたことから、十二代将軍・足利義晴とともに、再び、足利一族と佐々木一族の世を築こうというものだったように思えます。

しかし、中央では、いまだに、足利将軍家を巻き込んだ、細川氏のお家騒動がおさまっていません。細川高国に殺害された、細川澄元の息子、細川晴元が、三好一族を

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【354日目】:高瀬ゴッポーか石ゴッポーか

【354日目】:高瀬ゴッポーか石ゴッポーか

ご隠居からのメール:【高瀬ゴッポーか石ゴッポーか】

私は子供の頃、高瀬ゴッポーと呼ばれた。隣村まで足を伸ばして遊びに行くと、「高瀬ゴッポーが来たぞ。やーい、ダラズゴッポーやーい」といって、からかわれたのである。ダラズというのはのろまのバカという意味の方言。つまり、高瀬ゴッポーは蔑称、差別用語である。

ゴッポーは、高瀬ゴッポーと石ゴッポーの二種類が村の小川に生息していた。石ゴッポーはハゼの一種で

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【353日目】:妙見神社か八幡神社か

【353日目】:妙見神社か八幡神社か

ご隠居からのメール:【妙見神社か八幡神社か】

実家は八幡神社の氏子だったが、神様は他にも数多おわしました。妙見様、薬師様、大師様、荒神様、不動明王様、摩利支天様、天皇陛下様、皇后陛下様、等々。

妙見さんと、親しみをこめて祖母が言うのを聞いたことはあるが、私は妙見神社にはお詣りしたことがない。ネット検索で調べてみると、鳥取県側の隣村に標高684mの妙見山がある。山上には永正年間(1504~152

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【352日目】:吉野村か高瀬村か

【352日目】:吉野村か高瀬村か

ご隠居からのメール:【吉野村か高瀬村か】

私の故郷は高瀬村だが、古代には吉野村と呼ばれ、中世には奥村と呼ばれる時期があったらしい。由緒ある地名を改称するにはそれなりの理由があるはずだ。なぜ吉野村は高瀬村と改称されたのだろうか。あの村には広い野はあるが、村を流れる小川の川幅は狭く、高い瀬はない。高瀬村と称する必然性があるとは思えない。

いや、一つだけ理由らしきものが考えられる。それは我が家に伝わ

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■【より道‐117】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_尼子政久という男

■【より道‐117】「尼子の落人」と家訓が残るほどの物語_尼子政久という男

尼子経久が、時代の寵児となっていくのは、三十歳を越えた頃、時代でいうと1486年(文明十八年)からでしょうか。

それまでは、「応仁の乱」に勝利した足利義尚による幕府立て直しの要請や出雲国守護の京極政経との対立、そして、有力国人たちへの対応に大変苦労していたように思えます。

そして、1484年(文明十六年)に出雲守護代の座を追い出され、初代「尼子の落人」となってしまいますが、そのときに自らを支え

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