マガジンのカバー画像

短歌

14
短歌の記事まとめです
運営しているクリエイター

記事一覧

短歌連作『モノクローム・ワンダーランド』

光源が近くて僕は白くなる 消えちゃう前に影は濃くなる

ここでは血も泥も黒い。君は僕の手を取るそこにインクが溜まる

コマ割りの外を僕らは歩けない(トーンの掠れで視界は滲む)

顔のない彼を知りたいけれどまだ薄くて掴むことすらできない

ケント紙に広がるここが全てだといつから思い込んでいたのか

劈いた尖った声が刺さり抜けないままここへきたんだ、褒めて

7巻で僕の人生は終わった あなたがいたから

もっとみる

短歌連作『架空の恋愛について』

 雲の切間に伸びている光から天使が降りるの、見たことないけど

 自分とは向き合うことが億劫でノイズキャンセル消してこの世を

 暗闇でブルーライトを浴びた指で繋がっている気がするだけ

 見ていた動画を止めたとき寂しい無音が虚空がそばにいるの

 歪みから顔を出したの嫌いな子目が眩むのは貴方のせいね

 目眩って世界が回ると言うけれど回ってるのは私の中身

「愛とは」と語るあなたのしたり顔つねり

もっとみる

短歌連作『連続した私と途切れた毎日』

目を瞑る瞼の裏に星屑が見えたらあなたを迎え入れる

夢の中「入ってますか」ノック音は逆再生で返ってきた

カーテンに透けた陽射しのやさしさは誰かに似てる思い出せない

ゆっくりと目をあけてほら、あさがきたおもい身体もあいしてあげて

寝坊して始まる今日も正常に過ぎてくれるの願うばかりだ

乾いてる肌をなぞった指先は未来を見てからシーツに落ちる

目覚めから完璧だった幼き日々を引きずって、20数年

もっとみる

短歌連作『再燃するゴミ』

1引いて私が消えたらどうします? 有りえなくもないでしょうから

金髪の彼がいくつも立っていて、祈りというのかはたまた呪いか

推しはクズまたは浪費家、嘘つきで結婚できないから大好き

毎日の投稿チェックにいそしめど付かず離れず、心臓を渡す

好きだったそれは事実であり嘘で二度と私に姿を見せるな

連作を読んでいただきありがとうございます。

記事を読んでいただけたら、いいねを押してくださると、と

もっとみる

短歌連作『裸体の春』

「過ごしやすい天気ですね」そうですね、あなたがいないともっと良いです

間違えてすこし根気を見せたときやっぱりやめておけばよかった

染み込んだ憂いの香りに騙されて愛してくれよと裸で迫る

「エモいって言葉で片付けないでくれ」片付けてない、散らかってるの

誤嚥した小さなイチゴのビーズたち君の唾液で美しく見えた

首にあるしこりが膨らむ夢を見てああ、また生き延びたのか、私

大胆な軌道に見惚れて立

もっとみる

短歌 009

おにぎりの撫でまわしたいさんかくは
愛なんて言葉でも足りない

突き抜けて障子の向こう壁は見た
迫るスーパーボールの青色

おにぎりのなりそこないをかき込んで
ため息ひとつ米粒ふたつ

眩しくもないし胸は張り裂けない
声を枯らせど分からない 恋

いっせーのせーで死のうよ私たち
アニメの最終回になろう

変わり身の術であたしの歯並びを
よくして頂戴、あの子のように

これは夢、私のことを知らないと

もっとみる

短歌 008

甘いのが苦手な君に渡したい
ちょっとお高い袋麺とか

あの人に渡してみたいわこの手紙
私の知ってるあなたの全て

刺すように輝くいしに見惚れてる
真っ白な視界で見据える先は

愛や恋とかわからないから言って
その目で口で身体でもいい

あれはダメ、これが良いよを真に受けて
出来上がったわあなたのドール

指先が触れ合うたびに意識して
反吐が出るわね愛だの恋だの

ラブアンドピースを掲げてどうするの

もっとみる

短歌 007

ばあちゃんがショートケーキとコロッケを
まぐまぐ食べるの見て胃もたれ

紙の上をペンが走るの自然とね
そんなふうに絵を描きたかった

生きるため生きるためだと言い聞かせ
食べることをやめないおもち

おててがね、くりーむぱんだね、わたしのて
後に死にたくなるとも知らず

目を描いた。大きな大きな目を描いた
この世の悪はおかげで消えた

「やめよっか」寂しい瞳に吸い込まれ
散りゆく貴方をあつめる夢か

もっとみる

短歌 006

「愛とは」と語るあなたのしたり顔
つねりたくなるそれも愛だと

居留守して郵便受けの不在票
捨てたい思いを破いて捨てた

「心してかかってこい」と敵の君
心は勇者(きみ)にあげたはずだよ

なくなったはずの心が痛むのは
やっぱり息を吹き返したから

いしゅーとかえびでんすとか知らんけど
わたしを馬鹿にしてるんでしょう

インパクトドライバーとか使ってさ
開けたい風穴、地球の裏側

大学を中退したか

もっとみる

短歌 005

満員のスタバでココアを啜る昼
なれない銀座で暇するわたし

喉元のフラッシュバックの感覚で
食事するのが怖くなる夜

鳴る腹がきゅりきゅりぐるんと続いては
涎の海に溺れたねずみ

年末の無敵感には溺れずに
ゆっくりよく噛んで食べる蕎麦

一年の抱負などすでに忘れてる
頃になったら迎えにきてね

虫寄せる黄色いダウンが日を受けて
歩く歩く背中はびっしょり

知ることは楽しいからと本を読む
それで本当

もっとみる

短歌 004

泣き虫の君から流れる液体を
すべて集めて僕になるんだ

ぺてぺてと響く静かな授業中
保健室までの道のりは長く
(うたの日2022/12/03「廊下」)

途中まで見ていた動画を止めるとき
寂しい無音が耐えられないわ

目眩のするような朝、トースト、目玉焼き
バターナイフを突き刺してケチャップ

「愛してる」「ほんとう?」背後の熱が訊く
「本当」小声で目を合わせずに
(うたの日2022/12/04「

もっとみる

短歌 003

駅前で似顔絵を描いて稼げれば
間違えたって大丈夫になる

やる気ないわけじゃなくってやるべきが
やってほしくないそう言ってる

どうしてる?狂った呟き肥ゆるなう
みんなが育てる青い鳥肉

努力して得られるものがこれなのか
未来もないのに星は瞬く

よろこびも、かなしみもぜんぶ、わけあおう
架空のせりふ恋人の声

「やってない。本当だよ」って嘘をつく
やっただろうがやっただろうが

歪みから顔を出し

もっとみる

短歌 002

雲の切間に伸びている光から
天使が降りるの、見たことないけど

ポテチの油でベトつきぬめった手
見ないふりして始めるゲーム

味海苔でご飯を巻いて食べるのが
久しぶりだからちょこっと泣いた

目眩って世界が回ると言うけれど
回ってるのは私の中身

さいきんね、寝汗をかくの夏よりも
悪夢も多いしそのまま死にたい

青い空よりもご飯が好きだから
カメラロールに閉じ込めてるの

寝ていても体は痛いし起き

もっとみる

短歌 001

だれにでもそういうことはあるでしょう
納豆のねばねば髪に付いたり

自分とは向き合うことが億劫で
ノイズキャンセルはそのためなんだ

本をめくる音、質感、しなる紙
文字だけじゃない、ここにあるのよ

乾燥機が部屋を暖めてるから
ばあちゃんがすーっと眠ってる

団地での下校の美しさは清く
中学生が窓で絵画に

「鶏肉も食べられるのよ最近は」
呆れたように微笑むばあちゃん

「ハチミツが欲しいんだよね

もっとみる