短歌連作『連続した私と途切れた毎日』

目を瞑る瞼の裏に星屑が見えたらあなたを迎え入れる

夢の中「入ってますか」ノック音は逆再生で返ってきた

カーテンに透けた陽射しのやさしさは誰かに似てる思い出せない

ゆっくりと目をあけてほら、あさがきたおもい身体もあいしてあげて

寝坊して始まる今日も正常に過ぎてくれるの願うばかりだ

乾いてる肌をなぞった指先は未来を見てからシーツに落ちる

目覚めから完璧だった幼き日々を引きずって、20数年

毎日の心が傷むやすりがけ目が細かけりゃ多少は耐えます

おりこうにしていたことがあだとなることはありますほんとにあります

好き嫌いを語ることをためらって膨れる自意識は手を離れ

お金よりブランド物より折り紙であなたが折ったメダルが欲しい

注ぐ水の表面がめらめらしてゆめのようだ爛れていく皮膚

水底で生きていたいと巻き戻すとけいの針がさす過去はもう

雨が降るまちの匂いに染まってく君の反対の肩を守る

自転車がゆるやかに錆びる紫陽花の花がそれを眺めています

足元の泡になりゆく雨粒を見下しているいやなやつだね

散々な結果で俯いて歩く空気を読まず雲は退いてく

木漏れ日がふとももに射してレオパード飴ちゃんひとつ落とし溶けてく

喉の奥、すり潰された言葉たち吐き出すときはすでに腐って

熱で蒸れる交差点で立ち尽くす(羽で飛べたら)太陽に乞う

変わってく全てが許せなくなってフラペチーノに毒を混ぜてる

髪の毛のように皮膚から伸びていく憎悪が私を操縦している

渦巻いた感情ぜんぶを瓶に詰め保存しているみな腐るまで

デパ地下の夢と希望を味見した店がどこにも見当たらない

ポテサラの玉ねぎ全てが許せずに26歳、全力の駄々

舞い降りる天使の衣は湯葉と海老とモツァレラチーズのトマトソース

川沿いの家にあなたが帰ってるところを見ました、愛しています

恋文を集める小学生に他人の恋路を盗む気はない

死神と呪いのダンスを踊ります愛してくれなきゃころします

帰路に着く足取りが重くなる前にステップ踏んで空を飛ぶ

遠すぎる君の背中をつかむまで息をすること諦めないで

明日こそ、明日こそって何度目の夜がきたのか瞼はふるえ

霧雨のつめたい夜に会いにいくかわいい傘が闇に消えてく

星屑をこぼして消えたその先に永遠の命があるらしい

打ち上がる花火に夏というよりも去年の雨に思い馳せてる

爛漫なあなたに恋をしていると言えます。だって襟しか見れない

連続した私と途切れた毎日を繋げてほしいお好きなように

ひりひりと死に飢えている箱の中 体育座りで祝福を受ける

仄暗い部屋でずうっと待っている窓から来たる焦燥感を

生き延びてしまったという今日の日が息を止めても変わらないこと

浴槽に丸まっている過去のわたしが流れ出てさよなら、二度と

萎んでく心許ない死生観 乾く花びらを撫でる食指

連綿と続く命のかけっこでバトンをわたす相手がいない

心臓を連れ去る君の哀愁を見失なうまで耐え凌いでる

死滅した恋愛細胞が遺す人への不信を振りかざして

湿り気を帯びた目尻を拭う指にはエナメルが、呼吸を奪う

恋愛はもうしないって決めてるし人の前で裸になれない

早朝のきよい空気とすさんでる心が同居する台所

生活がうまくいかない私は打ち上げられたクラゲでした

海の底、青い光が届かないとこまでおいで楽になろうよ

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