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#夏目漱石
『三四郎』(夏目漱石)
三四郎もとうとうきたない草の上にすわった。美禰子と三四郎の間は四尺ばかり離れている。二人の足の下には小さな川が流れている。秋になって水が落ちたから浅い。角の出た石の上に鶺鴒が一羽とまったくらいである。三四郎は水の中をながめていた。水が次第に濁ってくる。見ると川上で百姓が大根を洗っていた。美禰子の視線は遠くの向こうにある。向こうは広い畑で、畑の先が森で森の上が空になる。空の色がだんだん変ってくる。
もっとみる『私の個人主義』(夏目漱石)
*2022年2月朗読教室テキスト②アドバンスコース
*著者 夏目漱石
私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気概が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実のこの自我本位の四字なのであります。
大正三年十一月、漱石が学習院にて講演を行った際の講演録です。今から100年以上前に、5
『こゝろ』(夏目漱石)
*2021年7月朗読教室テキスト② アドバンスコース
*著者 夏目漱石
アドバンスコースでは、先月に引き続き夏目漱石を取り上げます。
『こゝろ』は、1914年4月から朝日新聞に連載された全110話の小説です(最終話は百十一となっていますが、自筆原稿では百三が抜けています)。昭和31年以降現在に至るまで国語の教科書に掲載されていますので、多くの人が”一部分を読んだことのある”物語だと思います。
『それから』(夏目漱石)
*2021年6月朗読教室テキスト② アドバンスコース
*著者 夏目漱石
6月19日は朗読(ロードク)の日です。毎年「朗読の日だなぁ」と思いつつこれといって特別なことはしていません。さてどうしようかと悩むでもなくふわふわと考えていたら、6月19日は夏目漱石が新聞の連載小説『それから』の初回原稿を新聞社に送った日、という記事を見つけたので、今月のアドバンスコースはこの作品に決めました。
先刻さっき