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ペギー・リー『ブラック・コーヒー』を聴いて(小説)

ペギー・リー『ブラック・コーヒー』を聴いて(小説)

 彼はとても疲れていたので、勤め先と自宅のちょうど間に位置する、ファミレスに入った。席に着くが早いか、ウェイターにドリンクバーを注文して、メニューを開く。幾度となく来店したことのある、安価なファミレスだ。薄い紙の上、ところせましと並ぶ料理は、どれも見ただけで味を想像できてしまう。そのお決まりの店内にはいつも通り、聴き心地の良い、無害な音楽が流れている。
 別段食べたいものは無い。ファミレスは、彼の

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ウェイン・ショーター『Schizophrenia』を聴いて(後輩Bとの対話)

ウェイン・ショーター『Schizophrenia』を聴いて(後輩Bとの対話)

私「ジャケ写が好みでなかったから、あんまり期待しないで聴いたけれど、とても良かった。

ショーターの同時期のアルバムだと『Adam's Apple』(1966年録音、1967年発売)の方が評価は高いみたいで、このアルバムは1967年に録音されているけれど、リリースは二年後の1969年なんだね。ちょっと寝かされている。
編成は、ウェイン・ショーター(ten. sax)、カーティス・フラー(trb)、

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マイルス・デイヴィス『ビッチェス・ブリュー』を初めて聴いて + ジャズにおける「黒さ」(後輩Bとの対話)

マイルス・デイヴィス『ビッチェス・ブリュー』を初めて聴いて + ジャズにおける「黒さ」(後輩Bとの対話)

https://youtu.be/r6oMwXXU_z4

私「ジャズを一年半くらい聴いてきて、ようやくフュージョンの良さがわかってきた
いまならハンコックの『ヘッドハンターズ』とかも聞けそう。」

B「良いですね。どっちもファンク寄りのですよね。」

私「そのようだね。
ファンク系の他には何があるんだ?」

B「元がジャズですから大体黒人音楽の要素はあるので、ハービー・ハンコック等と比較すればの

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チャールズ・ミンガス『Mingus Ah Um』を聴いて(後輩Bとの対話)

チャールズ・ミンガス『Mingus Ah Um』を聴いて(後輩Bとの対話)

私「これいいっすね」

B「良いですね、ミンガスらしいアレンジで。テナーソロも良いですね。ブッカー・アーヴィンですかね。」

私「ですね。

なんかミンガスのアレンジってストラヴィンスキーとかバーンスタインっぽくもあるんだよね。これは昔から聴いてて好きだったバーンスタインの曲。」

B「なんでしょうね。エリントンを通じて影響を受けていたりするんですかね。」

私「エリントンとバーンスタイン仲良かっ

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コルトレーン『Ascension』の新しさについて(後輩Bとの対話)

コルトレーン『Ascension』の新しさについて(後輩Bとの対話)

セシル・テイラーとヤニス・クセナキス

私「セシル・テイラーとエリック・ドルフィーだったら後者の方がすきですか?」

B「比較すれば、そうですね。」

私「やはりそうか。これは先入観があるかもしれないが、セシル・テイラーはクラシックの当時の現代音楽に影響を受けているから、いわばクラシック→ジャズと進んだのであって、それはつまりクセナキスなど現代音楽のもつバイタリティーをジャズに持ち込んだと考えられ

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