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ソモス・ファミリアー俺たちは家族だー

⚠️ATTENTION⚠️
この記事では、ミステリー小説『テスカトリポカ』(佐藤究・作)を紹介しています。ミステリーのため核心には触れませんが、内容に関する記述を含むので今まさに読んでいる方、これから読もうとしている方はご注意を!逆に知らないという方はこの記事を読んで興味を持っていただけたら!

さて。
みなさん『テスカトリポカ』って知ってます?昨年直木賞を受賞した小説で、書店で売られているのを見たことがある方もいるかもしれません。
恥ずかしながら私は文科三類にもかかわらずまっっったくと言っていいほど本を読まず……文章を読むのが苦手なんですよね。中学受験のときは国語が一番得意だったのに、大学受験では国語で一番苦労しました😭
そんな私でも約550ページのこの本を読み切ることができました!
きっかけは高1の妹に勧められたこと。妹は私と違って多読家なのですが、友人に勧められて読もうとしたところ、1ページ目で心が折れそうになったらしいです。
何にしろ漢字が多い。地理的固有名詞や政治的な専門用語たくさん。しかしそこで妹は「これを読み切れば頭が良くなるかもしれない…!」という謎の結論に行きつき、ページをめくってからは最後まであっという間に駆け抜け、もう一回最初から読んで2周するほどハマったとのこと。
それだけ面白いなら読んでみるか〜と思い、読み始めたら……もう圧倒されました。
練られたストーリー、壮大な舞台設定、徹底的な調査に基づいた裏社会の描写。
次はどうなるのかハラハラドキドキの展開が続き、こんな私でも読了できたという『テスカトリポカ』、一体どんな話なのか気になりますよね!?(気になる〜!!)ありがとうございます、というわけで大事なところには触れずふわ〜っと紹介していきます!


物語の舞台はメキシコ、インドネシア、日本。
主人公や登場人物は章ごとに移り変わっていきますが、途中から舞台は日本で固定されます。
2010年代のメキシコでは麻薬戦争が激化し、そこで圧倒的な力を誇るロス・カサソラスという麻薬密売人集団がいました。敵対する集団のドゴ・カルテルの奇襲を受け、愛する兄弟、妻、子供たちを失ったカサソラ4兄弟の三男・バルミロは、1人で過酷な旅を続け、道中で非情な決断を下し(=邪魔者を容赦なく殺し)ながらインドネシアにたどり着きます。そこでひそかにビジネスチャンスを探っていたところ、タナカと名乗る日本人の心臓外科医に遭遇。頭も良く腕っぷしも強い、さらにラテンアメリカとは無縁のように思える用心深さを備えたバルミロは、自分の身分を隠しつつ彼と交流するうちに、それまで誰も考えつかなかったような恐ろしいビジネスを思いつきます。互いを疑い、恐れ、信じながら、2人は日本で仲間を増やしビジネスを成長させていくのです。彼らの強力な助っ人として、少年院上がりで身寄りのないコシモという少年が仲間に入ります。実はコシモは物語の序盤で登場しておりそれまでもちょくちょく触れられている人物です。コシモが加入したことでバルミロたちのビジネスはますます軌道に乗り、バルミロは再び巨万の富を得ることになるはずだったのですが……。


このくらいにしておきましょう。
読み進めると「こことここが繋がってるの?」「あれはこういうことだったのか!」などの連続で本当に面白い!
この物語の最大の特徴は、壮大なスケールで展開されていく話の主軸に、神の存在があるところ。
メキシコがキリスト教徒に侵攻される前、そこに存在したアステカ王国の神。人類に与えられた完璧な臓器である心臓。子供の安全を第一に考えて成長を見守る献身的な保母像。みなそれぞれにとっての神がいて、神への信仰は親から子へ、子から孫へと伝わる。そしてその異常なまでの信仰心は人を何でもできるような気分にさせ、その人自身でも予想だにしなかった可能性を引き出す反面、地獄に突き落とす危険性も孕んでいる。バルミロもタナカも、他の登場人物も、神という麻薬の中毒になっているようなものだと私は思いました。麻薬は破滅しか生まないけれど、神は果たして彼らをどこに導くのか。大げさなようですが、私は大抵の人に信じる「神」はいると思っています。宗教的な神に限らず、いわゆる「推し」とか好きなもの、熱中して打ち込んでいるもの、それなしでは人生の輝きが少し失われてしまうもの。この物語では神に突き動かされた人間の生き様が生々しく描かれていて、いかに神の存在が人間に影響を与えるかを全編通して痛いほどわからされます。これは神と人間の物語だと、読み終わって強く感じました。

読書感想文とかめちゃくちゃ苦手だったので本当に支離滅裂な文章で申し訳ないのですが、これで興味を持って『テスカトリポカ』を読んでくださる方が1人でもいれば私はとても嬉しいです!読めば絶対引き込まれます。グロい描写がちょこちょこあるけれど、それでも続きが気になってどんどん読んでしまう。そしてタイトルのソモス・ファミリア(スペイン語で「俺たちは家族だ」)が持つ重みも、読み終わる頃にはしっかりと感じられることでしょう。
麻薬戦争の話なので怖いけど読んだら誰かに勧めたくなる、そんな作品です!お暇なときにぜひ!


ちなみにこれ、私は絶対映画化するべき!と思ったのですがebookjapanのレビューを見たら「絶対に映像化はしないでほしい!」というコメントがありました。まあするならR18-Gは確実ですね……。

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