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お祭りが好きだ

私はお祭りが好きだ。
お祭りにもいろんな種類がある。盆踊りも、花火大会も、商店街の縁日も、全部お祭りだ。もちろん皆楽しくて好きだし、開催されれば高確率で足を運ぶ。だが、その中でも私が「お祭り」というときは、だいたい文化祭とか、学園祭と呼ばれるあのお祭りが頭に浮かんでいる。
「お祭りのどんなところが好きなの?」と何回言われたかわからない。だけど、聞いてくれた人は本当にごめん。自分でも全然わからない。好きな理由を全く言語化できない。聞かれたことはないけれど「『お祭り』って何?」と聞かれたとしても、きっと答えられないんだろうな。だから、章立ても何にも考えないで、ただただ思いつくままに書かせてほしい。自分で勝手に日記にでも書いてたらいいのかもしれない。でも、ここなら皆「何言ってるの?」って言わずに聞いてくれそうな気がした。勝手だけど、ありがとう。

高校生の時始めて行った高校の文化祭で、見たこともないような、聞いたこともないような、触れたことがないような、不思議な感覚に陥った。校舎に入る前に、わっとビラを配ったりプレートを掲げたりしている高校生。沢山のお客さんをさばいているのも同じ高校生で、自分よりも数個年上であるだけなのが信じられなかった。あまりにも衝撃的だったのか、もう5年経って忘れてしまったのか、その時の記憶は断片的で、その上もやがかかったみたいに白い。その中に、ポロシャツや垂れ幕の鮮やかな色がちらつく。

高校に入ったらお祭りを運営したいと思っていた。高校も文化祭基準で決めた。でも塾の先生や学校の先生には「文化祭で高校を選びました」なんて言えなかった。「大学受験がしたいから。東大に行きたいから」って言っていたような気がする。(本当に東大に入っているのは面白いけれど。)私は高校には一般入試で合格していて、推薦入試には落ちた。同じ学校だからプラスマイナスはゼロだけど、落ちた時は泣いた気がする。推薦入試の面接の場所で、「グローバルリーダーになりたい」でも「幅広い教養を身に着けたい」でもなくて、「お祭りがしたい」と言えてたら?どんなに考えたって、これはいつも想像の域を出てくれないのだ。

高校生になって本当にお祭りを運営する委員会に入った。憧れのビビットピンクのポロシャツを着て、二日間合計でフルマラソンを完走するくらい歩いて、声を出して。高2のときは委員長になった。執行代になってからは週に2回から3回、昼休みに一つの部屋に集まってご飯を食べ、会議をした。勉強もしないといけないし、テストはいつも目の前まで迫っていたし、客観的に見たら忙しそうだったのかも。ノートパソコンを片手に走り回っていたし、友達には「いつも文化祭の話してる!」って言われてたし。でも、私の高校生活のほとんどがお祭りで、それがとてもとても幸せだったのだ。少しだけもっといろんなことをしておけば良かった、とも思うけれど、振り返って幸せな気持ちになれるなら、今でもお祭りを共有した仲間たちに無性に会いたくなるのなら、それでいいんだと思う。

では大学は?予想はついたかもしれないし、確かこのnoteで「東大に入った理由」を特集していたときに答えたかもしれない。そう、やっぱり「お祭り」だった。この大学のお祭りよりも、あんな大学やこんな大学のお祭りに心ひかれていたら、私は今ここにいない。きっと違う人間になっていた。

それで私は今、お祭りをしています。どこに所属して何をしている、とは言わないけれど、この大学で大好きなお祭りをしています。

それでも、もう5年も6年もお祭りを追いかけているけれど、私にはその正体が掴めない。準備のためにかけた途方もない時間や計り知れない努力が2日や3日で結実し、そして当日期間が終われば跡形もなく消えてしまうお祭り。私はこの儚さに美しさを求めていないような気がするけど、お祭りが終わった後のあの空っぽになるような感覚が私をまたお祭りに走らせるのかもしれない。

大学4年の春まで、時間がない。私のお祭り人生が終わるまでに、お祭りの正体を知りたい。そしてなぜ私はお祭りが好きなのか、しっかり理解して、正面から向き合いたい。少し怖いけれど。お祭りが私から跡形もなく消え去っても、私が私でいるために。


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