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鍋料理はほどほどにしてくれ 1


紫黒色の真夜中に
流星よりも高速で
スピンしつつ飛来する
ハローキティちゃん紋様の土鍋
キッチンに降臨する
鍋料理の具材の堆積と
その後の亡霊化は
発光するこんぶダシにより
贋の皆既月蝕に憑依する
などとワケの分かり過ぎない
ラヴポエムをほざきながら
鼻歌まじりの笑みを浮かべて
君は片手に菜ばしを構え
ぐつぐつと煮えたぎる
土鍋の蓋をOPENすれば
たとえば寄せ鍋や
牡蠣の土手鍋を
あるいはアンコウ鍋や
ハタハタしょっつる鍋を
はたまたキムチ鍋や
ぼたん鍋のたぐいを
かなりイケズな風に
じくじくつついている
まさにその同じ刻限
床下の芋つぼの蓋が
ゴゴ、ゴゴゴォと開き
ひんやりしたモルグの奥の
闇の森の湿った木陰から
むっくり起き上がって
礼儀正しくお辞儀した後は
どんじゃらホイッのお遊戯をする
ハローキティちゃんのぬいぐるみ
なるほどそういうことか
ここにきて君の目論見は露見する
君はハローキティちゃんの
きゃるまたの奥のぐるぐる渦巻きから
放射状に飛び出した万国旗のひもを
そこら中にしっかり結わえたんだろ?
その下で開催された昭和30年代の
小学校の運動会のアフォ臭い青空を見たか?
PTAが地べたに敷いたゴザに転がる
卵焼きとおむすびコロリンを頬張ったのか?
いったい君はそれで満足だったのか?
おかあさん おかあさん
ぼく かけっこがんばったよ
闇ノ森ノ木陰デ
どんじゃらホイッも踊ったよ
つい口ずさんでしまったじゃないか
なのに自分は依然として
真夜中に鍋料理を突っついて
あとは知らぬ存ぜぬとは
いったいどういう了見であろうか
狡猾なハローキティちゃんは
どんじゃらホイッの腰つきでやって来て
私の汗みどろの寝床に潜り込み
小悪魔的に喉をゴロゴロ鳴らしながら
総天然蛍光色のこんぶダシを
トロトロトロ~リと
私のぼんのくぼから流し込む
こんぶだしは脊柱管を下降して
蒼いオリモノとして熟成され
地球のマントル下層へと
周期的に注入されるのだ
その後は宇宙へ放出されて
ヴァン・アレン帯を形成する
ああ うっとうしい
こんな真夜中に
鍋料理はほどほどにしてくれ
 



*森の木陰でどんじゃらほい!

秋冬は鍋料理に限りますのう。
「モツ鍋」
ヴァン・アレン帯


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