路上にて
アスファルト道路の表面に、蛇のような黒い波線がひとすじ、進行方向に沿って横たわっている。近寄って見ると亀裂の補修痕のようだ。指先で表面に触れてみる。ゴムのような素材だがとても固い。歩いて行くといろんな形の補修痕が次々に現れて来る、対向車線には道教の呪符みたいなややこしい模様のものもある。
「街を歩いてもアスファルトに走る無数の亀裂から滲み出てくる闇を見つめるだけだ」
遠い大都会の街に住んでいた青年の頃、ノートに書き留めていた言葉。今は海辺の町の路上で補修痕を見つめている。
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