見出し画像

おばあちゃんに会いたい

小さい頃、家出をするとしたらと妄想する家出先は、いつも父方のおばあちゃんの家だった。

父方の祖父母は、というか、祖母は優しかった。理屈なしで、優しかった。子供の私にも、謎なほど優しかった。

母方の祖母が理屈っぽく、小難しく、孫の応援を母と対決してするかと思いきや、いきなり態度をころりと変えたり、いとこたちを猫可愛がりする一方で、私たち(私ときょうだい)には、かなり塩対応だったりしたことも影響するかもしれない。

住んでいる距離的には、母方の祖母の家の方が圧倒的に近く、家出先として現実的なのだけど、母方の祖母の家に家出するなんて、想像すらしたことがない。

父方の祖母は、お正月休みに行くと、不器用で下手くそな私の習字をよく見てくれた。書き初めの宿題とか、普段通っている習字教室の課題の字とか。

母は並べられた私の習字を見て、「こんな筆で遊んだような字、どうしたら書けるの? ペンキで遊んでるんじゃあるまいし」とよく言った。

祖母は「不器用な人は、うんと努力するから、きっと上手になるわ」と言って、母をいなしてくれた。

病気になった後も、私の病気をあれこれ私に聞くことは一切なかった。

戦前生まれの人だったら、孫のそんな病気は心配でたまらなかったはずなのに、思いやりがあって、自制のできるすごい人だった。私を忌避することもなかった。

その祖母が亡くなって、10年くらいが経つ。

申し訳ないことに、遠方ということもあって、お墓参りには全然行けていない。

祖母は、私が好きなもの(ビンクの服)を否定したこともなかったし、変なおもちゃ(リカちゃん人形のファミリー)を、「次はこれ買うの?」と笑いながら買ってくれた。休みで行くと、セーラームーンのキャラクターがプリントされた枕カバーが、子供用の枕に被っていた。

祖母は行く度に「うさぎちゃんは、えらくなったね」とよく言った。

今、私は祖母の「えらくなったね」が聞きたい。

もう聞くことができない、「えらくなったね」が聞きたい。

もし生きていても、私が大人になっているから、もう「えらくなったね」とは、言ってくれないかもしれない。

一度も祖母の家に、家出したことはなかった。でも、どうやって電車を乗り継いだら、祖母の家に行けるのかを考えることで、その場の苦しさを乗り越えてきた。

きっと、祖母なら「よく来たね」と言ってくれるだろうと思ったから。

眠れなくて、神経過敏なところに、母からの無神経なメールがじゃんじゃん届く。リラクゼーションの方法が見つからなくて、リラクゼーションしなきゃならないストレスでどうにかなりそう。

ブレブレのメンタルで、毎日仕事に行く。

おばあちゃんに会いたい。

「えらくなったね」と言って、笑ってほしい。

一度でも家出を実行したら、良かったかもしれない。

こんな時だけ、祖母を思い出して本当に勝手だ。

静かに待って、「きっと上手になるから」と言ってくれた祖母が恋しいんだと思う。

時間の流れが速すぎて、求められる回復のスピードも速すぎて、ついていけていない。たぶん、それが苦しい。

はやくはやく。

焦りすぎている。

今日はうまく眠れますように。

【今日の英作文】
「その知らせを受けるとすぐ、彼は怒り狂いました。」
"On receiving the notice, he got furious.''

#日々 #日記 #文章 #エッセイ #毎日note #毎日更新 #アウトプット英作文 #祖母 #思い出 #妄想家出先 #えらくなった #スピード #時間の流れ #おばあちゃんに会いたい  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?