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トルストイの入口「戦争と平和」

戦争と平和


 「戦争と平和」は、登場人物が500名以上、約3000ページに及ぶ圧倒的なスケールの大河小説です。読破するには時間がかかりますが、一度物語に入ることができればどんどん先を読みたくなるような魅力にあふれています。

 まずは、何と言ってもその卓越した描写力です。時に力強く、時には繊細に綴られた文章はめりはりに富み、登場人物たちは脇役に至るまで丁寧に描かれているので、スムーズに感情移入することができます。

 歴史背景の解説等に切りかわる部分がたまにありますが、冗長に感じられる場合、それらは斜め読みしてもあまり差し障りはありません。物語の本筋部分は短い章が刻まれながら展開していくため、慣れればさほどストレスなく読み進めることができるでしょう。

舞台はナポレオンが侵攻した19世紀の初めのロシア。この激動の時代に生きた、貴族階級に属する若者たちの成長を軸とした物語です。

恋愛と友情、家族の絆、愛と憎しみといった普遍的なテーマが骨太に展開されます。

壮大な映画のような迫力はもとより、情感に満ちた場面場面の美しさがこの作品の大きな魅力です。

戦場で倒れた主人公の一人アンドレアが、大空を行く雲を眺める場面。        
 そのアンドレアが恋をして、空虚な心が喜びに満たされていく日々の描写。
 仏軍の捕虜になってしまった苦労知らずのピエールが、同僚たちの処刑を目の当たりにした時の衝撃。                                                                             
その後、同じく捕虜の老人農夫カラターエフが、自分の大切なじゃがいもをピエールに分け与えてあげる場面(それも塩までかけてくれる)             

   …など、この物語は印象的な場面に満ちあふれており、それらが記憶
に深く残ります。

イギリスのBBC制作によるドラマ(Netflix)がよくできていますので、通読の時間がとれない方は、先にこちらから入るのも良いかも知れません。

トルストイ

レフ・トルストイ(1828- 1910)~ロシア・小説家、思想家~
ドストエフスキーやツルゲーネフと並ぶ19世紀ロシア文学の巨匠。「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」などの名作を残した。彼の非暴力主義はガンジーらに受け継がれた。

https://www.amazon.co.jp/dp/4102060138/

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