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#創作大賞2023

2023年のうた 第二期 春・夏

2023年のうた 第二期 春・夏

2023年のうた第二期 春・夏

ぼんやりと物思いする万愚節つみなき嘘はありやなしやと

四月馬鹿りちぎに用意した嘘を噴かすツイート眺めたりして

駅前で信号待ちをしていると頭のうえにまた飛行船

駅前のスクランブルする交差点見上げる先をビルがさえぎる

その先の道が見えてる春ならば散る花ですら目に楽しかろ

ひらひらり書いて消してのその後ろ桜吹雪がとめどなくふる

あの頃のリアルスティックどこい

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短編小説「ケソウノイド」

短編小説「ケソウノイド」

けそう

ここは、東国。広い武蔵国の、ちょうど真ん中あたり。見渡すかぎり高く険しい山はひとつもない。遠くにうっすら山並みが見えるが、そこまではずっと田んぼと畑と草っ原ばかりで、所々にこんもりと茂る森とのっぺりとした丘が伸びているだけ。古い大きな川に沿うように、古い往来の街道が延々と続いている。まばらな集落も、大抵は街道の近くに寄り集まってかたまっている。この広い平らな土地では、あまり大きな川に近す

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読まずに死ねるか(2023)

読まずに死ねるか(2023)

春といえば、まつりだ。ほかに何があるというのだ。お花見。出会いと別れ。いやいや、そういうのは、いろんなことをちゃんとしている人たちのためだけにあるものなのではないでしょうか。そうでない人たちにとっては、お花見も出会いも別れも何にもありはしないのである。だがしかし、そんな春らしい何かが何もないというとてもかわいそうな人にだって、いやむしろそういう人たちのためにこそ、春のまつりはある。つまりは、何はな

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初めてのYBC

初めてのYBC

八重洲ブックセンターが、2023年3月31日に閉店した。ずっとそこにあり続ける、いつまでもなくならないものなのだと(勝手に)思い込んでいたが、(やっぱり)そんなことはなかったようである。始まりがあれば、終わりがある。いつまでもずっとあると思っていたものが、突然になくなり、その(何となく永遠性そのものであったような)存在がこの世界からすっかり消え去ってしまう。そういうものやことあるいは人との別離を、

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