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11月26日の手紙 最愛海外文学①

拝啓

Twitter(X)で#私の最愛海外文学10選というタグを見つけました。
海外文学好きと言えるほど、読んいるだろうかと不安になるものの、とても気になるタグです。
辿ってみると、様々な人が自分の愛読書を語っています。
読書好きとしては、読んでいるととても楽しい気持ちになります。
「結構いるんだなぁ、海外文学作品好き、1人じゃなかった」と思って小躍りしました。
冗談でなく、あらゆる国の文学が日本語で読めるのって、日本の数少ない素晴らしいところではないかと思っています。
働くようになってからは、気になる本はできるだけハードカバーで購入するようにしています。
どうか、「海外文学作品が母国語(日本語)で気軽に飲読める」という世界が無くなりませんように。
もっともっと、海外文学を読む人口が増えてほしいとも願っています。
ということで、このタグからお題を借りて、自分の好きな海外文学について、語りたいと思います。
今回は特に好きな3冊を紹介します。

ヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人」


初読で、自分の体感している世界に1番近い、と思いこんでしまった作品です。
ヴァージニア・ウルフが体感したであろう世界が自分と近いなんて、思い上がりも甚だしく、ただの思い込みだということはわかっているのですが、それくらいの衝撃だということで、許してもらう他ありません。
1ページから最後まで、圧倒的な情報が奔流のように世界を流れます。それともその奔流そのものが世界なのかもしれません。
若い頃のロマンスを思い出す50代の良い家柄の人々、それに対比される病を持った夫と異国出身の若い妻、そしてその他大勢の人々、全員の思考、ひらめき、行動、その全てが記述され、すれ違います。
インターネットが発達して、私たちが感じている情報の波を、ヴァージニア・ウルフは生きている頃から、感じていたのかもしれないと思う作品です。
ヴァージニア・ウルフの素晴らしさは、圧倒的な描写です。それぞれの言動が、どのように他の人に影響を与える、次の思考へ行くのかをこれほど丹念に描写できる人はいないでしょう。
恍惚とした最後のページ、それが何を意味していると感じるかは読み手に委ねられています。
また、冒頭の一文「ミセス・ダロウェイは、お花は私が買ってくるわ、と言った。」の素晴らしさ、瑞々しさ!!ぜひご一読ください。
文庫版の古本と本棚に置いておく本の2冊持っていて、長風呂をするときには、文庫版の古本を持って入ることが多いです。開いたところから、ランダムに読みます。それで構わないのがこの小説の素晴らしいところです。筋はあるものの、それだけではない本なので、どこから読んでもいいのです。
内容がわからなくてもいっこうにかまわないですし、その日の気分によって、自分の気分と近しい記載があるところを探すのも楽しいです。
また、ピーターのいたインド、クラリッサ家族のいるロンドン、セプティマス夫妻が知り合ったイタリア、などに思いを馳せることもできます。
長風呂の良いお供です。
1番繰り返して読んでいる海外文学です。もう何回読んだか、数え切れません。

マーガレット・アトウッド「侍女の物語」

数年前に、頭をぶん殴られた作品。傑作です。
もっと早く読みたかったと思いました。
もっと早くに読んでいたら、人生が変わったかもしれません。
読んでから半年は、寝ても覚めても、「侍女の物語」の世界について考えていて、周囲から気味悪がられていました。
40年近く前に書かれだと思えない、新しさ、
切迫感、焦燥感。
あらすじを説明してしまうと面白さが半減してしまうような気もします。
カナダの作家、マーガレット・アトウッドが書いたディストピア(アメリカにキリスト教原理主義政府が誕生した世界)SF小説です。
ディストピア小説として、細々とした設定がきちんと考えられていて、破綻がなく、どっぷりと小説に入り込みます。丁寧でありながらも、感傷的でなくさっぱりとした文章だからこそ、最後まで読めます。
読み終わると、この作品で描かれるディストピアと今の世界のどこが違うというのか?と思ってしまいます。これからのアメリカの大統領選のことを考えると、予言の書だったらどうしよう…と思わせるほどです。
人によっては不快で仕方ない小説だと思います。
どうして不快なのか?、どうして読むと辛いのかについて、今こそ、真剣に考えてほしいです。


続編が、数年前に出版されています。
どうやって、あの世界を生き抜いたから、そして、どうやってあの世界が崩壊するのかがわかります。

確か、ドラマ化もされていたはずです。
まだ、見たことはありません。
映像化しても、とてもインパクトがあるのは、マーガレット・アトウッドが、各社会的役割にコスチュームをきっちりと設定しているからも一要因だと思います。
赤いドレスに白い帽子は、本当に印象的でした。

社会的に効率的であること、正しくあることをあまりに、追求していくと、人間それぞれ一個人の幸せは潰されていくのかもしれないと思わせる作品です。

スヴェトラーナ・アレクシーヴィチ「戦争は女の顔をしていない」

たぶん、漫画化されたものをウェブで読み、衝撃を受けて原作に辿り着いのだと思います。
漫画もすばらしいですが、原作の骨太さをぜひ読んでほしいと思います。
アレクシーヴィチが,インタビューした女性たちの唇から、次々と戦争の話が語られます。それぞれの階級、それぞれの語り口。これまでに知っている気になっていた戦争の話よりずっと生活の匂いがしています。
血と汗の臭いだけの戦争はなく、
兵士1人ずつが人間であり、戦争に来る前にも戦争が終わった後にも生活があることを思い知らされる語りです。
アレクシーヴィチは現在、ドイツにいると聞いたことがあります。政治的な事情があってのことだそうです。
今この時代をどんな思いで見つめているでしょうか。
戦争が、どういうものであるかということについて、深く考えることができる作品です。
そして、戦争が終わった後も、どれほど人々に、影響があるかということについてもよくわかります。
今こそ読んでおくべき作品だと思います。



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