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10月2日の手紙 嫌われた時は、まずは落ち着け、茶でも飲め


拝啓

「人に嫌われたくない」「できれば好かれたい」と数年前まではまだ強烈に思っていた気がします。
ようやっとそう言う気持ちが薄くなってきました。
淡く、水彩絵の具が滲んだような秋の夕暮れくらいには、薄くなってきたと感じます。
以前は、ハワイの朝日くらい、そういう気持ちが鮮烈でした。日々、燃え上がっていたと、今なら言えます。
そして、その気持ちの分、「嫌われた」とか「好かれてない」ということを感じ取っていたと思うのです。

そういうことが完全になくなったわけでも、他人がどうでも良くなったわけでもなく、ある程度、対処することができるようになったということだと思います。
「嫌われたくない!」と瞬間的に感じても、「でもどうしようもない。他人はコントロールできない」と諦められるようになりました。
諦め、そうです、諦められるようになったのです。

そして、「嫌われてる」「好かれてない」と思っても、変な反応をせず「嫌われてるみたいだな」ときちんと認められるようになりました。
つまり、死に物狂いになるのでもなく、パニックになったり、無かったことにしようとしたりもせず、ただ「この人には嫌われているんだな」と自覚できるようになったのです。
嫌われた理由はいまだに、気になります。ある程度、推測してみますが、結局、それで納得がいくということはほぼないと気づきました。
人が人を嫌う理由はだいたい、理不尽です。
それにどれだけ理路整然とした理由がわかったところで、嫌われている状況を変えられるわけではありません。
こちらの言動や態度が相手を傷つけた場合もあるでしょうが、なんとなく馬が合わないということもあるでしょう。
合わない人というのが、この世にはいるし、相手にとって、それがこちらだったということです。理由を明らかにしようとすると、ものすごい焦燥感に苛まれます。
だって納得のいく理由などほぼ見つからないのです。

大切なのは理由ではなく「嫌われている」という事実です。

その事実を認めることから対処は始まります。対処といっても、「嫌われている」から、仲直りするとか、相手におもねるというのは、性に合いません。
そもそも「嫌われている」ことの改善にのみ、フォーカスするのは悪手です。

こちらが「嫌われている」ことの改善ばかり、考えることになると、結局、その関係性にこだわり、抜け出られなくなります。また、嫌ってきた相手も、「嫌っている」ということのみでこちらを認知することになります。
「嫌われている」ことは自覚しつつも、そこに囚われないようにつとめたほうが、予後はよいのです。今の距離を縮めず、現状維持、もしくは後退するべきです。

理由よりも、もっと基礎的なこと、もともと、その人とどういう場で出会っているのかを思い出してみます。
10代の若者でない場合、「嫌われている」とな、「好かれていない」と感じる人のほとんどは仕事関連の人です。
一緒に仕事をしている中でのちょっとした言葉、視線、距離感などで「嫌われている」とわかる時があります。
電車の中や店舗などでも出会うかもしれません。
短い間、ちゃんとそのことを受け止めて落ち込んでみます。
「よく知らない人だけど、嫌われてるのは悲しい」と、頭の中でつぶやきます。
その上で、関係を確認します。
よく考えれば、本来、そこまで親しくする必要はありません。
仕事をするために共にいるだけで、それ以上でもそれ以下でもないはずなのです。
もし、電車や店舗で出会ったなら、通りすがりの人です。店員です。それ以上でもそれ以下でもありません。このスタートラインに戻るのです。
そして「嫌われている」ことを自覚した上で、本来の目的をきちんと遂行するのが良いと思っています。仕事なら仕事を、電車について確認するなら確認を、買い物なら買い物をやります。
相手に詰め寄りたい時ありますが、明らかに失礼な言動をされていない場合は、急に詰め寄ることは避けます。なんとなく感じた「嫌われている」で大騒ぎを起こすのは、更なる嫌われ、トラブルのもとです。頭の中に留めておくだけにしましょう。

そうやって、もともとあるべき社会的役割の距離を維持するか戻り、落ち着いて過ごしていると、時間を経て、良い知人になることがあります。
友人にはなれないかもしれませんが。

「SNSで著名なインフルエンサーにブロックされた」とか
「よく知らない人にブロックされた」時にも使える考え方だと思います。

・嫌われていることを認める。
・嫌われた理由を確認・詮索しない。
・距離を詰めない。
・元々の目的を思い出して遂行する。

ごく単純なことです。
でも、嫌われるのが怖かった時は出来なくてよくパニックになっていました。
今思えば、お茶でも飲んで、のんびりしておくべきでした。
後から言えば何とでも言えるという、あなたの顔が目に浮かびます。
そうです。
でも、今からだってそうしてもいいんですよ、たぶん。




  

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