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10月5日の手紙 プロジェクト・ヘイル・メアリー 下巻 ネタバレ感想


拝啓
秋らしく、冷え込んできました。
部屋着を少し丈の長いものにしました。日中は暑いですが、夜や朝は冷えます。
ここで体調管理に気をつけていないと、すぐに喉風邪を引く体質です。
湯船にお湯をはって浸かり身体を温めるのも大切です。
まだ夏の記憶が新鮮ですが、冬への準備にそろそろ取り掛かりましょう。

さて、そんな10月に入る直前、ちょうどきりよく、
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」下巻、Audibleで、聞き終えました。

さて、ここからネタバレ有りの感想2回に分けて書いていきたいと思います。
2回に分けるのは、長くなってしまったからです。
今回は、下巻を読み切って、の感想です。
上下巻を通しての感想は次にします。

ネタバレされたくない方はここでブラウザバックを推奨します。

上巻のネタバレ感想はこちら。

それでは
下巻のネタバレ有りの感想を書いていきます。


面白かった!!


下巻の最後の最後まで、芸のない言い方になりますが、非常に面白かったです。
主人公グレースなら「本っ当に面白い!!」と歓喜の声を上げることでしょう。ワクワクがこもった上擦った声を張り上げるはずです。
Audibleで聴いたので、キャラクターの会話は、ナレーターの演技と共に再生、イメージされます。
小説における記載は「本当に、面白い」だとしても、個人的に、グレースは「本っ当に面白い!!」と声を上げるキャラクターとして認識されています。キャラクターの解像度が上がっているということでしょう。
「だよな、グレース。面白かったよな」と話しかけたくなるような主人公、それが「プロジェクト・ヘイル・メアリー」のグレースです。

読後感は、かなり良いです。
これは確かに映画化されるでしょう。
エンターテイメント性がしっかりありながら、人間性も描いている内容なので、ハリウッドのエージェントが欲しがる小説だと思います。

最後までいいやつ


主人公のグレースは、期待を裏切らず、最後まで「科学オタクで前向きないいやつ」でいてくれました。あの結末は、グレースでないと選べない結末です。「科学オタクで前向きないいやつ」でないと達せないのは確実です。
10章で宇宙飛行士選抜課程の記憶が戻り回想が衝撃の事実が明かされたので、グレースが闇落ちしてしまったらどうしようと不安になったのですが、グレースはグレースでした。
その記憶に衝撃を受けるものの、いいやつであることは変わりませんでした。闇落ちさせることも簡単だと思うのですが、作者はそうしませんでした。そな理由は最後まで読めばわかります。あの結末に至るためにはグレースがいいやつであり続ける必要があります。「科学オタクめ前向きないいやつ」でいつづける必要性があるのです。
グレースの上司であるストラッドが「あなたはいい人なのよ」ということを言う場面がありますから、これは自然発生的なキャラクターというよりは緻密に練られた上での性格なのでしょう。グレース、君はいいやつだよ!

いいやつだけど、どこまでも科学オタクの異能の人
もちろんグレースはいいやつなだけではありません。常軌を逸した科学オタクであり、本人は自覚が薄いようですが、異能の人です。グレースは地球にいる時、のほほんと、周囲の世界的研究者やエンジニアに畏敬の念を抱き、NASAの施設を楽しみ、書類仕事に邁進していましたが、彼は本人が思うような一般人では全くありません。
科学的な好奇心が人より何倍も強く、その好奇心に引っ張られて、何度も危機から脱します。異星人とコンタクトして、純粋に喜びながらコミュニケーション方法を探せるのはグレースの異能だと思います。普通は怖いと思うよ、グレース…。
生き残ったのがグレースでなかったら、あの結末には至らないでしょう。軍人でもエンジニアでも生き残れないし、専門が特化している科学者でも難しかっただろうと思います。
グレースには、教師経験に裏打ちされた幅広い基礎科学の知識があり、
強い科学的好奇心があったからあの選択を選べるのです。
実は、あの結末を読んで、ハッピーエンドと捉えられない人もいるのではないだろうかと思います。あの状況を出来うる限り楽しんで自分のものに出来る人はごく少数です。
「メイドインアビス」と言う漫画では、巨大な穴を探検する冒険者は、下層に近づくにつれて異形と化していきます。そして、異形となっても、穴の探索に身を捧げていきます。グレースもそう言った趣があります。彼はいいやつですけど異能の人です。好奇心と楽観主義もあそこまで行けば、特殊技能です。

恋愛が入らなくて一安心


下巻、恋愛が入ってきたらどうしようと思う場面がありましたが、恋愛場面はほぼ存在しませんでした。「それでいいんだ、グレース!」とホッと胸を撫で下ろしたことをお伝えします。
恋愛がいけないと言うわけではなく、グレースの行動原理にはなり得ないと思っていたのです。上司のストラッドが自分語りを始めた時も、「もしや」と思いましたが、大丈夫でした。
ストラッドはグレースに特別な思いがあったとは思っています。出会って数日で、その異能に気づいだからこそ、プロジェクトに参加させたのでしょう。ストラッドはグレースが異能を持っていることに強く惹かれ、それがこのプロジェクトに必要なことはわかっていたと思います。日本の小説や漫画、アニメだとそれは「愛」に分類されてしまうのが残念です。愛なんて超えた、特大感情があるのです、現実には。
ストラッドが死ぬ時、思い返すのは絶対、グレースだと思います。罪な男ですね、グレース!

人種と性別のバランス


上巻では、主要な登場人物がグレースとロッキーとストラッドと少なめでしたが、記憶が戻り、宇宙飛行士選抜課程が語られ始めると、出来るだけ多様な人種、そして、科学がメインの話とは言え、女性の研究者も出すことには細心の注意が払われているように感じました。
この辺りは、エージェントが相当気を使って、書かせたところではないかと思います。またステレオタイプな描写にならないように、キャラクター造形も考えられています。それでもとあるキャラクターには批判が出そうな気もしました。
現在、アメリカで小説を売る際には、こう言った点への配慮は必須なのでしょうね。

上下巻通しての感想はまた明日に。


https://www.audible.co.jp/pd/B0BR3CC5YF?source_code=ASSORAP0511160006&share_location=pdp


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