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2024年8月19日 右手に残るは君の感触

先日、ジムの帰りに薄青い、それはもう蒼い瓶の中にいるとしか思えないほどの
青の中を歩いていて、
信号が変わるのを待っていました。
そうすると、自分の体のごく近くに立つ細い電信柱の向こうに、大きな犬の頭が見えます。ぎりぎり中型犬というサイズでしょうか。
黄色がかったベージュの大きな頭です。耳は垂れ、やさしい茶色と黒のどんぐりまなこでこちらを見ています。
特定の犬種であるようには見受けられず、大きなベージュの犬といった外見です。
ただ、もしかしたら、シェパードとかそういう犬種の血統も少しは入っているのかもしれません。
レトリーバー種とは違うタイプの大きな目でした。
電信柱の向こうから、犬はこちらへ鼻を寄せています。
警戒している様子はなく、どこか陽気な様子で、空中とこちらの方を何度かふんふんと嗅ぎました。
犬が好きなので犬の方へそっと手を伸ばしてみますと、
犬は「これはこれは」というように再度匂いを嗅いだうえで、
嬉しそうにしています。
犬の背後にいた飼い主さんが見えましたが、犬と違って、硬い表情をしています。
大きい犬を怖がる人も多いですから、こちらの反応が心配なのかもしれません。
そっと差し伸べた手を落としてみると、ちょうど犬の頭をすっぽり包むような形になりました。
犬は嫌がらず、嬉しそうにこちらを見ています。
そっと、数回撫でると、犬は満足したようでした。ちょうど信号が変わったので、会釈をして去りました。
去ってから、「触っても構いませんか」と言葉に出すべきだったと反省しました。
犬の様子はどう見ても、「触ってもよろしい」だったのですが、万が一と言うこともあります。
勝手に触ってしまい、申し訳ないことをしました。
右手には、大きな頭の名残があります。
大人しく賢い犬のようでした。

これまであんな大きな犬が近くにいたことはないのですが、
大きい犬と言うものも、大変良いものだ、と思いました。
特に身体が大きいのに、すっかり可愛がられるつもりで近寄ってきた様子に感心しました。
きっとあの飼い主の人に日々大切にされているのだと思います。
涼しくなってから散歩をしてもらい、ご飯やおやつをもらい、日中は家の中で探していることでしょう。
毎日、いいこだね、と撫でられて暮らしているに違いありません。
だからこそ、近くにいた見知らぬ人間に対しても、「ここでじっとしていると言うことは、私を撫でたいのですね!」と理解したのでしょう。
近くにいる人間が、犬が苦手だとか、撫でる気がないとかそんなことは考えていない様子に見えました。
とてもご機嫌で、
のびやかに、堂々と可愛らしかったのです。
「大事にされていること」は動きや眼差しに滲み出るのだなぁと思います。
家の近所でたまに出会う猫たちは、あれほど人間を信頼していません。
じっとこちらを見ていますが、それは期待してではなくて、危険な行動を取らないかと言うことを観察している様子です。
犬と猫と言う動物の違いでもあるけれど、「大事にされている」経験の多さも関係あるような気がします。

子どもの頃から、動物が好き、特に犬が好きでした。
共に暮らしてみたいと今でも考えていないといえば嘘になりますが、
この、出会った犬のように幸せにできるでしょうか。
どうせ共に暮らすなら、できるだけ、その動物を幸せにしたいものだ、と思います。
犬なら、毎日の散歩や頻繁にドッグランへ連れて行ける力が必要でしょうし、
猫なら、玄関から逃げ出さないように、格子戸をつけ、網戸にもロックがかかるようにしてあげる必要があるでしょう。
何の動物にしても、病院に連れて行けるだけのお金は必要です。
(幸い近隣に動物病院はいくつもあるので病院には困らないとしても…。)
それに、今回のように2泊3日の旅行は遠すぎるだろうし…。
そういうことを考えると自分には共に暮らす資格はないのだろうなぁとも思うのです。
こうして通りがかった犬や猫の様子を眺めることをありがたい、と思うくらいがちょうど良い、と。

ただご縁があればいいのにという虫の良い願いは消すことができません。
最近では住んでいる地域で捨て犬と言うものは見ません。
ただ、猫は見かけることがあります。
もし、万が一、猫が困っているようなことがあれば…、
いやいやこう言うことを考えるのはずるいだけかもしれません。
それでも、右手に残る頭の感触はしばらく、幸せな気持ちをくれたのでした。








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