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【小売SDGs事例】SDGsで日本のトップを走る無印良品の取組み(前編)

0. SDGsとは何か

最近 SDGs という言葉を耳にすることが多い人もいるでしょう。

SDGs (Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは2015年に国連総会で採択された、17のゴールと169のターゲットからなる2030年までに持続可能でより良い世界を目指す開発目標のことです。地球上の誰一人取り残さないことを誓っています。

SDGs は途上国だけでなく、先進国も取り組んでいかなければならず、日本も目標達成のために積極的に動いています。

そんな SDGs ですが、日本にも積極的に取り組んでいる企業がたくさんあります。その中の一つが無印良品を展開している良品計画です。今回は無印良品がどのようにして SDGs に対して取り組んでいるのか前編・後編に分けて事例を紹介したいと思います。皆さんの参考になれば幸いです。

1. 無印良品の紹介

家具、衣料品、雑貨、食品など非常に幅広いジャンルの商品を販売していて、シンプルなデザインやリーズナブルな価格品質の良さで定評のある無印良品。無印の商品を使ったことがある人も多いのではないでしょうか。

無印良品は、「わけあって、安い。」をキャッチコピーに、従来の商品の規格からすると少し外れてしまうような商品の企画からスタートし、「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」の3つの視点を守りながら、実質本位の商品をつくり続け、現在では7,000品目を超える商品を展開するブランドです。

実は無印良品は小売業の中でも昔から特に SDGs に力を入れて取り組んでいる企業なんです。

次の章から無印良品の具体的な取り組みについて紹介していきたいと思います。

2. プラスチックごみを限界まで減らす

プラスチックは丈夫で熱も通しにくく、やわらかくて加工しやすいなどその性質から身の回りのさまざまなものに使われています。

しかし、一方でプラスチックはほとんどが使い捨てられていて、ゴミとなったプラスチックは自然に分解されずに海に行きつき、海洋汚染につながっています。また、プラスチックは生産過程で石油燃料などを燃やしたり、廃棄処分のために燃焼させたり、廃棄されたプラスチックが熱や光によって分解されたりすることで大量の二酸化炭素を排出しており、地球温暖化の原因となっています。

無印良品はプラスチックのこうした問題に向き合い、プラスチックごみを削減するために様々な取り組みを積極的に行っています。

2.1. 誰でも使える給水機設置でペットボトルごみ削減

無印良品ではプラスチックごみを削減する取り組みの一環で「水プロジェクト」として、マイボトルの携帯を習慣化し、ペットボトルのごみを減らす目的で、店舗に誰でも使える給水機を設置しています。

これはマイボトルを持っている人であれば、だれでも自由にフィルターでろ過した水道水を給水することができるというものです。また、店舗には水を詰める用の持ち運び可能で繰り返し使える「自分で詰める水のボトル」や、ただの水だけでは飽きてしまうだろうということも考えて水に溶けるルイボスティーやアールグレイなども売られています。

さらに、専用の「水」アプリもリリースしており、アプリでは給水するごとに自分がどれだけペットボトル削減や二酸化炭素削減に貢献したかが可視化されたり、無印良品の店舗以外にも公共の給水ポイントを知ることができたりします。

誰でも簡単に飽きずに、ゲーム感覚で環境問題に取り組むことができる工夫が施されていると言えるでしょう。

店舗に設置された給水機 誰でも自由に利用することができる
自分で詰める水のボトル
水アプリ 給水による二酸化炭素削減への貢献度を可視化してくれる

2.2. プラスチック製を紙製へ

プラスチックごみの削減のため、店内のあらゆるものをプラスチック製から紙製へと変更しています。

例えば、靴下のフック。靴下のフックは通常はプラスチック製のものがほとんどですが、無印ではこれも紙製に変えています。さらには、洋服のタグ紐商品の包装もプラスチック製から紙製に変えたり、タオルなどの製品はタグ紐を使用せずにタグのシールを商品に直接貼り付けるようにしたりしました。これらは非常に小さな変化ではありますが、販売数が多いため、全体として大きな影響を与えています。

また、店舗に行ったことがある人はすでに気づいている人もいるかもしれませんが、無印良品にはペットボトルの飲料が一切ありません。もともとはペットボトルだったのですが、リサイクル率が98%と非常に高く、光を遮ることから賞味期限を延ばし、食品ロスの削減にもつながるアルミ缶に変更されました。

タグ紐も紙製に
ペットボトル飲料を廃止してアルミ缶に

2.3. プラスチックバッグを撤廃

無印良品ではプラスチックのレジ袋有料化前から使い捨てられることの多いプラスチックバッグの削減に取り組んできました。

そして、レジ袋が有料化することを受けて、プラスチック製のショッピングを完全に撤廃しました。

レジ袋有料化後も紙製のショッピングバッグは無料での提供を続けたり、大きなサイズの商品やまとめ買いに便利なポリプロピレン製のショッピングバッグを販売し、全国の店舗で返品可能とすることで実質的に無料で利用できるようにしたりするなど、プラスチック製のショッピングバッグの削減に注力してきました。

また、レジ袋が有料化するより前からマイバッグ持参を推進するため、購入の際にレジ袋を辞退した客に対し、530(ごみゼロ)マイルを付与する取り組みを行ってきました。「マイル」とは無印良品のアプリ「MUJI passport」において、無印良品での買い物やお店へのチェックインでためることができ、マイルがたまると買い物で使える「MUJIショッピングポイント」と交換することができるというものです。

返品できるショッピングバッグ

3. 使う人、作る人、自然に優しい原料調達

無印良品では原料調達にとてもこだわっています。先人たちにならい、それら天然素材が本来持つ機能を生かしたものづくりをすすめていて、原料となる素材は、地球、動植物、生産者に余計な負荷をなるべくかけない方法で採取、栽培されたものを選択するよう取り組んでいます。また、一次原料については、可能な限り生産地がトレースできるものを使用し、特に主要な原料に関しては実際に生産地を訪れて採取・栽培場所や生産者の状況を直接確認している徹底ぶりです。

例えば、綿は環境にも製品を使う人にもやさしくあるために、農薬や化学肥料を使わないで生産されるオーガニックコットンを100%使用しています。

動物系素材に関しては、羽毛は飼育環境における「5つの自由」が確保されていて、かつ強制的な給餌や生きている状態から採取されていない、ウールは羊本来の自然のままの飼育方法にこだわっていてミュールジングが行われていない、という適切な基準が守られているもののみを使用するようにしています。

また、「資源をムダにしない」という、無印良品誕生当時からの考え方を大切にして、服の生地を裁断する際に発生した端切れを人の手で仕分け、粉砕してワタ状に戻し、未使用の綿と混ぜて再び紡績をしています。

このように、無印良品では、素材の機能性だけでなく、つかう人、つくる人、自然に対する向き合い方を徹底的に考えて、原材料を選択しています。

4. 食糧難に対する取り組み

無印良品は SDGs の17のゴールのうちの二つ目、「飢餓をゼロに」に関しても、様々な取り組みを行っています。ここではそのうちいくつかを紹介したいと思います。

4.1. 栄養豊富なコオロギ食

無印良品は食糧難を解決するためにも積極的に取り組みを行っています。その取り組みの一つがコオロギ食です。昆虫食は栄養価が高く環境への負荷も少ないことから国連食糧農業機関(FAO)も推奨しています。まだ抵抗感をもつ人も多い食材ですが、徳島大学と連携してコオロギ粉末入りのチョコとせんべいを開発しました。

世界的に人口が増加する中、特に、重要な栄養素であるタンパク質が不足されていると言われています。昆虫はニワトリや豚などの家畜と同じく、主要な栄養素を多く体内に含むため、栄養素を効率よく摂取することができます。また、それらの家畜に比べて昆虫を生育する際に排出される温室効果ガスや必要なエサや水の量が、圧倒的に少ないため、環境負荷も軽減することができます。

昆虫食は食糧難環境問題を同時に解決することができるかもしれない、地球にやさしい未来食なのですが、昆虫食の日常食化に無印良品は取り組んでいます。

4.2. 途上国の子供に給食を

また、「TABLE FOR TWO」という肥満が問題となっている先進国で1食とるごとに飢餓が問題となっている開発途上国に1食が贈られるという、飢餓肥満という世界が抱える二つの問題を解消するために考えられたプログラムに参加しています。Café & Meal MUJI では、対象商品にプラス20円を追加してお支払いいただく事で、その20円が「TABLE FOR TWO」を通じて開発途上国の学校給食一食分に生まれ変わります。

5. まとめ

今回は小売業の SDGs に関する取り組みの事例ということで、無印良品がどのような取り組みを行っているかについて、一部ではありますが紹介しました。ぜひ後編の記事もご覧になっていただければと思います

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参考資料

https://ryohin-keikaku.jp/sustainability/environment/waste/

https://ryohin-keikaku.jp/sustainability/activities/material/


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