見出し画像

テクノロジーの力でインフラ設備を保護・維持する。壁を登る非破壊検査ロボット「TOKAシリーズ」

私たちの生活に欠かせないものはたくさんありますよね。電気、ガス、水道、道路…これらのような生活や産業活動の基盤となっている施設のことをインフラと言います。このインフラを安全な状態で維持するためには、設備の検査が重要になります。そこで役立っているのが非破壊検査です。

非破壊検査とは、物を壊さずにその内部のきずや表面のきず、あるいは劣化の状況を調べ出す検査技術のことです。非破壊検査を行うことで、製品や設備の信頼性を高めて寿命を長くすることが可能になります。しかし、手作業による検査は時間がかかりますし、高い場所の検査では実際に高所に上らなければならないなど危険が伴います。

後にGecko Robotics社の創設者となる Jake Loosararianは、この問題を解決するために、壁を登って非破壊検査を行うロボットを作ることを決めました。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。また弊社では最新ロボットの導入支援も行っております!お気軽にご相談ください。

ヤモリのように壁を登るロボット

Gecko Robotics社が提供するロボット、TOKAシリーズは、ヤモリのように壁を登ってタンク、ボイラー、スクラバー、配管などの非破壊検査を行います。(「gecko」は日本語で「ヤモリ」という意味です。)

公式サイトによると、TOKAシリーズは超音波検査や外観検査など8種類の検査方法を展開しており、様々なシーンに対応できるそうです。また、手作業での検査に比べて平均10倍の速度で連続的にデータを取得し、1,000倍以上の情報を収集可能とのことです。

▲TOKAシリーズ Gecko Robotics社公式Youtubeチャンネルより

TOKAシリーズには現在4つのロボットがあり、それぞれ得意とする検査対象が違っています。「TOKA3」は中型配管・高温面、「TOKA4」はボイラー壁・曲面、「TOKA4GZ」はタンクの床などの広い平面、そして「TOKA Flex」は配管の検査に適しています。

TOKA FlexはTOKAシリーズの最新ロボットです。TOKA Flexの最大の特長は、これまで難しかった配管の曲がった箇所や接合部の検査ができるようになったことだと言います。小型の配管(直径61㎝ほど)でも使用可能となり、ロボットが対応できる検査の範囲をさらに広げました。

また、TOKAシリーズは検査結果のデータをクラウドで一元管理することが可能です。さらに、データにフィルターをかけて摩耗の激しい領域を素早く特定したり、検査ごとの結果から浸食率を計算したりすることができます。自動的にデータを記録してくれるのは便利ですし、データを設備の保護に有効活用できる点がいいですね。

ロボットによる非破壊検査の実例

TOKAシリーズは電力施設や石油・ガスの施設、紙・パルプの工場などで活躍しているそうです。今回はオクラホマ州の製油所の導入事例をご紹介します。

ロボットの導入前、この製油所では地上貯蔵タンクの屋根を手作業で検査していました。手作業による検査は、1平方フィート(約929平方センチメートル)あたりに1つデータを取るポイントを決めて、超音波探傷検査によって腐食率を調べるというものでした。

しかし、タンクの屋根の腐食環境は均一でないため、製油所は1平方フィートあたりに1つというデータのとり方では検査の信頼性が不十分だと考えました。製油所の要望はタンクの屋根を完全にカバーできる検査でしたが、当時はこの屋根に人が立ち入ることを禁止していたため、ロボットを導入することを決めたのです。

検査では、超音波探傷検査および目視検査に対応したTOKA4が1台使用されました。TOKA4は2日間で848,000以上のデータを収集し、その結果、タンクの屋根全体に重大かつ広範囲の腐食があることが判明しました。従来の検査方法ではデータの数が限られ、腐食率のばらつきが大きかったため、TOKA4での検査と同様に腐食の広がりを見つけることは不可能だったと言います。

▲TOKA4によるタンクの屋根の検査 Gecko Robotics公式サイトより

このように、TOKAシリーズによる非破壊検査では、手作業の検査より多くの情報を集められるうえ、作業員の腕によって検査結果が変わることもないため、設備点検の信頼性が向上します。また、危険な場所の検査も代わりに行うことができ、作業員の安全性が保たれます。

TOKAシリーズはアメリカのロボットですが、日本でも活躍できるのではないかと思います。日本では人口減少が進んでおり、技術のある人材が減っていると考えられます。ロボットを使用することで、人手不足を補い、安全かつ正確に設備の保護ができるでしょう。

ここまでご覧いただきありがとうございました。過去にドローンによる非破壊検査の記事も書いていますので、もしよければそちらもご覧ください。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! ご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?