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人が20日かかる作業を1日で?進化を続ける非破壊検査ドローン3選

対象を壊すことなくその内部の劣化や欠陥を調べ出す調査技術のことを差す非破壊検査。対象はビル、プラント、橋、発電所、航空機など多岐にわたります。これらの対象を目視や超音波、赤外線など様々な方法で検査します。

従来の高所における非破壊検査では、安全性とコスト、作業時間に課題を抱えていました。これらの解決策として、非破壊検査ドローンが今活躍しています。非破壊検査ドローンを開発するSkygauge Roboticsによると、ドローンを使えば20日かかっていた検査を1日で行い、また作業員の数も5分の1に減らすことができるといいます。日本でも赤外線検査やリアルタイム撮影、目視を行うことのできるドローンが運用されています。

そして今、さらに対応できる検査方法の拡大など非破壊検査ドローンはさらに進化をとげています。今回は、スタートアップなどが開発する非破壊検査ドローンの事例3選をお届けしたいと思います。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。

安定飛行を強みとする Skygauge Robotics社

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▲ Skygauge Inspection Drone Skygauge社公式サイトより

カナダオンタリア州に本部を置くSkygauge Robotics社の非破壊検査ドローンが「Skygauge Inspection Drone」です。このドローンは飛行中の推力の向きを安定させることのできる飛行手法(thrust-vectoring technology)で特許を取得。Skygauge Robotics社によると、この特許を利用することにより従来のドローンの安定性では難しかった超音波検査を可能にしています。

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▲超音波検査と2種類の目視用撮影を同時に行うSkygauge Inspection Drone
Skygauge Robotics社公式サイトより

現在対応している検査方法は超音波探傷試験と目視用の検査対象の撮影です。撮影はズームアップしたものと、より遠くからみたものの2種類を行うことができるといいます。この検査方法3つ全てを一度のフライトで行うことができるとのこと。今まで3回行っていた検査を一度にまとめて行えるのであれば、大幅な時間削減が期待できそうです。

多様な非破壊検査方法への対応を目指すVoliro T

テクノロジーの分野で世界を牽引するスイスのチューリッヒ工科大学のプロジェクトとしてスタートした非破壊検査ドローン「Voliro T」。その後、Voliro Airborne Robotics社が設立され、その開発を続けています。

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▲Voliro T Voliro Airborne Robotics公式サイトより

Voliro Tの特徴は、多種多様な非破壊検査ツールの装着を前提としているところでしょう。ドローンの先端につけるセンサーや機器を替えることで一台でさまざまな検査方法をカバーすることを目指しています。

現在対応している検査方法は、超音波探傷試験、ドライフィルム塗料の厚さ測定(Dry-Film Thickness measurement)、そして渦電流センサ (Pulsed-Eddy Current sensors) による鉄筋コンクリート検査の3種類。また検査ではありませんが、塗料のペイントやスプレーも行うことができるそうです。

▲Voliro稼働の様子

他にも、360度回転できたり、障害物への衝突を自分で回避したりとその性能の高さが伺えます。現在はパートナー企業とベータプログラムを行っているとのことで、さらなる進化が期待できそうです。

自律飛行を特徴とするApellix社のドローン

米国フロリダ州を拠点とするApellix社のドローンは超音波探傷試験とドライフィルム塗料の厚さ測定(Dry-Film Thickness measurement)が可能です。

▲Apellix社ドローン稼働の様子

このドローンの特徴はなんといっても自律飛行を謳っている点です。

Apellix社公式サイトによると、検査対象の近くでスタートボタンを押すだけで、ドローンに搭載されたコンピューターが飛行制御と検査を全て行い、その後安全地点へ戻ってくるそうです。

また、「Apellix NDE」として非破壊検査のサービスも提供。現場のデータや声を身近に得ることができるという利点もあると考えられます。

最新非破壊検査ドローンの3つの特徴

上記で紹介した最新の非破壊検査ドローンは、以下の3点で従来のものからより進化を遂げているといえるでしょう。

1.対応検査方法の拡大
従来の非破壊検査ドローンの主な検査方法は赤外線による検査や撮影を通しての目視検査でした。しかし、人による検査では多種多様な検査方法が存在しています。例えば、超音波による検査や電磁による検査などです。これらの多様な検査方法に対応できるドローンの開発が進んでいます。

2.安定したホバリング飛行
特徴1でご紹介した超音波による検査などを行う場合、ドローンは一箇所で滞空しないといけません。高所の検査では地上より風が強く吹いているということも多々あるため、風の強い場所での安定飛行も求められます。

また、ガスタンクなど、表面が平らでないものをドローンで検査したいというケースもあります。そういったより難しい環境、条件での飛行に対応するための改良が進められています。

3.自律飛行への挑戦
ドローンといえば遠隔操作が主流ですが、非破壊検査ドローンの業界では自律飛行、つまり人の操作なしでの自動的な飛行の挑戦も行われています。自律飛行が実現すれば、ドローン操縦者の確保や教育のコストを削減することができます。いつかはドローンが検査を行っている間に、人が別のタスクを行うという未来も来るのかもしれません。

今回は進化を続ける非破壊検査ドローンをご紹介しました。このテクノロジーの力で作業員の方の安全が守れたら、検査の現場に大きなインパクトを与えそうです。今後の動向にも注目していきたいと思います。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! ご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。

出典:
一般社団法人日本非破壊検査協会:非破壊検査とは
Skygauge Robotics:公式サイト, Product
Voliro Airborne Robotics:公式サイト
Apellix:公式サイト, Appellix NDE

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