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うねりノート#8 私はあたため続ける

私は助産師だった。 手に抱いている赤ん坊はあたたかい。 が、心臓の振動が感じられない。私はだんだん不安になってくる。 これから赤子はどんどん冷たくなっていくのだろうか。 顔はただすやすやと寝ているように見える。 私は赤子をあたためつづける。赤子は私の体温であたたかいのか、自らのあたたかさなのかわからなくなってくる。 この子を手放したくない。そう思いながら、 鳥が卵をあたためるように、私はあたため続ける。

    • うねりノート#7 私は写真のフィルムだった

      めがさめると、さわやかな初夏の日差しを感じた。 私の体は透け、光が体を貫通している。 私はペラペラだった。 私は写真のフィルムだった。 現像液につけられたあと、乾燥させるために干されていたのだった。 私に写っているのは、人物でもなく、風景でもなく、光だった。 光を拡大し、うすみどりや、ほとんど白に近い色で、 丸が構成されているような、なんだかわからないものだったが、 それが、初夏の日差しであることはわかった。

      • うねりノート#6 今日は目が見えなかった

        今日は目が見えなかった。 外で隣人が鉄製のアパートの階段をガシン、ガシンとはたいている音がする。 ひょっとしたら隣人は私よりも先に目が見えなくなっていたのかもしれない。 実際に隣人がはたいている姿をみたわけではないから、本当は違うかもしれない。 また、今度は、耳に機械的な音が聞こえて、生の、生の音が、 遠くにはなれていった。 はじめのうちは音が遠くになるリズムに合わせて、心臓がバクン、バクンと早鳴りしていった。 しかし、完全に無音になった途端、上昇気流にのった飛行

        • うねりノート#5 私はうさぎになった。

          私はまだ子供のままだった。星空を眺めながら寝て、 雪に埋もれて、うさぎの夢を見た。 うさぎはふわふわで人懐こかった。 私はうさぎになった。頭痛をかかえるうさぎ。 うさぎは人と人の間の問題がよくわかったので、 いつも頭を悩ませ、頭痛に悩まされていた。 うさぎは雪に飛びこんだ。暗くて、しずかで怖かったが、 星が見たかったので、雪に体を埋めながら夜空をずっと見ていた。 暗闇が怖いのは、なにも見えなくて、誰もいないからではなく、 見えていないのは自分だけで、周りにはびっしり「何か

        うねりノート#8 私はあたため続ける

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        • とちの記憶
          2本
        • うねりノート
          8本

        記事

          うねりノート#4 星は瞬いていた

          子供は空を見ていた。夜空だった。 私は子供になってみた。 子供はひとつの星を見ていた。星は子供に語り続けていた。 星は星だから、人間の言葉ではなく、星なりのやりかたで「強さ」と何度も何度も子供に伝えていた。 子供は電気以外で動くものを見たことがなかった。 星は瞬いていた。 子供のために、子供に向けて。 子供は泣いていた。 子供は星について学びはじめた。

          うねりノート#4 星は瞬いていた

          うねりノート#3 私は子供を育てることにした

          私は目でみて「なろう」と思ったものになることができる。 「明るく社交的」「皆さんと仲良くなりたい」これは明らかに別人になっていた時のわたしだ。今の私は孤独で居たい。 ほっておいてほしい。 私は子供を育てることにした。 そして、私は子供にとって最高の親友であろう。 映画や美術館に連れて行き、作品の解釈の違いで喧嘩したりして、 仲直りをするためにヴィレヴァンで売っている映画Tシャツをプレゼントしよう。 私は質問攻めしてくる子供に対して、まず自分が何をわからないのか明確にするよ

          うねりノート#3 私は子供を育てることにした

          うねりノート#2 私は毎日、他人になる

          僕はあいつが嫌い。 きらいというか嫌悪というやつだ。 うすら背が高く、人の機嫌を100%とれることがわかっている笑顔をする。 私だけはあいつがそれをわかってやっていることを知っている、だから99%だ。 やたらめたらに愛想のいい人を僕は信用しない。 「愛想」だけでどれだけの金を、優しさを、人から奪ってきたか。 あいつは僕の嫌いな自己愛に満ちたやつだ。 他の上辺だけのやつらの中に紛れ、生意気なことを平気でいえるやつだ。 僕とお前の関係はそこまでにいたっていないので、平気な顔

          うねりノート#2 私は毎日、他人になる

          うねりノート#1 私は少年だった。

          自分のたのしみのために物語を書く→わかる それをアップロード、出版する→わからない。なぜ? 3/10 初めて物語を書きたいと思った。手とペンで書くわけじゃ無いから「紬ぐ」だと思った。ある小説の1文を読んで、「あ、ちがう。もっとこうならいいのに」と思った。 私は自分の部屋に飾りたい絵を描くし、欲しいものをつくる。 だから、自分のほしい物語をかく。 物語は私の味方だし、とはいっても私は孤独であり続けるし、物語は実存しないから。矛盾した存在だから、私を勇気づけ、見守ってくれ

          うねりノート#1 私は少年だった。

          散歩が苦手だ

          散歩しなさい。 基本的に家にいるのが大好きで、 運動不足は必至なので至る所でとにかく言われる。 本当にめんどくさい。 家から出るがかなりの重労働だ。 しかし、めずらしく「う〜んヒマだし、散歩でも行ってやるか」 という気持ちになった。 そして家の近くを理由もなくぶらぶら、というやつをやってみた。 時間は16時くらい、昼間刺すような日差しだった太陽も傾き始め、 かといって暗くなるにはまだ時間がかかる。 地面を冷やして行くような涼しい風。 ちょうどいい。 なかなか気持ちいい

          散歩が苦手だ

          見た目で人は決めつけるという話

          見た目で人を判断してはいけない。もちろんそうだと思うし、 心は顔に現れるとも思う。 どちらも正しいと思うし、人は見た目以外のところでもかなり判断している。 私の超個人的な考えだが、目つきの悪い人は性格が悪くない。 どんなに綺麗な顔の人でも口が曲がっている人は要注意する。 あと、第一印象がよすぎる人も要注意。 私の見た目は小動物系。リス、カワウソ、プレーリードックとよく言われる。 そんな小動物フェイスの私が、タバコ吸いますよ。などというとかなり驚かれる。似合わないと言われる

          見た目で人は決めつけるという話

          怒られるから嘘をつく

          前回は見栄は自分を隠す保身ということについて書いた。 じゃあ嘘は何のためにあるのか。 嘘にも色々種類があると思うが、 自分に中身が無かった時につくものではないか。 見栄が既にあるものに対する保身=絆創膏のようなもの、 に対して嘘は何も無いものに対する保身=サポーターのようなものなんじゃ無いかと。 実際わたしも嘘をつく。 悪い癖だなと怒られ、自分で責めたりもした。 何度も止めようと思ったけれどやめられなかった。 それは「怒られる時の嘘」だ。 会社やバイト先で失敗したりミ

          怒られるから嘘をつく

          見栄とは自分を隠す保身だ。

          友人が恋人と別れた、その話を聞いていた。 割れた理由は色々あるそうなのだが、大きかったのは嘘をつくことがあったからだそうだ。自分の不都合は隠したり、見栄を張るための嘘をついたり。 その嘘で傷ついた友人もかわいそうだと思ったが、その恋人さんの方にも同情してしまう部分があった。 嘘をつく原因には自信の無さが大きいのではと思う。 本人も無意識で、息をするように嘘をついているのだと思うが こんなにもわかりやすく自信がない!と叫ぶのは時に寂しいだろうと思う。 しかし虚言は愛されたいと

          見栄とは自分を隠す保身だ。

          断れない。

          私は断りたい時に断ることができない。 怒られたり拒まれたりするのを極度に怯えるため 自分の主張をうまく伝えられない。 自分なりの解決方法で人間関係の諸々は断りやすくなったのだが、 久しぶりにバイトの面接を受けに行ったら、切羽詰りすぎていて オールオッケイのイエスマンになっていた。 だって落とされちゃうんだもん。 あーどうしよう、あーどうしよう 仕事については余裕のない昨今、 贅沢は言っていられないかもしれないが、 人間関係の誘いや、約束を断る方法について 個人的にやっている

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          自分の価値観を貫き通すのは、闘いのようだ。

          またやってきた。不安よ、こんばんは。 いまの私の現状としては 東京在住、無職。 地方で短期バイト(リゾバ)をしていたが、 契約が終わって帰ってきたら東京には仕事がなかった。 外出自粛要請で地方にいくことはままならない。 現在バイト先を探し中。 4連敗中。 まだ蓄えがあるもののバイトが見つからないのが不安の種。 1、2件目は自分の希望などを通そうとしていたが 今はなりふりかまっていられない。 理想的な働き方はこんなに難しいんだなと、思う。 日本では髪色が明るいだけで出来る仕

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          自分の価値観を貫き通すのは、闘いのようだ。

          穏やかに。願いを込めて、5月。

          もう最近ほんとに世紀末なんじゃないかと、不安に駆られます。 仕事も見つかりません。 20代も後半になると誰も応援してはくれないんだなと実感しました。 怖いです、助けてほしいです。でも誰も助けてくれはしないし、自分で動くしかない。「まだいける、大丈夫。」と自分に言い聞かせています。 でも本当は頭がわーーーーーーってなってます。 Twitterデモが恐ろしくて、やめてほしいって言うわけではないのですが、 本当にヤバい事態だぞと言う感じがして昨晩は穏やかではありませんでした。 昨

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          穏やかに。願いを込めて、5月。

          とちのきおく#2 西荻窪編

          #1はこちら 「西荻窪」 一番長く住んでいた街で、一番思入れが多い街かもしれない。 西荻の中でも一回引っ越している。 吉祥女子の近くの幼稚園に行っていて、 吉祥の美術科?の課題で、お姉さんたちが作ってくれたダンボール遊具を遊びに行ったことがあります。ハムスターの滑車みたいなおもちゃがあって楽しかった。 幼稚園にいく道に大きな公園があって、 そこの公園は私がはじめて自転車に乗れるようになった記念の公園でもある。 そこの公園は小学生になってもずっと遊んだ。近くに駄菓子屋さ

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