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地域文化商社「株式会社うなぎの寝床」のコンセプトとミッションとは何か?会社概要とその思考。

九州ちくごのものづくりを伝えるアンテナショップとして2012年にはじまったうなぎの寝床。現在7年目、株式会社になって3期を終えようとしているところです。2018年12月現在、役員、社員、アルバイト合わせて17人となりました。年商は約2億4000万円です。この数字が多いか少ないかは問題ではありません。事実として記述しておきます。数字の大小というのは、目的になる数字と、比較によるものでしかないので、現時点での規模感や状況を知ってもらうために、記しています。

○ 目次
01.業態について「地域文化商社」
02.地域文化とは何か?
03.事業目的:「物」と「人」を介した本質的な地域文化の継承と収束
04.地域文化と商社の棲み分け「物以前(地域文化)と物以後(商流)」
05.物とは何か?
06.うなぎの寝床が取り扱う「物」の基準
07.事業目的と物とそれぞれの役割の関係図
08.5つのミッション
09.ミッションに対してのフロー
10.地域文化商社のポジショニング
※ まとめ

2017年段階での写真

さて、今までうなぎの寝床は「雑貨屋さん、民藝店、アンテナショップ、コンテンツ製作会社、もんぺメーカー、動画制作、web制作、デザイン制作、まちづくりの会社」いろんな方に、いろんなフィルターで見られていました。それは、僕としては本望で、それぞれの解釈で会社の見え方が違うということにたいして面白いなと感じていましたが、あまりにも何をやってる会社かわからないと社内外からご指摘を受けることもありましたので、今回自分たちのミッションと、仕事をまとめてご紹介することにします。

今から地域でお店をやりたい、地域文化に携わりたいという方にとって、少しでも参考になる部分があればいいし、まずは全体像を把握してもらうため、考え方をしってもらうために、まとめたいと思います。

01.業態について「地域文化商社」
まず、業態についてですが、もともとは2012年に「九州ちくごのアンテナショップ」としてはじまりました。しかしながら、久留米絣もんぺのメーカーとして動いたり、動画制作の仕事を受けたり、県の事業を行ったりと、ショップ機能だけではない活動も増えてきました。福岡県南部のつくりての情報を取り扱っていたという領域から、地域文化というもう一つ広域の情報を取り扱っていくことになりました。「地域文化を担保するために、商業機能を担う」ということが、この業態の一番の目的です。商業機能を担って経済循環を生んだものは、また地域文化に還元していく。そういう姿勢をもった業態を地域文化商社として位置付けます。

02.「地域文化」とは何か?
文化に対する文献やwebをあれこれ調べましたが、文化の定義を完全に明確にしたワードには、僕はあまり巡り会いませんでした。僕の中で咀嚼して、まとめた結果こうなりました。
まずは「文化」について、これは上記に記している通り「土地と人、人と人が関わり合い生まれる現象の総体」と定義しました。これが、どういうことかといいますと、人間が行う全ての行為と、それにまつわる現象。ということだと思います。かなり広い言葉です。そして、この文化という言葉は前に名詞を引っ付けることによって、領域がグッと絞られてわかりやすくなります。例えば「芸術文化」「スポーツ文化」など。「地域文化」といった場合は、ある一定地域における、土地と人、人と人が関わりあい生まれる現象の総体となります。

03.事業目的 / 「物」と「人」を介した本質的な地域文化の継承と収束
この事業目的の肝は「収束」という言葉かなと思います。基本的には、本質的な地域文化というのは何か?というのを思考、議論を続けます。そして「物」と「人」を介して、現代社会においてのコミュニケーションの在り方を探ります。

基本的には、地域文化、物や人の経済的、社会的な継続と活用方法を見つけはしますが、地域に関わってきて、継承のみが重要な訳ではないと感じていました。もう後継者がいなくて、自分の代で辞めると決めている、ものづくりに携わっている方もいらっしゃいます。何も事情をしらない一時的な観光客の人などは「こんな素晴らしい技術がねー。もっと続けて欲しいねー。なんでやめるの?」こういう言葉をかける姿を多くみました。しかし、その仕事自体が時代にあわなくなってきていたり、重労働だったりすることもあり、僕も自分がその職人さんの身になると、絶対現代では続けたくないな。と感じる職業もあります。そういう場合は意思を尊重し、幸せな収束方法を探ることが重要なのではないか?と考えています。そして、速やかに本や動画としてアーカイブの方法論を考え実行する。これが大事だとは感じており、ただただ無下に経済発展をし、成長させていくのではなく、その人や企業、環境にあった成長方法、または収束方法をさぐっていく、このバランスをとりながら考えるということが重要なのではないかと考えております。

04.地域文化と商社の棲み分け「物以前(地域文化)と物以後(商流)」
地域文化商社というのは、実際どういう棲み分けなんでしょうか?わたしが考えている領域区分が上記の図です。りんごの木に例えています。商品開発などを行ったり、一般消費者からわかりやすい領域は「りんご」という果物であり、商品。みんなこの商品を中心に物事を考えがちです。

しかし、よくよく考えてください。りんごの実がなるまでのプロセスというのが私はとても重要だと考えており、人(つくり手)と土地との関係性によって、物が生まれる環境をつくる、そして、苗を植え、木になり、そしてようやくりんごがなる。これが、地域文化の全体像かなと考えています。

物以後という領域を見てみると「流通」です。物は問屋さんや、商社や流通業の人を通り、小売店などを経由して一般消費者に届きます。こういう役割分担を考えています。

05.物とは何か?
物には2つの機能しかありません。商品情報です。

商品には、価格と機能のみでできています。この領域に関しては大手メーカーや小売店が特化してやっており、その領域は意識はする必要がありますが、地域で活動する場合に、ここと同じことをやって、価格競争に巻き込まれていても仕方ありません。うなぎの寝床の考え方は「情報領域」=「文化領域」いわゆる歴史や技術や思想の領域をしっかりと構築することによって、経済に寄与する。文化の構築はしっかり行いながら、経済として社会とコミュニケーションを取る。そういうバランスを大事にしています。


06.うなぎの寝床が取り扱う「物」の基準
まず、基本的に物・商品を中心には考えておらず、コミュニケーションツールとして物、商品があると考えています。そこを前提に捉えてもらえるとありがたいです。

1.土地特性
まず、大事に考えているのは土地特性です。どういう土地でその物がつくられているのか?その特性と文脈を知り、理解することが重要です。

2.作り手
誰がつくっているのか?どういう思いで作っているのか?どういう技術を保有しているのか?

3.地域経済
伝統工芸などですと特にですが、情緒的に語られることが多いですが、事業承継の問題などは、ほぼ経済の自立性の問題であるので、ここを無視することはできません。

1-2.歴史・文化
この土地特性と、作り手の関係性の中に歴史や文化が眠っています。この関係性を紐解き伝えることが重要だと考えています。

2-3.社会・現代生活
作り手と地域経済の間に、現代生活があります。伝統工芸の作り手などは情緒的に語られることが多いですが、作り手も普通の大人であり職人である。経済性が担保できていないと、事業も続けられないという当然の現実を見ましょう。

3-1.文化の継承
地域経済の循環がしっかりと起こすことができれば、地域文化、土地性が担保されます。経済が循環しないと土地性は担保されません。

※まとめ
このように、商品中心主義というよりも、この土地特性や作り手のことを伝達するための物だったり、地域経済を循環させれる力がある物、いずれかの要素を含んだ商品・物をうなぎの寝床では取り扱います。


07.事業目的とものとそれぞれの役割の関係図
うなぎの寝床は最終的に全領域を地域文化商社としてやっていきたいと考えています。もの以前の情報を使い手に届けることが重要だと考えていて、そのリサーチと、これを現代に変換して「もの」に変える仕組みや思考、行動を常に行っていく必要があります。

08.5つのミッション
地域文化商社としてやるべきミッションは5つです。
a.地域文化の探求・研究:まずは潜在的な地域文化を探求し深める
b.地域文化の経済循環:編集で経済循環にのせれる部分はのせる
c.地域文化のアーカイブ:経済循環にのらない領域は速やかに動画や書籍、デジタルアーカイブを行う
d.地域文化間の交易の促進:地域文化というのは、交易を持って発展を行うので、他の地域のことを学び積極的に行動することが重要
e.地域文化 支援顧客の創造:消費者という言い方ではなく、地域文化を支えてくれる支援顧客だと考えています。協力していく必要があります。

09.ミッションに対してのフロー
まずは、地域資源を探求し、流通にのせれるものはのせます。この領域が業態としてはメーカーや小売店です。アンテナショップももちろんこの領域です。次に継承できる領域は継承し、経済循環、流通に乗らない商品や技術、文化に関しては動画や本にして残します。これをある一定地域でぐるぐると繰り返します。ある一定の時間軸でグルグル何度も回すということが大事だと考えています。

私たちは地域文化商社というモデルを、福岡県南部筑後地域で行なっていて、これは他の地域でも可能だと考えています。そのモデルを応用して、各地でこのような活動が行われていけば、その地域文化の潜在的魅力は顕在化し、まずは世の中に知られて、それが自然淘汰されるべきか、残っていくべきものなのか?という選択肢にのります。まずは、選択肢にあがることが重要だと考えています。

10.地域文化商社のポジショニング
黒子である。基本的には。地域において経済意識が高いけれど文化意識が低い既存商社や、文化意識は高いけど経済意識が低い美術館・博物館など、様々な領域の方々とコミュニケーションをとり、その間の領域、やれれていない領域を実行したり、両者を繋いだりします。お互い問題は実は保管しあっていたりして、マッチングがうまくいっていないだけということも大いにありえますので。

すると、経済的にも文化的にも、高いレベルに地域がいけるのではないか?という過程のもと活動を行っております。

○まとめ
基本的には、地域文化というのが継続していない理由は、経済が循環していないということが、地域に住んでいて、活動していてよくわかりましたので、歪みがでない無理なき範囲の中で地域文化を担保するために、商業機能をまわしていきます。自分たちの活動費と、その余剰分はまた地域文化に対して投資します。それを繰り返していくことが、この地域文化うなぎの寝床の活動だと考えています。

将来ビジョンとして、明確にここを目指す!という具体的な数値目標などがあるわけではありませんが、課題が見えてきたところ、やるべきところが見えてきた段階で取り組むということが重要だとは思っています。

固有の地域文化を、地域に住む人が持ち、誇りを持ってすごせる環境や意識を育てていけたら良いなと考えています。

アンテナショップの仕組みと考え方や、久留米絣MONPEに対する考え方なども少しずつ公開していきます。

代表取締役 白水高広

本質的な地域文化の継承を。