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ネクタイピンと秋空

私は物持ちがかなり悪い。買ったばかりのイヤホンなんてすぐ無くすか壊すかしてしまうものだから、音にかなりのこだわりがある癖に、安物のイヤホンで生活するようになったほどだ。
だが、貰ったものに関しては、とても物持ちがいい。ただ、捨てられないだけと言われればそれだけなのだが、兎に角、物持ちがいいのだ。

鞄の中だけでも、仕事に使っているペンは一つ前の交際相手からの贈り物だし、そのペンが入る筆箱は古い友人の誕生日プレゼントだし、タオルは入院中に当時の交際相手が買ってきてくれたものだ。冬になってつけるマフラーも、同じ恋人が8年以上前のクリスマスにくれたものである。

別にかつての交際相手に未練があるわけではない。それこそ8年も前の交際相手に、今更未練なんて感情を持つことの方が難しい。機能的だから、まだ使えるから使っているに過ぎない。ただ、それでも一つ、後悔していることがある。

私はその人からネクタイピンを頂いたのだ。高校の制服はネクタイの着用義務があったから、私は毎日それをつけて登校していた。勿論とても大切にしていたし、付けているだけで、幸せな気持ちになったものだ。他に新しくネクタイピンを買うこともなかったから、破局後も使っていたが、いつの間にか無くしてしまった。別に悲しくはなかった。ただ、デザインが気に入っていたから、多少勿体無い気持ちでいた。

だが、ある時、私はそのネクタイピンに込められた意味を知ることになる。


高校一年生から大学一年生の秋まで付き合ったその人は、今思えば些細なことで振ってしまったように思う。あの時の決断が正しかったのか、間違っていたのかはわからない。ただ、その決断がその時の彼女を深く傷つけたことだけは、手に取るよにわかってしまたた。だから、身勝手に、その人が幸せになることを、どこかで願い続けていた。


ある時、友人に贈り物をする時、ふと目に止まったサイト。「プレゼントに込められた意味」がまとめられていた。そこでネクタイピンを見つけて、しまった。

「あなたに首ったけ」


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