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性格形成は家庭環境とは無関係? (6)──一卵性と二卵性双生児。親の扱いが異なる?

○一卵性と二卵性双生児。親の扱いが異なる? 統計処理の方法以外で、実態にそぐわない歪みが生じているとしたら、どんなケースが考えられるだろうか? 浮田徹嗣氏(注2)は、二卵生双生児は親から同じ扱いを受けるわけではないとし「一卵生双生児は出生後両親からほぼ同様に扱われるのに対し、二卵生双生児は出生直後から、体の大きい方がお兄ちゃん的(お姉ちゃん的)扱いを受けるということを考慮しなければ、一卵性か二卵性かの比較により遺伝の影響を議論するのは適切ではない」と指摘している。  たしかに

    • 性格形成は家庭環境とは無関係? (5)──非相加遺伝

      ○非相加遺伝  こうしたコメントを頂き、少なくとも双生児法で用いる統計処理の方法が完全なものではないことは理解できた。もっとも安藤氏もこうした問題点の存在は把握していて、その一つとして非相加遺伝を挙げている。 非相加遺伝の例としては血液型がある。一卵性双生児の血液型が同じになる確率は100%(1)だが、二卵性の場合、二人が同じになる確率はその半分の50%(0.5)にはならない。 たとえばAB型とA型(AO)の両親から生れる二卵性双生児を考えよう。子供がA型(AA)、A型(AO

      • 性格形成は家庭環境とは無関係? (4)  双生児法に対する疑問 

        双生児法に対する疑問   性格のほとんどは遺伝+非共有環境で説明できるとしたこの手法に疑問を挟む余地はないのだろうか? 私は統計学には全くのシロウトなので、統計専門の方に尋ねてみた。  私は当初、性格が質問紙法(アンケート)によって集計されることで、本来の性格(そんなものがあるとも思えないが)と比べてばらつきが生じることで、相関係数が低めに算出されてしまう可能性を考えた。しかし単に測定の精度が悪いだけなら、必ずしも「共有環境の影響が小さい」方向にバイアスがかかるとは限らないと

        • 性格形成は家庭環境とは無関係? (3)──双生児法とは

          ○双生児法とは ところで、双生児法とはどんな手法なのだろうか? これは一卵性と二卵性の双生児を比較することによって、遺伝要因の関与の有無を予測する(一卵性の方が二卵性より似ていれば遺伝の影響がある)だけでなく、両卵性の類似性の差から①遺伝の影響力の大きさや、②遺伝だけでは説明できない「共有環境」の大きさ、③そして遺伝と環境を共有する一卵性すら類似させない個人に固有な「非共有環境」の大きさを推定する方法である。 ここで体重を例に、遺伝と共有環境、非共有環境の効果量の相対的な大き

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          性格形成は家庭環境とは無関係? (2)

          ○親が裕福だと子供は成績が良い?──私たちの常識を突き崩す双生児法  ちなみに私は双生児法を全面的に否定したいとは思っておらず、むしろ私たちの誤った常識を突き崩してくれる手法になると理解している。その例として双生児法の紹介を兼ねて安藤寿康氏の「格差と学業成績―遺伝か環境か」というタイトル記事(注1)の概要を示してみる。なお詳細は直接HPを参照して頂きたい。 〔教育社会学や教育経済学から、「親の学歴や社会階層が子どもの学習環境と学力を大きく規定し、教育格差を再生産している」と

          性格形成は家庭環境とは無関係? (2)

          性格形成は家庭環境とは無関係?(1)    安藤寿康「日本人の9割が知らない遺伝の真実(SB新書)」を中心に

          はじめに  昔から「氏か育ちか」という議論がある。近頃は「氏」支持派が優勢なようで、体型はもちろん、性格や知能、才能などにおいても遺伝的な影響が強調される風潮がある。こうした風潮を支える根拠としてしばしば取り上げられているものとして(人間)行動遺伝学、とくに双生児法による研究がある。  遺伝の影響が大きいという主張だけなら、私もとくに違和感を感じない。たとえば私は自分の父親と外見や性格が似ているし、有名スポーツ選手の親がかつては同じ分野で活躍していたという話もよく耳にするから

          性格形成は家庭環境とは無関係?(1)    安藤寿康「日本人の9割が知らない遺伝の真実(SB新書)」を中心に

          「自分探し」を探してみる(15)私の成り立ち・決定要因は遺伝?自分なりに考えた氏と育ち

             (14)の続きです。https://note.com/umi2100/n/ndb7f5560ddfa ○「非共有環境」って何?  前回、安藤寿康「日本人の9割が知らない遺伝の真実」の感想を書きながら「これでは『氏』が圧倒的に優勢で、『育ち』は見る影もないという結論になりかねない。昨今は今はこうした意見が主流なのかもしれないが、それでも、そう結論付けるのは避けたい」という気持が強くなった。そこで、もう一度、批判的な視点でこの本を読み直してみた。  するとこの本の中に出てく

          「自分探し」を探してみる(15)私の成り立ち・決定要因は遺伝?自分なりに考えた氏と育ち

          「自分探し」を探してみる(14)私の成り立ち・遺伝子2

          「日本人の9割が知らない遺伝の真実」より 前回(13)→の続きです。 https://note.com/umi2100/n/nd955d27ded02 氏か育ちか、すなわち「性格を決定するのは遺伝子なのか、それとも生まれた後の経験なのか」という議論は今も続いている。前回は、子供時代の影響を重視する立場の本を紹介したが、近年は育ちより氏、という説が主流となりつつある。そのことを、安藤寿康「日本人の9割が知らない遺伝の真実日本人」という本を紹介しながら考えてみる。  筆者は遺

          「自分探し」を探してみる(14)私の成り立ち・遺伝子2

          「自分探し」を探してみる(13)私の成り立ち・子供時代2

          「本当の自分」がわかる心理学より(その2)        前回(12)は→です https://note.com/umi2100/n/n7a7fa9447bc8 〇「内なる子供」の傷(影子)を感じないようにする防衛戦略  前回は、「内なる子供」の存在を、どうやったら確認できるのか、という疑問に対する筆者の答えを紹介した。筆者はこの確認ができると、次の疑問である、どうやったら「内なる子供」の傷を修復できるのか、についても解決可能になるとする。  その方法としていくつか紹介してい

          「自分探し」を探してみる(13)私の成り立ち・子供時代2

          「自分探し」を探してみる(12)私の成り立ち・子供時代1

          私の成り立ち・子供時代1 「本当の自分」がわかる心理学より(その1) 〇「内なる子供」とは? 子供時代がその後の性格形成に影響を及ぼす、という意見には誰もが賛成しそうだが、どのような形で影響するかに関しての決定的な説が未だ無いのも実情だだろう。とはいえ長い間、最も注目されてきて、今でも無視できないのがフロイトを中心とする精神分析の考え方だろう。 子供時代がどんな形で性格形成につながるのか? 子供時代のネガティブな影響をどう克服するか? こうした興味深いテーマをS・シュタール

          「自分探し」を探してみる(12)私の成り立ち・子供時代1

          「自分探し」を探してみる(11)私の成り立ち・遺伝子

          私の成り立ち・遺伝子  私の成り立ちを、遺伝子、子供時代(6歳ごろまで)、現在までに三つに分け、もう少し丁寧に考えてみる。  私たちの成り立ちに一番大きい影響があるのは遺伝子だということに異論を唱える人はいないだろう。しかし何となく、設計図によって家が建てられるように、遺伝子が全ての心や体を形作る、と理解している人が多いが、細かい点では違っている。  たとえばネズミなどの実験で、生まれてすぐの時期から全く光がない状態で育てると、光を感知する神経系が未発達となり目が見えな

          「自分探し」を探してみる(11)私の成り立ち・遺伝子

          「自分探し」を探してみる(10)私の成り

          私の成り立ち ──「本当の自分」がわかる心理学、を参考にしながら 現在ある自分の「成り立ち」を時期別に分けて考えるとすれば、生れる前、つまり遺伝子にプログラミングされている要素と、子供時代、そして現在に至るまでの三つに大別するのが良いだろう。 一番大きいのは遺伝子だろう。性格形成においても大きな影響があることは40年ほど前からさまざまな分野で指摘されるようになった。筆者も遺伝子が性格(内向性、外向性)と知能の大部分を決めることを認めているし、たまたま手元にある「感

          「自分探し」を探してみる(10)私の成り

          「自分探し」を探してみる(9)「本当の自分」がわかる心理学

          「本当の自分」がわかる心理学 すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある シュテファニー・シュタール 繁田香織(訳)大和書房 「本当の自分」というタイトルに惹かれて読んでみた。しかし残念ながら「本当の自分とは何か」を直接的に取り上げている本ではなかった。それでも世界で160万部、出版されているというだけあり、自分探しにも役立つと思うので紹介したい。その上で、これに関連させて、自分なりに考えたことを述べたい。 〔1〕ザックリとした内容の紹介と感想               

          「自分探し」を探してみる(9)「本当の自分」がわかる心理学

          「自分探し」を探してみる(8)今でも自由に選べるわけではない

           自分自身の行動や、あるべき姿を自分で選べないという現象は今もある。私自身のささやかな体験から話そう。中学生のとき、部活練習の一環として学校の周りを走るように指示され、一時期はそれを日課にしていた。  その当時は走ることに対して疑問に思うこともなかったのだが、その後高校生になったある日「体力を付けよう」と考え、かつてそうしたように出身校である中学校の周りを走ることを思いついた。 ところが、中学校の近くまで来たとき「そう言えば自分はもう中学生でもないし、当時の先生に会うかも

          「自分探し」を探してみる(8)今でも自由に選べるわけではない

          「自分探し」を探してみる(7)かつては自分の未来は自分で選べなかった。

           先日、たまたま高齢者ばかりが集まり、昔話に花を咲かせた。現在も農業をしているという80歳の男性が「若いころ、自分は本当は造船の技術者になりたかった。それで恐る恐る父に相談したら『自分が長男だということを忘れるな』とだけ言わた。その一言だけで『ああ自分は農業をやるしかないのだな』と悟った。今の若い人にそんな話をしても判ったもらえないだろうな」、と嘆くように語った。 するとすかさず70歳の女性が「私なんかもっとひどいですよ。私は医者になりたかった。でも母に相談したら『医学

          「自分探し」を探してみる(7)かつては自分の未来は自分で選べなかった。

          「自分探し」を探してみる(6)昔は、悩まなかった?

          昔に比べ、自分探しの助けになるツールや情報は、飛躍的に増えたと 思われる。ではそししたものが無かった昔の人は、私たちよりももっとこうした問題に悩んだのだろうか? 職業に限定すれば、狩猟採取の時代においては、専門職というとシャーマンぐらいで、あとは皆同じようなことをやっていた。もちろん力が強い、勇気がある、視力がよいなどの特徴によって、役割どころは違っていただろうが。 農耕の時代になって、支配者や軍人、宗教関係者、物作りや芸術関係者など職能分担が進んだ。しかし仮

          「自分探し」を探してみる(6)昔は、悩まなかった?