「自分探し」を探してみる(10)私の成り

私の成り立ち
──「本当の自分」がわかる心理学、を参考にしながら

現在ある自分の「成り立ち」を時期別に分けて考えるとすれば、生れる前、つまり遺伝子にプログラミングされている要素と、子供時代、そして現在に至るまでの三つに大別するのが良いだろう。

一番大きいのは遺伝子だろう。性格形成においても大きな影響があることは40年ほど前からさまざまな分野で指摘されるようになった。筆者も遺伝子が性格(内向性、外向性)と知能の大部分を決めることを認めているし、たまたま手元にある「感情心理学入門(大平英樹)」では、感情的反応とセロトニン・トランスポータ遺伝子とが関係するという記述がある。

 次に著者(本当の自分が~)や精神分析が最も強調する子供時代(6歳ごろまで)の影響だ。本書によれば、子供時代にすり込まれた事柄は、無意識の中に保存され「内なる子供」として性格や自己価値観に影響を与える。私たちは理性的な大人として振る舞っていると思いがちだが、実際は「内なる子供」が私たちの認識、感情、思考、行動を決める、ということなので極めてその影響は大きいことになる。

 フロイトが主張する「無意識」を中心とした理論に批判的な人でも、子供時代の影響が大きい点は否定しないだろう。

 三番目は、子供時代から現在までだ。中年以降の人なら、同窓会に出席すると同じような印象を抱くと思うが、官僚になった人、教師になった人、営業マンになった人、などと会っても「昔と変わらないな」と思う一方でその人たちが「職業に相応しい顔付になり、仕種をしているな」とも思うに違いない。

 つまり「内なる子供」の影響が大きいにせよ、その後の社会的立場などによって大きく変化する、ということだ。


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