「自分探し」を探してみる(7)かつては自分の未来は自分で選べなかった。

 先日、たまたま高齢者ばかりが集まり、昔話に花を咲かせた。現在も農業をしているという80歳の男性が「若いころ、自分は本当は造船の技術者になりたかった。それで恐る恐る父に相談したら『自分が長男だということを忘れるな』とだけ言わた。その一言だけで『ああ自分は農業をやるしかないのだな』と悟った。今の若い人にそんな話をしても判ったもらえないだろうな」、と嘆くように語った。

するとすかさず70歳の女性が「私なんかもっとひどいですよ。私は医者になりたかった。でも母に相談したら『医学部は6年制でしょう。卒業した時点で24歳になっちゃうのよ。その後も忙しいしきっと婚期を逃すわよ』と言われて断念したの。今でもなんで母の言葉を真に受けたのかしらと後悔しちゃう」と応じ、その後も何人もの人が同じような体験談を語った。

 つい数十年前まで、自分の将来は両親や親戚などの周囲の人に相談して決めるというのがごく普通だった。私も親しいわけでもない遠縁の人に「どこの大学(高校)を受験するのか」と尋ねられ、「なんでそんな質問をされなければいけないのか」と不満に感じた体験がある。


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