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担任にとって手間だと感じても軽視しないほうがいいもの

前回の記事では、掃除のメリットとして、生徒の人柄・立ち位置・関係性・心境を把握できるということを書いた。

担任として生徒のことを知りたいと思うなら、掃除に立ち会い、よく観察するといい。



さて、掃除のメリットはほかにもたくさんある。今回は順に書いていきたい。



▶︎生徒とコミュニケーションが取れる

掃除中はよく生徒から話しかけられる。

授業や部活などのかしこまった場や、休み時間などの短時間ではなく、のんびりとした掃除中に交わすようなコミュニケーションこそ大切にしたいとわたしは思っている。

また、長期休み前などの放課後に、有志の生徒数名と残って念入りにワックスをかけたり、消しゴムのカスを削り取ったりして、最後にありがとうと言いながらジュースを飲む時間は格別である。

このことについてはいずれ改めて書きたい。



▶︎生徒が勉強に集中できる

教室がきれいだと授業しやすく、逆に教室が汚いと授業しづらい。理由は教室の状態と生徒の集中力が連動しているからだ。

これは本当に実感している。

なお、多動傾向のある生徒はこの差が顕著である。教室が汚いとあちこちが気になって視線を飛ばし、注意力が散漫になってしまう。

※教室がきれいでもできれば配慮が必要だ。わたしは黒板の上下左右に派手な掲示物を貼らないよう心掛けている。授業中の生徒目線は、黒板と教師、それから白黒で作られた時間割など最低限の掲示物のみとなるようにしている。



▶︎生徒の管理能力が養われる

でろーんと開いた鞄から溢れ出るしわくちゃのプリント類も、汚い教室なら溶け込むが、きれいな教室だと目立ってしまう。

そのため教室がきれいだと、生徒は自ずと散らかさないようになる。自分の持ち物に対する管理能力が養われるのだ。

実際、汚い教室のクラスにいたときは持ち物の整理ができていなかった生徒も、クラス替えできれいな教室のクラスになると整理ができるようになっていく。逆もまた然りだ。



▶︎生徒が役割を得られる

特に発達的特性のある生徒は、掃除がぴったりあてはまることもある。

わたしが携わった生徒では黒板が多かった。

アスペルガー・ADHD・自閉症スペクトラムなどの生徒に黒板係を任せたら、役割にこだわりと責任を持ってくれた。

黒板に拭き残しがあると、字を書く教員も、字をうつす生徒も、気が滅入る。だからいつも黒板がきれいだと本当にありがたい。

実際、各教科の担当教員から「あのクラスは黒板がきれい」と評判だったし、クラスの生徒に「〇〇(黒板係の生徒)がいつも黒板をきれいにしてくれるから助かるね」と再三伝えることで、生徒からも本人に感謝する習慣ができていた。

黒板以外には、エアコンのフィルター・窓・教室の壁・床の縁など、それぞれの生徒がそれぞれの役割にぴったりあてはまったことがある。

勉強で注目される子、運動で注目される子、陽気な性格で注目される子など様々だが、そのなかに掃除で注目される子も加えるといい。

なにかしらの事柄で皆から一目置かれることは、本人の自信にも繋がっていく。



▶︎担任のタイプがわかる

これはおまけのような位置付けだが、掃除を徹底させてきれいな教室を維持させることは、思いのほかむずかしい。

だからこそ担任のタイプが明確にあらわれる。

毎年教室をきれいに保つ担任と、毎年教室が汚くなる担任は、いずれも固定化されている。

※ちなみに、職員室の机も教室と同じになりがちだ。教室がきれいなら机もきれいだし、教室が汚ければ机も汚い。

そのため教室の雰囲気は担任の雰囲気ともいえる。

なにかのついでに教室をサッと覗くだけで、このクラスの担任はこういう感じかとわかるかもしれない。



以上が掃除のメリットである。

わたしは掃除に対する思い入れが強い。

ひとりひとりの生徒を把握できるし、生徒とコミュニケーションを取れるし、生徒の姿勢を導ける。

掃除は本当に奥が深い。

放課後の慌ただしい時間帯、担任にとって掃除の指導は手間に感じるかもしれないが、軽視せず、丁寧に取り組んだほうがいいと思っている。

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