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多度津町議会選挙関連 書評:小松理虔『地方を生きる』ちくまプリマー新書、2021年。

いわき市でローカルアクティビストとして活動している小松理虔『地方を生きる』ちくまプリマー新書を読み終えました。

地方で生きること、あるいは地方で生き残るためには何が必要なのか、その魅力と大変さを縦横に語る本書は、地方というキーワードを超えて幅広く手にとってほしい一冊です。

本書の中で、小松さんは「魅力と課題は同時に発見されるもの」だから面白がろうと勧めます。

確かに地方には、都会には面白さやその土地土地の魅力があります。またその一方で風通しの悪さといった負荷も歴然として存在ます。そうしたコンテンツを対照的に捉えるのではなく、面白がろうと向き合うことでクリアしていくことができるのじゃないかという視座は非常に魅力的な提案です。

ぼくが最も伝えたいことを前もって書いてしまうと、地域のためとか、復興のためとか、家のためとか日本のためとか、そういうことは一切考えなくていい。あなたは、あなただけの人生を堂々と歩むべきだ。それが、地域と共に生きること、課題とともに生きることなんだということです。

小松理虔『地方を生きる』ちくまプリマー新書、2021年、173頁。

著者の言うローカルとは自分が住む場のことだから本書を読むことで誰もが豊かになれる方向性であり、この地に足が着いた自己肯定感こそいま必要なポイントだと感じました。

そこから自分という「現場」がより豊かになっていくのではないでしょうか。

個人と社会がバラバラになりつつあるという危惧があります。しかし従来の社会、あるいは世間に息苦しさがあったのも事実であったとすれば、再現で危惧を乗り越えるのは不可能です。だとすれば、どう、新しく個人と社会を結びつけていけばよいのかを考えるうえでは、本書はそのヒントに溢れた一冊です。

大事なのはあなた自身です。どこまでも、自分の関心や興味や、自分の課題や生きづらさから出発すればいいんです。

小松理虔、前掲書、175頁。


氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。