氏家 法雄 ujike.norio

「哲学は常にあなたの暮らしの真正面から始まります」ーー。 戦う哲学者、神学者、書評子、…

氏家 法雄 ujike.norio

「哲学は常にあなたの暮らしの真正面から始まります」ーー。 戦う哲学者、神学者、書評子、大学教員を経てNPO法人あおぞら理事(多度津町)。無教会主義の吉野作造研究者。考えることと暮らしの新しい接続を試みた『暮らしを哲学する』明日香出版社を刊行。地域再生と福祉の接続を提案中。

マガジン

  • 多度津にいったい何があるというんですか?

    氏家法雄の地域再生の記録。香川県仲多度郡多度津町、芸術喫茶清水温泉、お惣菜処てつや周辺から地域の未来を考える試み。しかし、多度津にいったい何があるというんですか

  • あんときのフィルムカメラ

    最近、趣味のフイルムカメラでの撮影を再開しました。現像代が思った以上に高額なことに驚いていますが、少し古いフィルムカメラを使って、景色を切り取り、時間を残していきたいと思います。

  • あんときのデジカメ

    少し古いデジタルカメラを使って、景色を切り取り、時間を残していきたいと思います。毎週木曜日か水曜日に更新しています。

  • B面のウジケさん

    『朝日新聞』の投書欄や折々のことばに「気づいた」ことに「ツッコミ」をいれていきます。学びや気づきのきっかけを目指します。

最近の記事

  • 固定された記事

暮らしと学問 1 学問というよろこび

(はじめに)20年以上にわたって学問をやってきましたので、読書は熱心ですし、文献を読み込み、それを精査して論文書いたりしています。すると「そんなに本を読んでばっかりで楽しいの?」と聞かれますが、まあ、「楽しい」ですよね。読書したり、幅広く言えば勉強したりすることの一体、何が「楽しい」のでしょうか? そのひとつを紹介したいと思います。 どうでもいいことを「知る」こと  国語辞典編纂者の飯間浩明さんのコラム「街のB級言葉図鑑」(『朝日新聞』土曜版be連載)が面白く、週に1度の

    • 人口動態調査の結果から考えなければならないこと

      24日に総務省は、2024年1月1日時点の人口動態調査を発表しました。 外国人を含む総人口は1億2488万5175人で、前年を約53万2千人ほど下回ったとおいいます。下がり幅は、1968年の調査以来、最大の減少幅になりました。 香川県に注目すると、人口は94万8585人で前年から8202人の減少で、減少率は0.86%。 深刻な少子高齢化が背景にあることは疑わざる要因といえますが、出生者数が死亡者数を上回るケースはなく、地域外の人材を受け入れる地道なまちづくりが必要不可欠

      • 書評=ガート・ビースタ(上野正道、藤井佳世、中村(新井)清二訳)『民主主義を学習する 教育・生涯学習・シティズンシップ』勁草書房、2014年。

        キャリア教育や学び直しが昨今喧伝されていますし、学び直しや、生涯学習は人間が人間らしくなっていくためには、必要な契機と考えていますから、その内実を精査することが僕は必要だと考えています。 そうした新しい教育の在り方を根本的に考え直していきたいときに、まず紐解きたいのがガート・ビースタ(上野正道、藤井佳世、中村(新井)清二訳)『民主主義を学習する 教育・生涯学習・シティズンシップ』(勁草書房、2014年)ではないでしょうか。 「民主主義の学習とは、政治における主体化である。

        • 書評=鶴見俊輔『言い残しておくこと』作品社、2009年。

          2015年7月20日の今日は、思想家・哲学者鶴見俊輔さんの命日です。もっともといってよいほど影響を受けた日本の「本物」の哲学者のひとりです。 原稿を整理していたら昔書き散らした書評がありましたので、再掲で遺徳を偲び、その意志を継承する契機へと変えさせていただきます。 書評=鶴見俊輔『言い残しておくこと』作品社、2009年。 鶴見さんのユニークな平和思想・非暴力主義、そして「じぶんで考える」という哲学的スタンスはどのように生成されたのか。 個人的なことがらから語るとすれ

        • 固定された記事

        暮らしと学問 1 学問というよろこび

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        • 多度津にいったい何があるというんですか?
          79本
        • あんときのフィルムカメラ
          15本
        • あんときのデジカメ
          58本
        • B面のウジケさん
          1本

        記事

          読書の夏に向けて

          ジョン・ロック(下川潔訳)『知性の正しい導き方』ちくま学芸文庫(2015年)を久しぶりに紐解いています。 本書は、人間の自由と自主独立を徹底的に考察し、その論理的導き方を説いたジョン・ロック晩年の名著で、いわば、自分の頭で考えるための教科書といっても過言ではありません。 知性を人間の人間らしさの一つと数えることに異論はないと思いますが、それでも個々人の知性は外部の権威と内部の偏見や情念に流され易いのも事実です。 だからこそ一人ひとりの人間が知性を自主独立させ(知性の自由

          読書の夏に向けて

          東京と地方という二項対立を超えて

          たまに東京の真夏の雑踏が懐かしく感じることがあります。地方と東京を行き来しながら50年以上生活するとはっきりわかるのは、 東京がいいのか、地方がいいのかというのは設問自体がナンセンスであり、東京には東京の良さがあり、地方には地方のよさがあり、その間でひとは生きているのではないかと思ったりもします。 便利さというフラグを立ててその問を召喚してみたとしても、ここ数十年でかなりフラットになってきたようにも思います。 大切なことは、右肩上がりの経済成長や24時間戦えますか的なラ

          東京と地方という二項対立を超えて

          フードリボンについて

          月曜日の『四国新聞』(2024年7月15日付)に「フードリボン 使い方知って」という記事が紹介されていました。 子どもたちに無料で食事を提供する取り組み「フード・リボン」とは「来店客がリボンを購入すると、その店を訪れた子どもに無料で購入額分の食事が振る舞われる仕組み」のことです。 まだ認知度が低く「使い方が分からない」といった声もあるのが実情で、認知度向上に向けて10月20日に高松でマルシェが開催されるそうです。 先日のこども食堂・こどもの居場所研修会でもフードリボンの

          フードリボンについて

          歯車として使い捨てされる会計年度任用職員をめぐる問題

          『四国新聞』(2024年7月11日付)では、「非正規職員の不満続出」という記事が紹介されていました。 「自治体、15分時短で退職金回避か」という問題で、いわゆる非正規公務員の待遇の劣悪さを行政自体が招いているフシがあり、その「『パート扱い』国見直し要請」している問題です。 こちらの問題については、昨年から今年初頭にかけて専門家の方からお話を伺う機会に恵まれ、「財政難の自治体が、正規職員の穴埋めとしてパートを増やし、こうした職員が市民生活に必須の業務を担う『エッセンシャルワ

          歯車として使い捨てされる会計年度任用職員をめぐる問題

          持続可能な地域発展の要としてのこども食堂

          今日は丸亀市社会福祉協議会で開催されました中讃2市3町「子ども食堂・居場所づくり等ネットワーク会議」に参加させて頂きました。 これまでのこども食堂・こどもの居場所についての活動報告とそこでの手応え、今後の課題など20分ほどお話しさせて頂きました。 これまでこどもの居場所を多世代交流として運営してまいりましたが、あらゆるひとびとを巻き込む地域共生のモデル事業になるものと確信しております。またこんどきちんと報告させて頂こう思いますが、右肩上がりの経済成長がのぞめない以上、成熟

          持続可能な地域発展の要としてのこども食堂

          今後の公共交通のあり方について

          人口減少と高齢化、そして危機的な財政状況から、行政のみでまちづくりができない現在。大切なことは、お一人おひとりの町民の方と力をあわせて新しいまちづくりを進めていくことが不可能です。 そこで、多度津町では「私に関係ある?ある! 自分ごと化会議」を設け、広く町内の方々から闊達な意見を伺いながらまちづくりをすすめていく取り組みを実施しております。 7月6日の今日は、第1回目で、今後の公共交通の在り方についてが議題となりました。行政から多度津町の現状の紹介のあと、参加者さんの自己

          今後の公共交通のあり方について

          社会の先頭を切って理想を実現していくこと

          紹介が遅くなりましたが、日本宗教学会の学会誌『宗教研究』最新号(第98巻 409 第1輯、2024年6月)が届いていました。 外川昌彦先生の論考「エリアーデのインド体験とインド先住民の巨石文化」ほか、樋口雄彦著『明治の旧幕臣とその信仰』の書評など興味深く拝読させて頂きました。 最新号で、注目したのは、「男女共同参画・若手研究者支援委員会:日本宗教学会における男女共同参画・若手支援に向けた取り組み」です。 本論は、二〇二一年に実施し二〇二二年第八一回学術大会で報告し

          社会の先頭を切って理想を実現していくこと

          軍歌だけは絶対に歌わない

          いつもデイサービスに来て頂き、利用者の皆さまとご一緒に音楽会(合唱会)を開いてくださっている詩吟の先生は、国民学校在学中に敗戦を迎えられた戦中派です。 懐かしい唱歌から美空ひばりの歌謡曲まで幅広く歌ってくださるのですが、「軍歌」だけは絶対に歌いません。 「戦争は何があっても絶対にいけない」。 自らの体験から矍鑠ときちんと断言し、暴力を美化の風潮に警鐘を鳴らしてくださいます。自分自身の体と心に裏打ちされた言葉ですので、重く受け止めています。 1990年代以降、ディベート

          軍歌だけは絶対に歌わない

          合田正人先生との出会い

          縁とは不思議なもので、ひととひととの思わぬ出会いに驚き、感謝することがあります。 何十年も哲学や神学という学問と知的格闘を積み重ねてきましたが、その成果をまちづくりにいかしたいとの思いで、思い切って地方政治の世界へ飛び込んでみたものの、アカデミズムの世界から「遠くへきてしまったなあ」という忸怩たる思いを隠すことはできないところもあります。 ともあれ、大事なことは、どこにいても学ぶことを諦めずに、死ぬまで研鑽し続けることだと頭では理解していても、感情として整理できない部分も

          合田正人先生との出会い

          空き家対策と定住促進

          「空き家整備 定住促進へ」綾川町が過疎化対策事業 香川県全体で空き家の増加が問題になっておりますが、2024年6月18日(火曜日)付『四国新聞』に綾川町の取り組みが紹介されていました。 曰く 綾川町では「豊かな自然などのアピールポイントがあるものの賃貸物件自体が少なく、居住希望者がいてもニーズに応えられない」ことから町が空き家を一般公募し、リフォームしたうえで貸し出すことにした。 地域の賃貸物件状態やアピールポイントに違いはありますが、多度津町でも参考になる施策ではな

          空き家対策と定住促進

          かがわ子育てステーションパワーアップ事業研修会

          今日は10時より香川県庁にて「かがわ子育てステーションパワーアップ事業研修会」に参加しました。 事業所でも「かがわ子育てステーション」の認証をうけておりますが、今回は北海道大学の川田学先生をお招きして「子育て家庭のより所になる【かがわ子育てステーション】を目指して」との講演をお聞きしました。 かがわ子育てステーションとは、「子育て家庭等が気軽に立ち寄ることができる子育てに関する施設等」のことですが、 「子育て家庭」「等」の「等」とは何か?と問われると難しいですよね。

          かがわ子育てステーションパワーアップ事業研修会

          移住先として人気の香川県

          香川移住 過去2位の多さ=『四国新聞』2024年6月3日(月曜日)付。 報道によれば、「2023年度の香川への移住者数は前年度比266人増の2765人で、21年度に続いて過去2番目」に増えたそうです。 「市町別では12市町で増加し、丸亀市、善通寺市、琴平町は前年度から倍増」し、香川県が移住先として「コロナ後も根強い人気」であるとのことです。 一方多度津町ではどうでしょうか。昨年より微減しているのが数字から現れてくる結果です。 丸尾町長は、令和6年の施政方針で「重点施策

          移住先として人気の香川県