氏家 法雄 ujike.norio

「哲学は常にあなたの暮らしの真正面から始まります」ーー。 戦う哲学者、神学者、書評子、…

氏家 法雄 ujike.norio

「哲学は常にあなたの暮らしの真正面から始まります」ーー。 戦う哲学者、神学者、書評子、大学教員を経てNPO法人あおぞら理事(多度津町)。無教会主義の吉野作造研究者。考えることと暮らしの新しい接続を試みた『暮らしを哲学する』明日香出版社を刊行。地域再生と福祉の接続を提案中。

マガジン

  • 多度津にいったい何があるというんですか?

    氏家法雄の地域再生の記録。香川県仲多度郡多度津町、芸術喫茶清水温泉、お惣菜処てつや周辺から地域の未来を考える試み。しかし、多度津にいったい何があるというんですか

  • あんときのフィルムカメラ

    最近、趣味のフイルムカメラでの撮影を再開しました。現像代が思った以上に高額なことに驚いていますが、少し古いフィルムカメラを使って、景色を切り取り、時間を残していきたいと思います。

  • あんときのデジカメ

    少し古いデジタルカメラを使って、景色を切り取り、時間を残していきたいと思います。毎週木曜日か水曜日に更新しています。

  • B面のウジケさん

    『朝日新聞』の投書欄や折々のことばに「気づいた」ことに「ツッコミ」をいれていきます。学びや気づきのきっかけを目指します。

最近の記事

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暮らしと学問 1 学問というよろこび

(はじめに)20年以上にわたって学問をやってきましたので、読書は熱心ですし、文献を読み込み、それを精査して論文書いたりしています。すると「そんなに本を読んでばっかりで楽しいの?」と聞かれますが、まあ、「楽しい」ですよね。読書したり、幅広く言えば勉強したりすることの一体、何が「楽しい」のでしょうか? そのひとつを紹介したいと思います。 どうでもいいことを「知る」こと  国語辞典編纂者の飯間浩明さんのコラム「街のB級言葉図鑑」(『朝日新聞』土曜版be連載)が面白く、週に1度の

    • 『広報 たどつ』2024年8月

      すでにお手元には届いておりますが、『広報 たどつ』8月が発行されました。 8月号では、冒頭で「避難情報と災害時の避難行動について」がわかりやすく掲載されています。これから台風の本格的なシーズンが到来します。目を通していただければと思います。 また、4ページでは、「令和6年度 敬老祝金(たどつ共通商品券)の支給について」のお知らせがあります。来月、住所地へ郵送されますで、ご確認お願いします。 10ページでは、「家具転倒防止対策促進事業補助金」が紹介されています。 「大地

      • 秋来ぬと 目にはさやかに見えねども

        秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる 『古今和歌集』(巻四 秋歌上 169)に収録されている有名な和歌です。 まだまだ暑い日が続く夏の終わり頃、秋の気配がなかなか感じられないと思いながらも、風の音が秋の訪れを知らせてくれる。 そんな有名な和歌です。 多度津町でも相変わらずの酷暑が続きます。また香川用水の取水制限も始まりましたが、それでも朝な夕なに秋の訪れを感じることが多くなりました。 高松気象台の予報によれば、湿った空気の影響で雨が振りやすい日が続き

        • 誰もがきちんと失敗できるよう、後方で支える社会も同時に育むこと

          今日付『朝日新聞』の「折々のことば」では、タレントの草彅剛さんの言葉を鷲田清一先生は紹介しております。 一番の失敗は、失敗することを恐れることだと思っています。 この草彅さんのことばは、本当に額面通りで、例えば、大業を成し遂げようとおもったとき、必須のチャレンジ精神となります。 大業やチャレンジ精神と聞けば、ふだんの暮らしのなかでは「関係ないや」というムキもあるかと思いますが、それは早合点かもしれないと「折々のことば」は教えてくれます。 草彅さんは、古着が好きで「当時

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        • 多度津にいったい何があるというんですか?
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        • B面のウジケさん
          1本

        記事

          8月15日と丸山眞男

          79年前の今日、敗戦を迎え新しく仕切り直したというのは、建前だけなのかなあとぼんやり思うことがしばしあります。要は、明治以降に制度設計された日本の装置としての国家は、ゴマカシと偽装の連続で、政治学者丸山眞男がいう「ずるずるべったり」という日本の精神風土は何も変わっていないという話です。 度重なる政治的腐敗の連続だけでなく、民間での不正といった問題がその証左であるといっても過言ではありません。 こうした問題に独立自尊した(=福沢諭吉)市民的理性の立場から、その病巣ち戦い続け

          8月15日と丸山眞男

          遠くて近きもの 極楽。舟の道。人の中。

          遠くて近きもの 極楽。舟の道。人の中=清少納言『枕草子』岩波文庫 先日、琴平町で人権講演会があったので、帰路、自宅の母親の顔を見てきました。といっても、時間が迫っているので 「元気?」って声かけただけですが汗 最近思うのは、私の母親にしても、「これまで生きてきた時間」よりも「これから生きていく時間」が短いことは否定せざる事実で、実は、この問題は僕に関してもほぼほぼ当てはまるのも事実です。 なかなか「声をかける」のも遠ざかったしまうのですが、それでも、少しは心のどこかに

          遠くて近きもの 極楽。舟の道。人の中。

          こどもの熱中症について

          こども家庭庁では、こどもの熱中症や予防に活用して欲しいと専用サイトを開設しました。 みんなで見守り「こどもの熱中症」を防ぎましよう。 こまかくはサイトに譲りますが、 こどもの特徴とは、 1. 汗をかく機能が未熟で体温を下げるまで時間がかかる 2. 新陳代謝が活発で汗や尿で出ていく水分が多く、脱水をおこしやすい おとなとは違いますよね。 注意すべきポイントは、 1.汗や体温、顔色や鳴き方などの異変に敏感に 2.喉が渇く前から水分や塩分を補給 ということになります。

          こどもの熱中症について

          「LGBTって何だろうか? 知っておきたい多様性」(弁護士・仲岡しゅん先生)

          昨日は、2024年度 仲多度郡人権・同和問題講演会「LGBTって何だろうか? 知っておきたい多様性」(弁護士・仲岡しゅん先生)に参加しました。 昨年6月LGBT理解増進法が施行されましたが、まだまだ理解が進んでいるとは絵言えません。当事者である仲岡先生は、そのイロハについてわかりやすく丁寧に説明してくださりました。また大阪出身とのことで、お笑いのノリとツッコミで終始楽しく拝聴することができました。 一人ひとりの人間が違うのは、顔や声が違うように当たり前の事実です。しかし、

          「LGBTって何だろうか? 知っておきたい多様性」(弁護士・仲岡しゅん先生)

          共に知る

          日本語の「良心」という言葉には、どうしても儒学的な性善説の系譜のなかにこの言葉が位置づけられており、どうしても「良い」「悪い」という価値判断が全面に出てくる嫌いがあります。 では、良心という言葉の西洋での系譜にはどのような意義があるのでしょうか。 良心の原義を「共に知る」ということに注目したいと思います。ここには、「良い」「悪い」という判断から良心が導かれるのではなく、「共に知る」ことからそうした判断を共通了解しようという立場があります。 政治の世界だけでなく、わたした

          人口動態調査の結果から考えなければならないこと

          24日に総務省は、2024年1月1日時点の人口動態調査を発表しました。 外国人を含む総人口は1億2488万5175人で、前年を約53万2千人ほど下回ったとおいいます。下がり幅は、1968年の調査以来、最大の減少幅になりました。 香川県に注目すると、人口は94万8585人で前年から8202人の減少で、減少率は0.86%。 深刻な少子高齢化が背景にあることは疑わざる要因といえますが、出生者数が死亡者数を上回るケースはなく、地域外の人材を受け入れる地道なまちづくりが必要不可欠

          人口動態調査の結果から考えなければならないこと

          書評=ガート・ビースタ(上野正道、藤井佳世、中村(新井)清二訳)『民主主義を学習する 教育・生涯学習・シティズンシップ』勁草書房、2014年。

          キャリア教育や学び直しが昨今喧伝されていますし、学び直しや、生涯学習は人間が人間らしくなっていくためには、必要な契機と考えていますから、その内実を精査することが僕は必要だと考えています。 そうした新しい教育の在り方を根本的に考え直していきたいときに、まず紐解きたいのがガート・ビースタ(上野正道、藤井佳世、中村(新井)清二訳)『民主主義を学習する 教育・生涯学習・シティズンシップ』(勁草書房、2014年)ではないでしょうか。 「民主主義の学習とは、政治における主体化である。

          書評=ガート・ビースタ(上野正道、藤井佳世、中村(新井)清二訳)『民主主義を学習する 教育・生涯学習・シティズンシップ』勁草書房、2014年。

          書評=鶴見俊輔『言い残しておくこと』作品社、2009年。

          2015年7月20日の今日は、思想家・哲学者鶴見俊輔さんの命日です。もっともといってよいほど影響を受けた日本の「本物」の哲学者のひとりです。 原稿を整理していたら昔書き散らした書評がありましたので、再掲で遺徳を偲び、その意志を継承する契機へと変えさせていただきます。 書評=鶴見俊輔『言い残しておくこと』作品社、2009年。 鶴見さんのユニークな平和思想・非暴力主義、そして「じぶんで考える」という哲学的スタンスはどのように生成されたのか。 個人的なことがらから語るとすれ

          書評=鶴見俊輔『言い残しておくこと』作品社、2009年。

          読書の夏に向けて

          ジョン・ロック(下川潔訳)『知性の正しい導き方』ちくま学芸文庫(2015年)を久しぶりに紐解いています。 本書は、人間の自由と自主独立を徹底的に考察し、その論理的導き方を説いたジョン・ロック晩年の名著で、いわば、自分の頭で考えるための教科書といっても過言ではありません。 知性を人間の人間らしさの一つと数えることに異論はないと思いますが、それでも個々人の知性は外部の権威と内部の偏見や情念に流され易いのも事実です。 だからこそ一人ひとりの人間が知性を自主独立させ(知性の自由

          東京と地方という二項対立を超えて

          たまに東京の真夏の雑踏が懐かしく感じることがあります。地方と東京を行き来しながら50年以上生活するとはっきりわかるのは、 東京がいいのか、地方がいいのかというのは設問自体がナンセンスであり、東京には東京の良さがあり、地方には地方のよさがあり、その間でひとは生きているのではないかと思ったりもします。 便利さというフラグを立ててその問を召喚してみたとしても、ここ数十年でかなりフラットになってきたようにも思います。 大切なことは、右肩上がりの経済成長や24時間戦えますか的なラ

          東京と地方という二項対立を超えて

          フードリボンについて

          月曜日の『四国新聞』(2024年7月15日付)に「フードリボン 使い方知って」という記事が紹介されていました。 子どもたちに無料で食事を提供する取り組み「フード・リボン」とは「来店客がリボンを購入すると、その店を訪れた子どもに無料で購入額分の食事が振る舞われる仕組み」のことです。 まだ認知度が低く「使い方が分からない」といった声もあるのが実情で、認知度向上に向けて10月20日に高松でマルシェが開催されるそうです。 先日のこども食堂・こどもの居場所研修会でもフードリボンの

          フードリボンについて

          歯車として使い捨てされる会計年度任用職員をめぐる問題

          『四国新聞』(2024年7月11日付)では、「非正規職員の不満続出」という記事が紹介されていました。 「自治体、15分時短で退職金回避か」という問題で、いわゆる非正規公務員の待遇の劣悪さを行政自体が招いているフシがあり、その「『パート扱い』国見直し要請」している問題です。 こちらの問題については、昨年から今年初頭にかけて専門家の方からお話を伺う機会に恵まれ、「財政難の自治体が、正規職員の穴埋めとしてパートを増やし、こうした職員が市民生活に必須の業務を担う『エッセンシャルワ

          歯車として使い捨てされる会計年度任用職員をめぐる問題