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読書の夏に向けて

ジョン・ロック(下川潔訳)『知性の正しい導き方』ちくま学芸文庫(2015年)を久しぶりに紐解いています。

本書は、人間の自由と自主独立を徹底的に考察し、その論理的導き方を説いたジョン・ロック晩年の名著で、いわば、自分の頭で考えるための教科書といっても過言ではありません。

知性を人間の人間らしさの一つと数えることに異論はないと思いますが、それでも個々人の知性は外部の権威と内部の偏見や情念に流され易いのも事実です。

だからこそ一人ひとりの人間が知性を自主独立させ(知性の自由)、真理の探求のために知性を導いていくことが必要不可欠だと僕は考えています。

その意味で一般向けに書かれた本書は、「指導」とは銘打たれているものの、およそ、その対極にある「知性」の自立を促す良書と評することができます。

瞠目したいのは20節の読書論です。

ロック曰く

読書は心に知識の素材を提供するだけであり、思考こそが、私たちが読んだものを自分のものにします。私たちは反芻する動物であり、堆積した大きな塊を詰め込むだけでは十分ではありません。何度も噛みなおさなければ、そこから力や栄養を得ることはできません。


コンビニエンスな時代だからこそ、若い人には一冊の名著と徹底的に格闘する暇を作って欲しい思います。「最初の困難が克服されると、この方法は喜びをもたらし、その有益さは肌で感じられるようになりますから、心は力強い激励を受け、活性化され、読書にいそしむようになります」。

さていよいよ夏休みが始まります。読書の夏にしたいですね。


氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。