上野 雄史

会計学は、社会を見通すレンズでもあり、自分自身のお金の管理をする上で必要な知識です。「…

上野 雄史

会計学は、社会を見通すレンズでもあり、自分自身のお金の管理をする上で必要な知識です。「難しい」「とっつきにくい」と思われがちな会計ですが、社会のインフラとして重要な機能を担っています。そんな会計の良さを伝えたい、と思ってます。ちなみに、関係のない話も時々入ってきます(趣味です)。

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最近の記事

台湾滞在期

台湾に旅行に行ってきたので、その雑感を書いておきます。 意外だったこと;キャッシュレスが浸透しておらず、現金が主な決済手段で、あとは悠々カード(Suicaのようなカード)を利用した決済、LINE Payなどが使われている。 アリペイが使えるシチュエーションはほとんど見かけなかった(中国本土で使われているもの)。クレジットカードが使える店は限定される。 通信環境は抜群に良い。ほぼどこでも5Gで繋がる環境。ともかくどこでも早く通信が可能。フリーWi-Fiスポットも多い。ここま

    • ChatGPT4.0の使用で出来ること、出来ないこと:シラバス作成を事例に

      ChaTGPT、生成AI系のことで登壇する機会があるため、今キャッチアップすべく使用しながら、そのインパクトをまとめます。 1. 生成AIとは何でしょうか?  そもそも生成AI(Generative AI)とはなんでしょうか?その原理から整理していきましょう。  生成系AI(ジェネレーティブAI:Generative AI、生成AI、生成型AI)とは、クリエイティブかつ現実的な全く新しいオリジナルのアウトプットを生み出す人工知能(AI)のことで、具体的には新しいデジタル

      • 卒論を書くにあたって:先行文献(研究)要約のススメとやり方

        問題意識がぼやっとでも決まってきて、さて書き始めよう!! と思って筆が進まず、ということありませんか? これ、私はしょっちゅうです。書きたいけど書けない、捗らない、無駄なことしちゃう、なんてことは普通です。 むしろ、こうやってウロウロして考える時間が貴重だったりします。 とはいえ、いつまでもこの状態だったら困りますよね? 特に!論文を書いた経験がほとんどない人にとってはこれは未知のゾーンです。 多くの人がこのスタックした状態が続き、気が付いたら、9月、10月・・・とな

        • 企業分析の解像度を上げる:事業・セグメント分析+四半期分析を活かす 信越化学工業のケース

          事業・セグメント分析、四半期分析を活かす分析の方法についてお話します。 企業分析においては、成長性、安定性、収益性の3観点から行う人が多いと思います。さらにその要素に株価分析をプラスしてみていくという形ですね。 分析手法は無数にありますし、どういった視点で分析するかによって使うべき手法は異なります。そんな中でも難易度の高い分析の1つは事業・セグメント分析と四半期分析ではないでしょうか。 というのも、分析を行う際には以下のように行う人が多いと思われます。 ざっくりと株価を

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          一律で動機づけのない教育・研修は意味がない:大事なのはキャリアフレームを意識すること

          人的資本への投資が鍵!と言われています。 人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~ (METI/経済産業省) 人材育成のために人への投資が大事という事には異論ありません。 日本企業が、人材育成への投資を怠っていたことは周知の事実となっています。 日本生産性本部: 「日本企業は他国と比べて人材に投資しない!」警鐘を鳴らす - 役員研修・ガバナンス関連のブログ (bdti.or.jp) 企業の人材への投資額が少ない理由については、今後確かめていかなければなりません

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          ROAの分子の問題と利益の表示に関する問題:学生からの質問に答える

          Q: ROAを出そうとしたところ、IFRS採用企業でしたので、いわゆる営業利益や経常利益がないため、統合報告書に乗っているROAを使おうとしました。しかしながら、「ROAは当期純利益を、期首及び期末の資産合計の平均で除して算出したもの」と書かれており、これは当期純利益/総資産をしているのだと理解しました。ROAは、事業利益で出すもので、当期純利益を使ってはいけないと学んだのですが、これはどういうことなのでしょうか。 A: IFRS適用企業の場合、経常利益の表記がなく、実は営

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          エンターテインメントとクリエイティブを活かした職に就きたい(財務会計論のレポート事例)

          これは財務会計論の最終レポートの見本(仮)として提示したものです。ヤマハに就職を希望する浜松乙子さんが書いていることになっています。独自の意見、解釈です。 1.リスク選好と就職観  自分としての就職観をまとめて、リスクアペタイト(選好)を明らかにしていきたい。給与面での安定性はもちろんだが、企業、組織として、将来志向で前向きに進む雰囲気のある企業であることを重視したい。その理由としては、今後は世の中の不確実性が増し、柔軟な対応ができる事業体が望まれるから、である。将来はど

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          繰延税金資産に関する理解を深めよう

          1. 税金の支払いは、当期純利益を押し下げる 繰延税金資産は、税金の前払い部分を資産計上しているものです。法人所得税は費用ではありませんが、税引前当期純利益から差し引かれて、当期純利益が求めれられることを考えると、収益から差し引く点において費用と同じ性質を持っています(収益を押し下げる効果があります)。なので、繰延税金資産のことを考えるときに基本知識として理解しておくべきなのは、前払費用の会計処理です。日商簿記3級でよく出てくる項目とすると前払保険料とかを思い出しませ

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          金融商品の会計:IFRS9と日本基準の比較からその本質を考える

          ポイント: ・IFRS9と金融商品会計(日本基準)との比較を通じて、金融商品の評価のポイントを理解しよう。 ・予想信用損失モデルを理解しよう。 1. 金融商品の評価について見直しが求められたのはなぜ? 金融商品は歴代の基準で、「企業結合(のれんの減損問題含む)」「リース」「連結」と並んで難易度が高く、重要視されるトピックスです(企業会計の難しい分野の四天王といってもよいかもしれません)。今ではこれに「税効果」「収益認識」も加えて難易度が高い分野は6つといってよいでし

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          その資産は本当に資産として相応しい?費用化の意味と「のれん」について考えてみよう。

          財務会計論で使っている講義用の資料からの転載です。一部手直ししながら載せておきます。 今回のポイント:  ・資産性と償却(費用化)の意味を考えよう。  ・「のれん」の会計処理を巡る考え方の違いを理解しよう。 1. その資産は本当に資産として相応しい? 資産とは企業が支配し、便益を享受できる経済的資源です(概念フレームワークを確認しましょう)。しかしながら、貸借対照表の項目においては、「これは資産と言えるのか?」というものがいくつか存在しています(その事について今後

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          エクイティストーリーを伝えることの難しさ:FVCにおける株主提案による経営陣交代

          フューチャーベンチャーキャピタル(FVC)において、株主総会提案が可決され、現経営陣が交代する、という事態となりました。 過去の株主総会提案においても現経営陣が全員交代を余儀なくされる、ということは極めて異例です(日本において初?)。私は個人として松本元社長ともお付き合いがありますので、フェアな意見はいえないと思います。ただ、個人的な感情は抜きにして、研究者の端くれとして今回の件について、現時点における見解を示します。 FVCがどういった会社なのか、というところを簡単に触

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          2022年3月期決算短信、決算発表の雑感:ESG情報が充実、人的資本開示はこれから、DX推進を盛り込む企業が多い、Non-GAAP指標には注意

           学生がレポートして分析した約110社の上場企業の決算発表・短信をみてみた雑感をまとめておきます。なお、これはあくまでも雑感なので、定量的には確かめているわけではないです。むしろ、どういったキーワードでまとめられているかどうかについて「あたり」を掴むための作業です(今後、定量的な分析を行っていきます)。  今回は学生のレポートに書いてあることを確かめるために分析対象とした企業の決算短信・発表のデータをチェックしました。60人学生がいて、2社分析しましたので、120社、重複も

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          財務会計論の中間レポート:学生も教員も成長を実感し、楽しめるのが一番

          2022年3月期の決算短信・発表のチェックを行っていました。 今回は個別の企業の話ではなく、一通り見た雑感を備忘録として書いておきます。まず今回はレポートを出してみての振り返りをしていきます。 私の勤務校で担当している財務会計論では、上場企業の3月期決算のIR(自主的開示)情報をチェックする課題を出していました。 課題は、良い企業のディスクロージャーを探してみよう、ということで以下の5つの要素に当てはまる決算短信・発表情報を探し、企業のディスクロージャー姿勢を評価し、レ

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          新生銀行はなぜTOBを仕掛けられているのか?

          さて、久しぶりの記事を書こうと思います。 こちら新生銀行がTOBを仕掛けられている件についてです。 SBIホールディングスによる株式公開買い付け(TOB)です。 SBIホールディングスは9日、新生銀行に対してTOB(株式公開買い付け)をかけると発表した。すでに新生銀株の19%超(議決権ベース)を保有しており、約1100億円を投じて最大48%まで出資比率を引き上げることをめざす。新生銀の対応次第では、敵対的TOBにもつれ込む可能性がある。買い付け期間は9月10日から10月

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          3年後を見据えて基本書をじっくり読もう

          効率性が重視され、何でもかんでもすぐに結果を示すことが求められている昨今。 思うことがあります。 それもいいけど、もっと先を見据えてもいいんではないかなぁーと。 「3年後の稽古(けいこ)をせよ」 ってこれは相撲の世界でのお話でしたね。 割と好きだった漫画でも言われていたことですが、やっぱり勉強も急ぎ過ぎてはいけないなぁと思う。 歳をとるとじっくりと自力をつけるという基本を怠りがちですが、やっぱりそれでも先を見据えて腰を据えて取り掛かることの重要性は日々感じています

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          復活の兆し?RIZAPからみえる複数の事業体を持つ企業の強み

          今回取り上げるのはスポーツジム(フィットネス)産業で、RIZAPグループに焦点を当ててみようと思います。 数年前までかなり勢いのある企業だったので名前ぐらいは聞いたことある、とか近所で見た!という人も多いかと思います。一時期、ニュース新聞を賑わしていましたが、どちらかといえば、良いニュースというよりは悪いニュース・・・経営難に陥っているという話でした。 また、RIZAPは中小企業も含めた不採算化している企業を多く買収したことで知られています。その結果発生した、負ののれん(

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