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語学学校で教えない近道フランス語学習法

幕末に海を渡った日本人達は、たったの数ヶ月の語学学習で、胸を張って異国の地に赴任していったそうです。フランスの語学学校で出会った、ロシアやブラジルから来た若い学生さん達も、わずか3ヶ月の学習歴で、B2という中級レベルの語学力を身に着けていて驚きました。ガッツと根性がスゴイと思いますが、語学学習は長期間かけるもの、という染み付いた既成概念が払拭されて、やる気がでました。

日本の英語教育では、多くの人が中高の計6年間という歳月を学習時間をかけているのに、「喋る自信がある」と自らいえる人がほとんどいません。現代の日本人にとって、語学学習は非常にハードルが高いものになってしまっているような気がします。
語学学習はコツコツ続けましょう、というのが一般的にいわれていることですが、これが私にはとっても苦手。地道で終わりがないもの、と思ってしまうと気が引けます。私はあえて、短期集中でも効果はある!とお伝えしたいと思います。

1. 私のフランス語歴

私は今のフランスの企業で、5年ほど働いていますが、その前に日本企業から2年間、別のフランス企業に赴任していたことがありました。
私のフランス語は、この2年の赴任期間中に集中して、身につけたものです。それまで一切、フランス語には触れたことがなく、フランス赴任が決まってゼロから勉強を始めました。赴任1年目は英語で仕事をし、2年目からはフランス語に切り替えました。この間にみつけた、自分なりの学習法が効果的だったので、ご紹介したいと思います。

この方法を何度か繰り返し、フランス語を学び始めて3年ほどで、転職面接に対応できるぐらいの語学力が身につきました。もちろん、フランスに住んでいたということも大きいのですが、日中は仕事をしていたので、語学学習ができたのは、長期休暇のときぐらい。幼い子どもとは違い、大人は住んでいるだけでは語学は身につきません。住んでる場所が、フランスでなくても効果がでるやり方ではないかと思います。
私は語学学校に行くのも好きですが、この手法では主にマンツーマンの個人レッスンで勉強してきました。時々、瞬間風速上がるタイプの人には、特にオススメの短期集中型学習です。

2. 目標を決める

原宿の母にいわれた、とりあえず30回やってみるということ」でも書きましたが、自分の中でとりあえずの終わりを決めてから始めます。語学学習は終わりがないものですが、短期講習会に通うつもりで、期間を区切って行うと集中力が持続します。私の場合は、大きなプレゼンテーション発表1回分を乗り切る、ということを目標にしていることが多いですね。

3. 自分で教材をつくる

目標を決めた後は、終わったときに達成感が欲しいので、勉強したことが目に見えるような工夫をしました。それは、自分オリジナルの教材の完成を目指すということ。教材というとちょっと大げさかもしれませんが、まずは、自分で喋ってみたい文章を書くのです。

語学学習において、日記を書くことはよく勧められるもののひとつですが、一番大事なのは、ネイティブチェック。その言語を母国語とした人に、より自然な表現になるように直してもらうのです。書きっぱなしだと、間違っていても気づくチャンスがありません。

そして、その添削してもらった文章を丸暗記するのです。最終目標は、会話の中で、スルッとそのフレーズが口をついて出てくる状態になることです。いわゆる市販のテキストは誰かが書いた文章で、自分の生活で使わない言葉も多く、なかなか頭に入ってきません。自分が使う表現方法にはクセがあるもので、自分の言葉で表現することで、自分がよく使う言い回しを身につけることができるのです。

この方法は、中級者向けに聞こえるかもしれませんが、私は全くの初心者の頃からこれを繰り返してきました。私が最初に通ったフランス語の語学学校は、入門者に対しても文法は一切教えずに、いきなりフレーズを覚えるところから始めます。子どもが語学を獲得していく過程を再現するというコンセプトの指導法です。フランス語は文法から入ってしまうと、とても複雑なので挫折しがちです。

一番はじめに習ったフレーズは、「Est-ce que je peux vous demander quelque chose ? (ちょっと、お尋ねしてもよろしいでしょうか?)」でした。初めてフランス語に触れる人に対して、いきなりコレ! 当時はまったく訳がわからず、呪文を唱えているようでしたが、フランス語を喋ってる感も出るので、最初から楽しくやる気がでました。
そして、私がフランスに来て、一番最初に使ったフレーズになりました。

まずは短い文章から始めて、慣れてくるとA4一枚ぐらいの文章でも、歌詞を覚えるような感覚になってきます。

4. 音声付き教材に仕上げる

自分の書いた文章を、先生に直してもらったら、それを読み上げてもらいます。そして、それを録音します。この時の発音が重要なので、やはりネイティブの先生にお願いしましょう。その後、録音を聞き返し、ディクテーション。ディクテーションとは、聞き取った言葉を書き起こすことです。自分で書いた文章でも、ネイティブに読んでもらったものを後から聞き返すと意外と難しいもの。単語の綴りの確認にもなります。

そして、自分でも声に出して読んでみます。口が慣れてきたら、今度は自分が読み上げているものを録音して、先生の発音と比較します。すっごく恥ずかしいのですが、自分の発音のクセが客観的にみれるので、ぜひやってみてください。あと、なぜか自分の声で喋っている文章は、記憶に残りやすい気がします。

書いて、聞いて、喋るの反復運動で、文章を身体に染み込ませていくのです。

ちなみに、文章を書く時間もない、という方、日本語で書いた文章をGoogle翻訳でフランス語にしたものを、添削してもらって暗記するのもアリだと思います。あくまで、自分がアウトプットした興味を持てる文章を、フランス語で覚えていく、というのが目的なので。

5. この学習法の先生

この手法のいいところは、自分が主体となって進めていくので、教え方が下手な先生に当たってしまっても、そこそこの成果が望めます。レッスン自体の時間は文章の長さにもよりますが、30分もあれば説明してもらいながら添削して、授業の終わりに録音ができてしまいます。
以前、テキストの問題を解いて添削する、という繰り返しの90分のレッスンを受けたことがあります。実践的ではないし、何より眠い…。創意工夫のあるレッスンをしてくれる先生は素晴らしいけれど、なかなか自分に合う先生に出会えるものでもありません。

添削してもらうことが大事なので、ネイティブの先生である必要はありますが、今は手頃な価格のオンライン授業も充実してきているので、このやり方をお願いしてみることはできると思います。
先生の指導技術によって左右されにくい学習法ではありますが、独自の学習理論を強く主張しない、柔軟な先生を見つける必要があります。逆に、ネイティブの知り合いがいれば、フランス語の先生でなくても、自分が書いた文章を添削してもらい、読み上げてもらうことは可能です。

ただし、ネイティブであれば、誰でも良いものでもありません。
一度、フランス人の同僚に文章を直してもらったら、全ての文章が「私」にあたる、「Je」から始まる文章になってしまったことがありました。これは、当時フランス語がよくわかっていなかった私でも、良い文章ではないということがわかりました。文法的には間違っていなかったとしても。人によって表現力の差があるのです。フランス人だからといって、みんながフランス語が上手いわけではないのです。日本人でも人によって、語彙に差がありますよね。

では、どうしたら語学センスが高い人を、見つけることができるでしょうか。私の個人的な考えですが、フランス人の場合、英語が上手な人は母国語のフランス語においても表現が豊かであるように感じます。言葉への感受性が高いのでしょう。もちろん、ちゃんとしたフランス語の先生であれば、そのあたりのことを気にする必要はありませんが、もし、身近な人に頼む場合の判断材料にしてみてください。フランス人の多くは、自国の言葉に誇りを持っているので、丁寧に教えてくれます。

6. この学習法にいきついたきっかけ

フランス人は週明けに、その週末は何していたかを話します。バカンス明けにもなると、話題はそのことでもちきりに。そんなときに、自分も何か話せるネタが欲しくて、話すことストックをつくるイメージでこの方法を始めました。ネタを仕込む芸人の如く。

初めてこの手法を試したのは、赴任中に迎えた夏のバカンスでした。フランス特有の30日間という長い休暇中に、見たり食べたりしたものを、3日にひとつのペースで、A4程度の文章にしていきました。最終的に10個のエピソードと、それぞれを読み上げた音声データが出来上がりました。これが、初めての自分オリジナル教材になりました。
バカンス明けは、せっかく覚えた10個のネタストックを披露したくて、果敢に雑談しにいくと、いきなりベラベラ喋るようになった!と、とても驚かれました。喋れることは、覚えた10個のネタしかないんですけどね…。

7. 転職面接のフランス語

転職面接の準備も、この手法を使いました。当時、フランス語で面接を受けるのは、正直、自信がありませんでした。転職に必要なビジネス会話って、語彙もさることながら、自己表現のテクニックが求められるんですよね。フランス語は諦め英語で受けようと、赴任前にも通っていた、ビジネス英語に強いマンツーマン英会話教室に再び通い始めました。20回という、当時は最短最安のコースでしたが、目標は転職面接。最安とはいっても私にとっては高額で、1回1回が真剣勝負になりました。

ここの英会話教室の先生達は全員英語はネイティブだけど、いろんな国出身の人がいて、ネット予約の際に選ぶことができるのです。
ある日、フランス人の先生を見つけたので予約してみました。これが大当たり!アメリカに長く住んでいた方で、フランス語を教えてくれるだけではなく、フランス企業へ転職の際のアピールポイントや、心構えまでも叩き込んでくれました。フランス語で準備するかどうか迷っていた私に、「フランス企業だったら、下手でもフランス語で喋ったほうが良い」と背中を押してくれました。
あともうひとり、セルフプレゼンテーションの手法を教えるのが得意なアメリカ人の先生も選んでいました。先生は複数いた方が習う側にとっては、表現バリエーションが増えて良いと考えていたので。どの先生が何を得意としているかは、受付の人に教えてもらいました。

毎回のレッスンで準備した、A4の想定問答の回答用紙が、20回の授業が終わる頃には20枚ほどになっていました。フランス語と英語、それぞれ用意し、どんな質問がきても、その中から何かしら答えられるようにしました。その甲斐あって、今勤めるフランス企業からの採用通知をもらうことが出来ました。

8. 最後に

10個のバカンス中のエピソードから始めたこの手法ですが、何度も繰り返すうちに、転職面接でのやり取りができるまでになりました。
ここまで書き連ねた方法は、とても面倒に感じるかもしれません。でも何度も言うようですが、他人の言葉よりも自分で言いたい文章の方が、ずっと覚えやすいのです。単語を単品で覚えたり、活用形を個別で暗記する苦痛から、むしろ開放されるでしょう。それが最終的には、正確に話せるようになる近道だと思います。

あくまで「自分が喋りたいこと」を主にしていて、文法事項を体系的に学習してく方法ではないので、必然的に偏りが出てくることは否めません。それを補完するために、私は時々、語学学校で一般的な授業も受けるようにもしていました。

言語習得の基本は模倣と反復であると、最近どんどん喋るようになった2歳半の娘をみていて実感します。子どもは「これなぁに?」と好奇心をもって自ら学ぶ姿勢があります。大人になると語学は受け身で学ぶようになってしまいますが、基本は自ら獲得していくものだったなぁ、と。
このままフランスに住み続ければ、将来はバイリンガルになるであろう娘に、私のフランス語を直してもらうのが今からとても楽しみです。

フランス語学習法に関する記事は、こちらにまとめてありますので、もしよろしければ。

他にもフランス人との働き方に関しての記事を書いてみたので、ぜひ!



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