見出し画像

パリで「日本らしい味」について考える

和楽webでライターとして、デビューしました! 改めまして「ウエマツチヱ」と申します!  記念すべき初めての記事は、パリの行列ができるラーメン店、Kodawari Tsukijiのジャン=バティスト・ムニエ氏(Jean-Baptiste Meunier)にお話を伺いました。

美味しいラーメンがなくて辛いフランス生活

私は、高校生の頃から有名店が連なる環八沿いを、自転車をこいで食べに行くほどのラーメン好き。フランスにきて一番辛かったことは、美味しいラーメンが食べられないことでした。ラーメン店を見かければ、とりあえず試してみる日々。数年前には一風堂ができ、開店初日に並んで食べました。でも、豚骨以外も食べたい…。
このラーメン店を知ったきっかけは職場の同僚でした。私の会社はほぼフランス人しかいないのですが、ある日、大きな会議が終わった後、片付けをしていると、いきなり「日本人ですか?」とそれまで会議を仕切っていたエンジニアの男性が、日本語で話しかけてきました。とても流暢な日本語です。日本語を話す人なんていないと思っていただけに、衝撃的でした。実は彼は日本に留学、就職し、その後、フランスに戻ってきたと言います。外国生活で困っていることはないかと親切に聞いてくれたので、美味しいラーメンが食べられない話をしたところ、「Kodawari Ramenに行ったことないの?」というのです。「こだわり」って自分でいっちゃってるのか…、ちょっと怪しい、と思いつつも、携帯にメモしたのでした。

YokochoとTsukijiという日本の日常風景

行っていたら、ドハマリ! 当時は1店舗目の昭和の横丁をテーマにした「Kodawari Yokocho」しかなかったのですが、店舗装飾の面白さだけなく、ラーメン自体も非常に凝ったものでした。見出し画像が「Kodawari Yokocho」です。それから、かなりの頻度で通い、メニューを全制覇。時期によって味が少しずつ変わっていくので、今はどんな味になっているのかを確認せずにはいられません。その後、築地の魚河岸をテーマにした「Kodawari Tsukiji」ができました。
ラーメンクオリティ、日本の風景の再現度の高さから、ずっと日本人経営者だと思っていました。実は、フランス人の方が店主をされていると聞き、ぜひお会いしたいと思ったことが、この記事を書くきっかけでした。記事の中では、店主のおススメとして、鯖醤油ラーメンを紹介していますが、鯛清湯も絶品です。洗練された透明な鯛出汁に、香ばしい鯛。途中からは柚子味噌を溶かし、味を変化させつつ食べるのです。うーん、また食べたくなった!!

画像1


味をクリエーションする日本らしさ

和樂の記事では、書かなかったことなのですが、興味深い話をされていたのでご紹介。それは「日本らしい味」について。彼は「トマトにパルメザンチーズがかかったラーメンはとても日本らしいと感じる」と話していました。トマトとパルメザンチーズというと、イタリアンだと思いがちだけれども、それをラーメンにのせるという発想が日本的である、ということです。
日本のデパ地下を歩くと、最新のお菓子が所狭しと並んでいますが、焼きマシュマロをサンドしたクッキーや、フィナンシェをフレンチトーストにしたもの、カヌレに生クリームの組み合わせなど、非常に独創性に溢れています。フランスではそもそもお菓子に「新作」というものがあまりありません。季節のフルーツを使ったものなどは多少ありますが、基本的には昔ながらの定番商品がウィンドウに並んでいます。日本のように、季節毎にみたことがないお菓子が登場することは非常に稀です。

創作味イスパハン

そんなフランスですが、たまーに斬新なお菓子が登場することがあります。そして、その後定番化してくのです。
有名パティシエ、ピエール・エルメ(Pierre Hermé)の「イスパハン(Ispahan)」が、その一つといえるのではないでしょうか。今はすっかり定番商品になりましたが、発表された当時は非常に目新しく、今でも多くの人を魅了し続けています。バラ、ライチにフランボワーズを組み合わせた味で、元来マカロンから始まったものですが、今はそれ以外にも、幅広く展開されています。
パリのピエール・エルメではクロワッサンやクッキー等ありますが、私の一押しはジャムです!見た目もグラデーションで美しく、バラとライチとフランボワーズが緩やかに分かれているので、すくい取る部分で違う味が楽しめます。最近は日本でも購入できるようです。

スクリーンショット 2020-09-24 3.03.29


夏の間、パリではイスパハン味のカキ氷が話題でしたが、今日本では、虎屋とのコラボで和菓子になっているそうです。

画像3

そういえば、かつて日本でイスパハンをテーマにした携帯電話もありました。元のマカロンの味からずいぶんと大きな飛躍を遂げたものです。

画像4

シンプルだけど門外不出の味

ピエール・エルメは親日家で、彼のお菓子作りは、日本から多くのインスピレーションを受けている印象があります。個人的にイスパハンは、日本的だと感じています。そして、ピエール・エルメの世界第一号店は、なんとパリではなく日本なのです! 日本でイスパハンの和菓子を食べた友人が、能書きの写真を送ってくれたのですが、そこに書いてありました。

画像6


イスパハンは登録された味ですが、ベースはあくまでシンプルな3つの味、バラ、ライチ、フランボワーズの組み合わせです。以前、彼がマカロンで有名なラデュレにいた頃に開発したものなのですが、ラデュレを辞めた後もこの味を使っていいというお墨付きをもらえたそうです。そういったことから、イスパハンの味を名乗れるのは、ピエール・エルメとラデュレのみなのです。 

スクリーンショット 2020-09-24 3.45.33

イスパハンの味のワイン?

先日、会社のワイン教室で、ゲヴュルツトラミネール(Gewürztraminer)というアルザス地方のワインに出会いました。ワインの分類上は辛口とされるのですが、とても甘くてフルーティです。ワインはアロマといって、香りを果物や、花の香りに例えて表現されるのですが、このゲヴュルツトラミネールは、バラとライチのアロマといわれています。これにフランボワーズを足すとイスパハンになるのです! そして、飲んでみると、イスパハンっぽい! 私は密かに、イスパハンのインスピレーション元なのではないかと勘繰っています。イスパハン好きの方、ぜひ試しに飲んでみてください!
この先ライターとして、いつかピエール・エルメ氏に会える機会があったら聞きたい質問のひとつです。

今後は、和楽webでは企画ネタ、noteではプライベートなお話に加えて、和楽webの記事のこぼれ話も、書いていきたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します!

以前、「和樂がデザインの教科書だった」という記事も書いているので、よろしければ!


この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

もし面白いと思う記事がありましたら、興味ありそうな方にご紹介いただけたら、とっても励みになります!記事のシェアが一番のサポートです!