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自作短編小説集

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これまでに書いた自作の短編小説を載せています。
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#夏

短編小説「隣の家の庭」

 隣の家の庭に、日傘をさした青い着物姿の女性が佇んでいる。  かれこれ、もう二時間ずっと…

植木意志
1年前
30

短編小説「海水浴」

 予想通り、海水浴は退屈だった。  と言っても、僕自身は泳ぐわけではないから、それは厳密…

植木意志
1年前
25

アライヴ④(最終話)

 内海はゆっくりと頷いた。「先月の夜だった。放課後、五井駅の近くのコンビニに一人で入った…

植木意志
2年前
12

アライヴ③

 僕の心臓は跳ね上がった。どうして、そのことがバレているんだ?   菊池は赤いフレームの…

植木意志
2年前
8

アライヴ②

 ふと目が覚めて顔を上げると、そこは教室の中だった。  瞼をこすり、前方を見ると、世界史…

植木意志
2年前
10

アライヴ①

 あの夏の日に起きたことを、いつだって忘れることができなかった。  高校、大学を卒業し、…

植木意志
2年前
13

短編小説「少年たちの秘密基地」【後編】

 秘密基地の外に、誰かがいる。  その事実は、一瞬にして僕らに緊迫感を与えた。  シーツの向こうからは微かに人影が見えている。控えめな蝉の鳴き声が四方八方から聞こえる中、僕らは数秒間声を出せなかった。 「誰やっ」よっちゃんが叫んだ。  乱暴にシーツを捲り、基地内に侵入してきたのは、おさげを三つ編みにした女子だった。  掛布美宇だ。  僕らと同じ5年2組のクラスメイト、掛布は仁王立ちで、呆然とした様子の僕らを見下ろしていた。  気が強く、口が悪い。背丈は男子の平均以上あっ

短編小説「少年たちの秘密基地」【前編】

「そう、誰がこのクラスの給食に勝手にプリンを追加したのか、ほんまに誰も知らんということや…

植木意志
2年前
28

短編小説「夜のハイウェイ」

 サービスエリアで夕食を済ませた後、俺は再びアウディを発進させた。  時刻は午後九時四十…

植木意志
2年前
22

短編小説『未来の自分』⑤(最終話)将来の夢

「嘘、、、そんなの嘘よ。鈴江君が、、、。そんなこと、そんなことあるわけがない」と先輩は言…

植木意志
2年前
4

短編小説『未来の自分』④作戦決行の夜

「犯人は、どんな風に現れると思いますか」と僕は訊いた。 「そうね、、、普通の人を装ってや…

植木意志
2年前
5

短編小説『未来の自分』③自分殺人事件

 僕が今夜、誰かに殺される?  彼女が言ったその言葉の意味を、僕は上手く呑み込むことがで…

植木意志
3年前
6

短編小説『未来の自分』②未確認飛行物体の正体

 野上先輩の家は、図書館から少し離れた小さな港町にあるらしく、僕らはバスに乗ってそこまで…

植木意志
3年前
7

短編小説『未来の自分』①夏休みの図書館

 夏休みが始まって、一週間が経った。  その一週間の間に夏休みの宿題を全て終わらせた僕には、残りの期間を優雅で快適に過ごすことができるのだ。  そして記念すべき『宿題解放日一日目』が今日。 7月28日、水曜日、時刻は午前9時36分。 よく晴れた青空の中で、白い雲が散在している。 辺りに響き渡る蝉の声は、騒々しい夏の朝を象徴しているかのようだ。  半袖のシャツに短パンを履き、ショルダーバッグをかけた僕は、石畳の敷かれた街路を歩いていた。 そして額にはうっすらと汗が浮かんで