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自作短編小説集

77
これまでに書いた自作の短編小説を載せています。
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#小説

【短編ミステリ】夏の朝、推理するわたし

 列車が発車したのはわかっていた。  だって、「ファーン!!」っていう大きな警笛の音が、…

植木意志
1年前
29

計画的トマトスープ④/④

 穂積が急遽、立案した作戦に従って、僕たちは行動していた。  計三ヶ所の出入り口にそれぞ…

植木意志
1年前
8

計画的トマトスープ③/④

 穂積と加納と同盟を結んでから、一週間が過ぎた。  今は八月の上旬で、それは僕がこのアル…

植木意志
1年前
8

短編小説「宇宙飛行士と怪現象」

 住宅から漏れる明かりが、窓のそばを通り過ぎていく。  揺れる列車の中、わたしと薫は愚痴…

植木意志
1年前
35

短編小説「アンディ・ブラウンを探せ」

 依頼人は突然やってきた。  その男はいかにも尊大な態度で革張りのソファに腰を下ろし、私…

植木意志
1年前
44

短編小説「夢のトリクルダウン・地下世界への片道切符・溶ける氷主義者」

 水曜日の夜、私は同僚と日本橋にあるバーにいた。  我々はカウンターに隣り合って座り、ワ…

植木意志
1年前
32

短編小説「僕は知らないし、気にしない」【後編】

 火曜日、ジェームスとトーマスとパーシーの見舞い帰り、僕はジョージ・ストリートを西に歩いていた。  日が傾き、だんだんと肌寒くなってきている。西日が射し込む通りを南に折れ、サレー・ストリートに入った。  三人は、週末に〈ラッキーボーイズ〉にボコボコにされていた。  なかでもジェームスの状態が一番ひどかった。顔はアザだらけで、左腕を骨折し、右腕は打撲、右の太腿はナイフで刺されていた。全身を容赦なく痛めつけられていた。  アルコール消毒剤の匂いが充満する病室のベッドの上で、満

短編小説「僕は知らないし、気にしない」【前編】

 スーパーマーケットで缶ビールとチョコレートバーをそれぞれ一本ずつパクった後、僕はバイク…

植木意志
1年前
34

短編小説「有人教室」

 通りを吹き抜ける冷たい風に、思わずマフラーに顔をうずめた。  冬休み明けの学校。低く垂…

植木意志
1年前
31

短編小説「隣の家の庭」

 隣の家の庭に、日傘をさした青い着物姿の女性が佇んでいる。  かれこれ、もう二時間ずっと…

植木意志
1年前
30

短編小説「海水浴」

 予想通り、海水浴は退屈だった。  と言っても、僕自身は泳ぐわけではないから、それは厳密…

植木意志
1年前
25

アライヴ③

 僕の心臓は跳ね上がった。どうして、そのことがバレているんだ?   菊池は赤いフレームの…

植木意志
2年前
8

短編小説「水平線の向こう側、幽霊船の侵攻」

 僕と飼い犬のポランスキーは、三十五階建てのアパートメントの屋上から夕暮れの太平洋を眺め…

植木意志
2年前
22

図書室の探偵③/③

 一瞬だけ、時間の流れが止まったような感覚があった。  私はごくりと唾を飲み込んだ。「何、言ってんの……?」  彼はちらりと私を一瞥し、窓の方に向かって教室を横断した。  窓の傍に立つと、その先に見える青い海を眺めた。三浦海岸だ。  私もその隣に立った。 「昼休み、唯一誰からも怪しまれずに犯行が可能なのが、南っていう君の友達なんだ」 「どうしてそうなるわけ?」彼の横顔を見つめた。「だって昼休み中、南は私と麻利とずっと一緒にいたんだよ。そんな隙があるわけない。それに、南がそん