マガジンのカバー画像

自作短編小説集

77
これまでに書いた自作の短編小説を載せています。
運営しているクリエイター

#自作短編小説

自作短編小説『眠れぬ夜に聴くラジオ』

 眠れない夜には、ラジオを聴くことが私の習慣だった。  スピーカーから発信される誰かの声…

植木意志
3年前

自作短編小説『脅威のカリフラワー』

 唐突だが、僕はカリフラワーが嫌いだ。いや、それどころか憎んでさえいる。朝の憂鬱な通学中…

植木意志
3年前
1

自作短編小説『ため息の彼方』 第12(最終)話「ため息」

 その異変はパソコンの液晶画面の中で起きていた。違う、、、。そうだ、絶対に違う。  私が…

植木意志
3年前
2

自作短編小説『ため息の彼方』 第11話「電話」

 都市の上空は夜明けの空が浮かんでいた。辺りは高層ビルの照明でやはり明るかった。空気は少…

植木意志
3年前

自作短編小説『ため息の彼方』 第10話「ブレックファスト」

 「具体的には、私はどうすればいいんでしょうか」と私は訊いた。 「そうね、量子テレポーテ…

植木意志
3年前
1

自作短編小説『ため息の彼方』 第9話「仮説」

 「さっきも言ったけど、この惑星が人類の移住に最適だったという話は真実だわ。でも一つの懸…

植木意志
3年前

自作短編小説『ため息の彼方』 第8話「ダイアローグ」

 「え、、、。えっと、その、私たちは日本語を話しているんじゃないんですか、、、?」と私は完全にたじろいだ。どういうことだ。全くわけが分からない。彼女は私を困惑させることばかり言う。 「違うわ。私はフランス語を話し、同時にあなたは日本語を話しているの。私たちは最初からずっと異なる言語同士で会話をしているのよ」と彼女は微笑んで言った。  私は混乱を体現したような表情をしていた。そのことは窓に映る自分の顔を見て、よく分かった。私はフランス語を話せない。まともに学んだ経験もない。そ

自作短編小説『ため息の彼方』 第7話「ランドスケープ」

 カーテンが完全に開き、開放的な大きな窓が現れた。その先に、先程の夜明けの空と海の景色が…

植木意志
3年前
1

自作短編小説『ため息の彼方』 第6話「歴史」

 私は少し迷った。私がこの世界の人間ではないということを打ち明けることに、少しの不安があ…

植木意志
3年前
1

自作短編小説『ため息の彼方』 第5話「室内」

 開放的なロビーは閑散としていた。そこには殆ど誰もいなかった。左奥の窓辺のテーブル席で、…

植木意志
3年前

自作短編小説『ため息の彼方』 第4話「都市」

 都市は見渡す限りどこまでも、高層ビル群で埋め尽くされた景観だった。それらは軍隊の行進の…

植木意志
3年前
2

自作短編小説『ため息の彼方』 第3話「焦燥」

 やはり私は動けなかった。そこに完全に固定された状態だ。それどころか、その金縛りの強度は…

植木意志
3年前

自作短編小説『ため息の彼方』 第2話「リアリティ」

 ふと気付くと、私は横になっていた。しかしそこは私の部屋の床の上ではなかった。そこは砂の…

植木意志
3年前

自作短編小説『ため息の彼方』 第1話「部屋」

 気が付くと、何度もため息をついている。締め切りまで余裕なんてないのに、なかなか納得のいく文章が書けない。キーボードに置いた私の手の動作は、完全に停止していた。一方で、パソコンの液晶画面に表示されたカーソルは、一定の間隔を保って恒常的に点滅している。夜通しで必死に書いた未完成の文章は、既に何だか出来の悪いものに思えてきた。  机の上は散らかっていた。数冊の女性ファッション誌、仕事用の参考資料の山々、殆ど底のついた紅茶のカップなどがパソコンを取り囲んでいる状態だ。パソコンの液