uei_shota

宇江井翔太です。ペンネームです。何か伝えたいことがまとまったら書きます(←とても普通)。

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マガジン

  • キリンと人間、どこが違う?

最近の記事

さようなら長崎西洋館

埼玉から長崎に赴任したのはもう二十数年前。その職場のお膝元にある大きな交差点、そこに立ってまず目を奪われたのが「必殺カット江口!」の看板とタイトルバックのこの建物、長崎西洋館。 「西洋館」というだけあって、大伽藍や螺旋階段と迷路のような通路、そこに大部屋・小部屋を入り組んで配置する凝った造りの要所要所に彫刻やレリーフがそっと飾ってあったりするのだが、まぁ結局は謎な空間だった。 でも、地元のネタを豪快に握ってくれる回転寿司や、ちょっと上品っぽい集まりなんかに使える和食など結構

    • 「ザ・マイコクーラー」:マイコン制御ではなくキノコを使った冷却ユニットの開発

      何のこっちゃ?このタイトルを見れば誰しもそう思われるのではないだろうか。実際に筆者自身もつい先日、米国科学アカデミー紀要なる歴とした学術雑誌に発表されたこの論文( https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2221996120 )を見て、ん?んん?!となってしまった。 論文のタイトルは「The hypothermic nature of fungi(キノコ類の低体温特性)」というシンプルなもの。記載された発見の"キモ"は、キノコ類は

      • 月は何時になってる? 〜月の時間と地球の時間〜

        月面探査がこれからまたブームを迎える。「初の女性を、次の男性を」月面に立たせるNASAのアルテミス計画をはじめ、恒久的な月面基地を設立するために今後10年間に数十ものミッションが予定されている。アメリカやヨーロッパだけでなく中国も独自の動きを見せ、昨年暮れには韓国の探査機が月の周回軌道に乗ったことも記憶に新しい。月の表面(月表?)にはこれから多くのローバーが走り回り「地ならし」をしてくれることだろう。 ただそこで問題が生じる:「どの時間に合わせて予定を進めればいいんだろう?

        • 火星に死す〜マーズランダー最後の通信

          新年最初の訃報である。火星の地殻構造を反映する地表の震動を4年以上にわたり伝え続けてくれた火星探査機マーズランダーが、ついにその最期の時を迎えた。 12月15日の通信以降、二度の交信努力も実らなかったことから、 埃に覆われた太陽電池からの電力供給はもはやかなわず、マーズランダーはその生命線であるバッテリーを使い切ったとNASAは結論づけた。 「この4年間、私たちは彼を火星の友であり仲間のように感じてきました。さよならとはとても言えない」ブルース・バネルト主任調査官は語る。

        さようなら長崎西洋館

        • 「ザ・マイコクーラー」:マイコン制御ではなくキノコを使った冷却ユニットの開発

        • 月は何時になってる? 〜月の時間と地球の時間〜

        • 火星に死す〜マーズランダー最後の通信

        マガジン

        • キリンと人間、どこが違う?
          1本

        記事

          スウィングしたけりゃ遅らせろ!〜ジャズ演奏においてスウィング感をもたらすものとは

          「スウィングって何だろうね?」 これは有名なジャズトランペッターにしてシンガー、ルイ・アームストロングがその唄の中で発した問いかけです。確かに"スウィング"という単語は、ジャズという音楽の特徴を最も端的に表現し、かつその演奏におけるエッセンスとして求められるものですね。実際、ジャズミュージシャン自身が「こいつあイケてるぜ」という感覚を表現するのに使われます。だけど、この音楽が誕生してもう100年も経とうというのに、「何が」スウィング感を生むのか、ということは音響心理学的にまだ

          スウィングしたけりゃ遅らせろ!〜ジャズ演奏においてスウィング感をもたらすものとは

          ハエトリグモは(電気羊の)夢を見るか?

          我々ヒトはもちろんだが、犬猫などの動物も睡眠をとる。昆虫などの節足動物やクラゲなどの刺胞動物も眠ることが知られている。でははたして彼らは寝ている間に”夢”を見ているのだろうか。 動物の場合は、眠っている間に激しく眼球が動く(rapid eye movement)、即ちレム睡眠が長く続くと夢を見ると考えられている。このとき我々の身体は、皆さんもご経験のとおり夢に反応しているかのようにピクピクと動く。 同じような「ピクピク」が、どうやらハエトリグモでも見られることがこのほど確認さ

          ハエトリグモは(電気羊の)夢を見るか?

          火星の"大”地震

           去る5月4日のこと、大きな地震があったそうだ。2018年11月の観測以来最大の強さで。え?地震の観測って2018年からだったの?? いえいえこれは火星探査機インサイトが、かの惑星に降りたって観測を始めてから、の話。最大の強さといってもマグニチュード5だから、我々が地球で経験しているほんとうの大地震には及ばない。ただし、これまでの3年半の間に、なんと1300回以上も揺れが記録されているらしい。インサイトの守備範囲を考えるとーつまり火星のごくごく限られた領域での"生活”からすれ

          火星の"大”地震

          春(を迎える前)の嵐

          街のそこここで桜が満開を迎えつつある。 と、その前にいつも試練のごとく嵐のように風が吹き荒れ雨の降る晩が訪れる。 今夜がそれ。 桜の花は大丈夫か、と心配になるが、一夜明けてみると意外に平気で何事もなかったかのように、ほどなく咲き誇る姿を見せてくれる。 はずだ。きっと今年も。 #桜

          春(を迎える前)の嵐

          スナイパーの目〜テッポウウオの場合

          テッポウウオは恐るべき狙撃の名手だ。生い茂るマングローブの岸辺に獲物(蜘蛛や昆虫)を認めるや、正確で鋭い水流の一撃を食らわせ河にたたき落とす。"弾”を無駄にしないために、彼らは花や小枝、その他もろもろの「食い物にできないもの」と獲物にすべきものを区別しないといけない。いささか失礼ではあるが、彼らの脳髄のサイズからすると、このタスクは少々難しすぎるように思える。果たして彼らはどのような情報にもとづき獲物とそれ以外のものを識別しているのだろうか。 この問に答えるべくイスラエルの

          スナイパーの目〜テッポウウオの場合

          オルガノイドの泪

          試験管の中の涙腺から泪が溢れる。そんな動画が公開された。正確には、涙腺と同じような(すなわち泪と同じような液体を分泌する)機能を持つ細胞の塊を、培養皿の中に造ることができた、ということだ。 我々の身体は、もともとは1個の受精卵と呼ばれる"細胞"が、何度も分裂して数を増やしながらときどき形や性質を変え、その変わったもの同士がくっついたり離れたりして「適材適所」を見つけながら形作られる。最終的な成体は、約200種類の性質の異なる細胞が、総計30兆個以上集まってできているといわれ

          オルガノイドの泪

          (火星の)風の歌を聴け

          先日、別の記事(心に沁みるサイエンス:深海の"ソフト"ロボット)の冒頭でも少し触れた火星探査機パーシビアランスからまた新たな話題がふりまかれた。迫真の火星着陸ドキュメントに続いて今回提供されたのは「火星の地表を吹く風の音」。下記参考リンクの最初にあるビデオを再生すると、レーザーが岩を叩くノック音が30秒ほど続いたあと、ひかえめながらフォオオオ〜フオオ〜といった感じの音が聞こえてくる。人類が初めて耳にする火星の風の音だ。 これは何も伊達や酔狂で録音されたものではなく、「火星に

          (火星の)風の歌を聴け

          深海の"ソフト"ロボット

          つい先日、NASAの新しい火星探査機「パーサビアランス」が、火星に"タッチダウン"する際の緊迫した模様を動画で伝えてきたり、無事に着陸し一段落ついたところでふっと見上げた火星の夜空の全天写真を送ってきたりということが話題になった。人類の探求は宇宙に向かって着実に広がっていることを実感させられるが、その目は地球の深部にも向けられている。 マリアナ海溝。海表面から1万メートル以上の深みに刻まれた地球の「シワ」だ。火星にロケットを飛ばすのも大変だが、ここに探査機を送り込むのも、た

          深海の"ソフト"ロボット

          ウォンバットが四角いうんちをする仕組み

          「ハダカデバネズミの唄」に続く“動物の(ファニーな)不思議”シリーズ第二弾。あ、「トガリネズミの脳が縮む話」も加えれば第三弾か。ともあれ今回登場するのはオーストラリアの大平原やユーカリの森に棲息する哺乳類ウォンバット。ただし主役はそのうんち。参考リンク先の写真でご覧になられるとおり、見事に直方体をしたブツが一日に100個近くも“生産”されるそうな。 なんでこんな形になるの?ケ◯の穴は丸いのに??と、不思議に思ったジョージア工科大学の研究者が、タスマニア大学の研究者と共同でウ

          ウォンバットが四角いうんちをする仕組み

          ハダカデバネズミの“友だちの唄”

          最近、生命科学の分野で存在感を増している実験動物がいる。Naked mole-rat、ハダカデバネズミと呼ばれるネズミの一種だ。下の参考リンク先にある写真をご覧になれば、その名に合点がいくことだろう。実験動物界の大先輩にあたるハツカネズミとそれほど大きさが変わらないものの、実験室での飼育環境下では15年以上も生きるという長寿(ハツカネズミは長くて2年)でありながら、がんを患うことなく、しかも酸素がなくても十数分くらいはへっちゃらというタフネスである。さらにそれが、女王を頂点と

          ハダカデバネズミの“友だちの唄”

          極私的文献紹介:”粘性適応”とは何ぞや?

          我々人間のような恒温動物はあまり心配する必要がないかもしれないが、細菌や酵母のような単細胞生物は、周りの温度が変わるとその影響を”細胞レベル”でモロに受ける。ところが、高度耐熱菌のような極端な場合でなくとも、例えば酵母であっても15℃の低温から45℃の高温まで、30℃に及ぶ温度の振れ幅の中でうまく生き延びている。 周りが何℃であろうとも、生きるためには細胞の中で様々な化学反応が連綿と行われている。取り込んだ栄養素を分解してエネルギーを取り出し、または加工して自分を組み立てて

          極私的文献紹介:”粘性適応”とは何ぞや?

          まだふりやまぬ

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