火星の"大”地震
去る5月4日のこと、大きな地震があったそうだ。2018年11月の観測以来最大の強さで。え?地震の観測って2018年からだったの?? いえいえこれは火星探査機インサイトが、かの惑星に降りたって観測を始めてから、の話。最大の強さといってもマグニチュード5だから、我々が地球で経験しているほんとうの大地震には及ばない。ただし、これまでの3年半の間に、なんと1300回以上も揺れが記録されているらしい。インサイトの守備範囲を考えるとーつまり火星のごくごく限られた領域での"生活”からすれば、これはかなり慌ただしい日常であると言える。
地球上で起こる典型的な地震は、構造プレートが移動することで引き起こされるが、火星では永年にわたって冷却された結果、火星の表層がもろくなりひび割れることで揺れが起こるらしい。マグニチュード5という数字は、このメカニズムから予想されるものとしては最大ということだそうだ。
冒頭の写真はそのときの揺れの分析図(提供:NASA)。地球上からの観測では得られない貴重なデータだ。探査機インサイトは、この他にもせっせと穴を掘って火星の内部温度を探るミッションなども行っている。先日ようやく予定していた地下5メートルほどの深さに到達したらしいが、NASAはここまできて待ちに待った温度の測定をやめてしまった。火星の砂嵐のせいでインサイトの太陽電池パネルに塵が降り積もり、十分なパワーが得られなくなっているためだ。このままではせいぜい年内いっぱい保つかどうか、といったところで、やむなく優先順位の高い測定に切り替えていく決断を下したわけだ。
飛んで行って埃を払ってあげたい。単なる傍観者である筆者でさえそう思うのだから、万感の願いを込めて送り出したNASAの職員の方々ならなおさらそう思われていることだろう。それこそ狂おしいくらいに。砂塵を巻き上げることなく、ぼう、とインサイトを取り巻く障害を吹き飛ばしてくれる、そんな神風は、火星の地表に吹いてくれないのだろうか。
(本記事は、筆者の感想を織り交ぜながら以下のサイトの文章を意訳したものです:https://www.theverge.com/2022/5/10/23065073/nasa-insight-lander-marsquake-red-planet)
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