地方に蔓延する、異常なまでの値上げアレルギー
私は地方(山形県酒田市)の会社を経営していますが普段は東京にいるので、地方の現場にいる時は極力地元の人と話して地域の情報をアップデートするように心がけています。
ここ最近興味を持って聞いているのは、地元企業の値上げについてです。
原油高、円安等による原材料価格の高騰が始まって久しいですが、弊社のコンシューマー向け商品の販売価格は最大で1.5倍程度まで値上げしました。
一方、企業物価は事実として大きく伸びているものの、酒田市にある一般消費者向けのお店を見ても、そこまで値上げしている様子はありません。
実際、地元の情報に精通している人に聞いてみても、インフレに伴って値上げした企業はほとんどないということでした。
なぜ地方の会社は値上げをしないのか
大前提として、地方は会社も消費者も変化を嫌う傾向にあるように思います。
地方にある2代目、3代目の中小企業は、攻めより守りの経営をしているところが多いです。
また、その地域以外に住んだことがないのに、地元が居心地良いと言う人が結構います。
ですから、地方は何となく変化を嫌っているような気がしています。
その上で、地方の経営者が値上げを忌避するのは、私の肌感覚では大別して二つの理由があります。
1.安いことが当たり前になっている
地方では事業者も消費者も、安いものを買うのが当たり前になっています。
これは、単に賃金が安いから消費できるお金が少ない、というような表面的な話ではありません。
国土交通省が発表したデータでは、地方の消費者は東京の消費者よりも使えるお金が多いことが示されています。
詳しくは過去に地方の安売りについて記事を書いておりますので、そちらを読んでいただけると幸いです。
以前、お店で価格改定のお知らせを出した時、お客様にこんなことを言われたことがあります。
「酒田で商売をする気があるのか?」
それくらい、地方の消費者にとって値上げというのはイレギュラーなことなのでしょう。
2.値上げしなくても何とかなる
結局は値上げしなくても生きていけるから、無理に値上げしないのです。
オーナーが現場に立って業務をこなしているような個人店はオーナーの人件費を考慮していませんので、原価が高騰し利益率が下がっても赤字にさえならなければやっていけてしまいます。
また、地方は家賃も人件費も首都圏に比べると格段に安いので、多少利益率が減ってもクリティカルな問題ではないと思います。
ですから、オーナーや経営者自身が歯を食いしばって頑張ることで、何とかなってしまうことが多いのです。
地方の経営者は値上げという英断を
地方では値上げに対する経営のインセンティブが薄いので、経営者としては限界まで値上げを忌避してしまうのは何となく理解できます。
しかし、原材料や人件費がどんどん高騰する中で、思想なき値段の据え置きを続ける限り、地方は事業者も消費者も幸せになれないのではないでしょうか。
ですから、地方企業の経営者は思い切って値上げをすべきだと私は思います。
一時的に客離れは起こるでしょう。
ですが、どちらにしろ地方は人口減少で何もしなくても潜在顧客は減っていきます。
近年の酒田であれば、消費の主体だと考えられる生産年齢人口は年間で2%弱減っています。
何もせずとも消費者は減っていくのですから、事業者は思い切った値上げと同時に商圏を外に広げることを考えなければなりません。
地方のものを県外に高く売る。それが地方経済の生きる道ではないでしょうか。
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