「国技館ロイヤルランブル」(4) 『悲恋の大関』
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格闘技ファンにとって相撲道は一対一に特化していると認識されている。実際に十両・前頭クラスまではそうだ。しかし、三役と呼ばれるエリート階層にとっては異なる。相撲とは多対一、一対多、多対多の戦場格闘技である。三役同士の取り組みはもはや格闘技ではなく論理戦闘の舞台となるのだ。
(前方から田中、後方から梅茂斗)
大関大失恋の固有能力《客観視》が発動している。そして梅茂斗の激しい頭突きの衝撃を背中で受け、その威力を前方から迫る田中に押し付けて破壊。自らを衝撃伝達の触媒と化し無傷のまま集団を圧倒する大失恋の得意技。これが力士の集団戦闘の強さを保証する《ニュートンのゆりかご》だ。
──大坂夏の陣。本陣深くまで真田幸村に攻め込まれて敗走寸前にあった神君徳川家康を救った無名の旗本がいた。猛烈な勢いの幸村の摺り足を受け止めテッポウをその身に受けながらも衝撃を地に逃して家康が逃げ延びるまで足止めをして立ち往生した無名の力士が用いた技術とされる──
大失恋は衝撃に逆らわず回転して、梅茂斗の手を取り力士殺戮モッシュピットと化した土俵中央へ放り込み圧殺させる。
(俺はもう当事者になるのは嫌なんだよ)
かつての失恋の痛手から第三者の立場へ逃避する大失恋の哀しき相撲である。
【残り13名】
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