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日本国憲法と2023年入試を考える

 今日は憲法記念日です。メディアや政党が日本国憲法についての見解を出す日でもあります。
 日本国憲法は日本の最高法規です。そのため毎年日本国憲法を振りにした問題が出ます。
 去年も日本国憲法と時事問題に関する記事をnoteに掲載しました。

日本国憲法と2022年入試を考える|中貴社|note

 今年も時事問題と関連づけて日本国憲法について考えてみたいと思います。

追伸:2023年で狙われる時事問題も近日中に提示したいと思います。

1,2023年入試で注目したい日本国憲法

 日本国憲法は11の章からなります。そこで、各章の重要度を表にまとめました。

 誤解して欲しくないのは、「無印=出ない」ではないというわけではありません。あくまでも時事問題と関連づけて出題しやすい章というだけのことです。公民分野の学習を通して日本国憲法そして条文を理解して欲しいと思います。では、関連度に合わせて紹介していきたいと思います。

(1)国会と内閣


 2022年は参議院議員通常選挙が行われます。選挙の結果について問われる可能性がありますが、与党(改憲派)の議席が3分の2以上(発議の要件を満たす)か過半数割れ(ねじれ国会)にならなければそれほど重視する必要はありません。実際、2022年入試では、どの党がどれだけの議席を獲得したかについての出題はほとんどありませんでした。政権選択の要素が衆議院より低い参議院を通じて出題する可能性はさらに低いでしょう。

ただ、選挙を通して国会の機能や選挙制度(選挙制度は日本国憲法に大きく記載なし)について出題される可能性が高いです。国会については日本国憲法や公職選挙法の内容を理解していれば対応できます。例えば第41条の

「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」

の穴埋めや、国権の最高機関である理由(主権者である国民が選ぶこと)などはよく聞かれます。
 また、国会に関係する流れで内閣に関する出題も考えられます。ただし国会ほど詳しくは聞かれないと思います。塾で学習する範囲の内容(条文)を覚えておけば十分でしょう。

(2)裁判所

 2022年4月の少年法改正により、18・19歳を特定少年と位置づけ、家庭裁判所から検察に逆送された場合、実名報道も可能となりました。
 さすがに逆送について中学受験で扱うことはないでしょう。ただ、少年犯罪による裁判を家庭裁判所で非公開にして行う理由(更正の機会を与えるため)といった問題は出たことがありますので、それに関連したものの出題は考えられます。

 それよりも出題の可能性が高いのが裁判員制度です。2023年以降の裁判員裁判には満18歳以上も参加する可能性があります。裁判員裁判は重大な犯罪を起こした人間を裁くため、極刑の判決を下す可能性もあります。裁判員裁判の参加の是非などの問題が出たことがありますが、2023年入試でも出題されるかもしれません。

(3)憲法改正


 憲法改正については後述する第9条との関係での出題も考えられます。また国民投票に向けたCMなどについて定めた改正国民投票法との関係での出題もありえます。
 今回のウクライナ侵攻では日本の防衛について様々な意見が出ました。その中で憲法改正にも触れられるおそれがあります。
 5月2日に報道された世論調査でも憲法改正を進めるべきだとする意見の人が半分近くいるようです。
憲法施行75年 NHK世論調査 憲法改正の必要性は コロナの影響は | NHK | 憲法
岸田政権下での憲法改正 賛成44%、反対31% 毎日新聞世論調査(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

憲法改正「賛成」上昇56%、緊急事態対応「明記を」6割…読売世論調査 : 世論調査 : 選挙・世論調査 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

 この記事が出るまでは「△」の評価でした。ただ、こうして憲法改正に関心を持つ人が一定数いるので、来年の入試で出題される可能性が高いと見て「○」に変更しました。

ここまでの条文は来年の入試で話題になる可能性があります。しかしこれから紹介するものの方が出題される可能性が高いです。それが何か紹介したいと思います。

(4)今年の入試で注目するべきテーマ①人権問題

 基本的人権に関するものの中でも特に自由権・平等権・社会権の3つが重要です。それらと関係するニュースと絡めて紹介します。

①移民・難民

 難民に関する問題は2022年入試でもいくつかの学校(麻布中・成蹊中・鎌倉学園・昭和女子大附属女子など)で取り上げられました。おそらく東京オリンピックの難民選手団と関連づけての出題だったと考えられます(成蹊中はリード文で明記してます)。しかし、来年の入試はウクライナ難民を通しての出題の可能性が高いです。
 ポイントは「日本の難民の受け入れ」です。まず、日本は世界の中でも難民の受け入れが少ない国です。そのことについての是非が問われるでしょう。また、難民の受け入れを増やすにしてもどのような課題・利点(受け入れる側、日本に入国する側)についての出題も考えられます。日本国憲法第14条には、

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」

とあり、人種による差別をしないと明記しています。今回のことを通して難民についてより深く考えることになると思います。

②人種差別


 難民と関連づけられる問題です。人種差別は日本・世界いずれにとっても重要な問題です。特に現在は非常にデリケートな問題になっています。改めてどのような差別(アイヌ・男女・人種など)があるか知っておいた方がよいです。その上で、どうすれば差別を減らすことができるか考えてみて下さい。このテーマは知識よりも自分の意見を述べさせる思考力問題での出題が多いと思います。

③ヤングケアラー問題


 2021年より社会的に注目されるようになってきたヤングケアラー問題、2022年入試でも筑波大附属駒場で出題されました。こうした、同年代で起きている身近なテーマは出題される可能性が高いです。社会的に認知度が高まり、ヤングケアラーが生じる原因がより明らかになり、対策が進められていくことからも、入試で扱われる可能性が高まると考えられます。

④改正育児休業法


 2022年4月1日に改正育児休業法が施行されたことで男性の育児休暇の取得率の上昇が期待されます。それに伴い、女性が復職しやすくなる可能性も高まります。

 かつては男性が働き、女性が育児に専念するのが基本でした。それが女性の社会進出により夫婦共働きが進むと、育児休暇の取得や待機児童といった育児に関する問題が表面化しました。また、女性の社会進出が少子化の原因だとする意見もあります。こうした問題を解決するためには育児と労働に対する理解が求められます。
 勤労の権利を含む社会権、男女平等を目指す平等権といった基本的人権に関連しての出題が考えられます。

 基本的人権に関する問題は、現代社会と深く繋がっています。何が問題で、どの人権と関係が深いか、基本的人権に関する条文を読みながら確認しておくとよいでしょう。

(5)今年の入試で注目するべきテーマ②平和主義


 もう1つは平和主義です。理由はもちろんロシアのウクライナ侵攻です。今回のことを通して日本はどうしたらよいだろうと考えた人もいたと思います。

今回のことで論点になるのは次の3つだと思います。

①集団的自衛権


 集団的自衛権は個別的自衛権の拡大解釈の時にも話題になりました。日本はアメリカと連携して専守防衛を図っていますが、一方で先制攻撃による防衛も認めた方がよいという考えも出てきています。
 集団的自衛権は日本国憲法の条文には明記されていませんし、交戦権は否認されています。日本の防衛の在り方について考える必要があるかもしれません。

②非核三原則


 非核三原則は佐藤栄作首相の「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の考えによるもので、憲法にも法律にも記載されてはいませんが日本の核に対する基本姿勢を表したものです。しかし、一部の国会議員や識者からは日本も核武装をして防衛力の強化を図るべきだとする意見が出ています。
 現在、日本は同盟を結んでいるアメリカによる核の傘で守られています。それを自分たちで行うのか、今まで通りアメリカに守ってもらうのか、それとも核の傘自体を放棄するのか、ロシアのウクライナ侵攻の推移とともに日本の核の在り方について考える必要があるでしょう。

③自衛隊


 日本は軍隊を持っていませんが、自衛組織である自衛隊があります。しかし、自衛隊は日本国憲法制定後に生まれた組織のため、一度も改正したことのない日本国憲法の条文には記載がありません。

 憲法改正論議が進めば自衛隊について憲法に書くべきかの議論がされることでしょう。これまでも災害救助などで多くの人を自衛隊は救ってきました。その自衛隊の地位について議論されることは十分に考えられます。

3,まとめにかえて

 以上、日本国憲法と2023年入試のポイントは以下の通りです。
①時事問題に関わらず日本国憲法は押さえるべき
②来年の入試では基本的人権と平和主義が狙われやすい。この2点は条文とニュースを関連づけての対策が効果的である。


 まずは授業を通して日本国憲法について理解して下さい。その上で、現代社会の抱える問題と日本国憲法と関連づけるといいでしょう。
 今回は日本国憲法に焦点を当てて時事問題を紹介しましたが、もちろんそれ以外にも注目するべき時事問題は多くあります。それについては後日改めて紹介します。

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