千の仕事の女神

グレーゾーン金利を葬った最高裁判決

平成18年1月13日、最高裁判所第二法定で一つの重要な判決が出た。

この判決により日本中の貸金業者、弁護士、司法書士が一斉に動き出す事になる。

この判決は世にいうグレーゾーンだった貸金金利を葬り去ってしまったのだ。

バブル景気崩壊後、日本経済は活気のない低成長が続き失われた20年などと言われた暗い時代に逆らってグングン右肩上がりの成長を続けた業界がある。

消費者金融と呼ばれる貸金業界だ。

この時期、消費者金融大手5社は次々と東証1部上場を果たしていった。

株価は一時1万円近くまで跳ね上がり各社の経常利益は1000億を超えていた。

しかし、この利益のほとんどがグレーゾーン金利に依存したものだった。

弁護士・司法書士は消費者金融に過分に支払った金利の返還業務で業界バブルが起きた。

貸金業社は弁護士・司法書士から請求される過払金の支払いに追われるようになった。

この事件は、そんな状況の中で起こった・・

30億円流用?被害者2万人?

令和2年6月24日、負債51億円余りで破産決定を受け、弁護士法人では過去最大の倒産となった(弁)東京ミネルヴァ法律事務所〔東京都港区、代表弁護士川島浩、2019年3月期売上高17億8400万円〕CMは↓。

消費者金融を利用したことがある人に、過払い金利の返還が受けられるとの広告をあちこちのメディアに大量に流していたことで知られるが、破産の背景には、依頼者に支払われるべき過払い金、少なくとも30億円が弁護士法人を陰で実質的に操る広告会社により流用されてきたという、弁護士にあるまじき前代未聞の不祥事があることが今回発覚した。

過払い金が仮に1人当たり30万円だとすれば、被害は1万人規模に及ぶことになるが、ある事情通の話では「被害者は2万人に達する可能性もある」ということだ。

東京ミネルヴァが所属する第一東京弁護士会(一弁、寺前隆会長)は、東京ミネルヴァ代表の川島弁護士による6月10日の法人解散と預かり金流用の告白を受け、22日に急遽臨時電話窓口を電話回線を増設して設置した。

さらに、財産保全のため、一弁が自ら会費未納に基づく債権者として24日に東京地裁へ破産手続き開始を申し立てるという緊急の非常手段に踏み切り、地裁も直ちに開始決定を出した。

なお、破産管財人に選任された岩崎晃弁護士(岩崎・本山法律事務所)も一弁所属の弁護士である。

ミネルヴァを支配していたのは消費者金融武富士の元支店長

ミネルヴァを陰で支配していた今回の破産劇の黒幕ともいえる会社とは(株)リーガルビジョン〔渋谷区、代表霜田広幸、19年3月期(4カ月間の変則決算)売上高8億8100万円〕という広告会社である。

兵庫県出身で、消費者金融大手の武富士で札幌支店長までつとめた兒嶋勝氏が04年4月に設立した(株)DSC〔渋谷区〕という会社がリーガルビジョンの前身になる。

この兒嶋勝氏、武富士時代はかなりやり手な社員だったようで、当時の部下が証言している。

前述のグレーゾーン金利の廃止に伴い、「これからは過払金請求が一番銭になる」と先読みし、武富士に見切りを付けこれらの事業を立ち上げたのはさすがである。

その兒嶋勝氏が西暦2000年の士業の広告解禁を受けて創業した、士業専門の広告代理店だった。

同社は弁護士などへの相談を取り次ぐサイト「法律の窓口」も運営し、過払い金ブームに乗って業績を伸ばしていった。

だが、東京国税局の査察を受けたことで身売りに動き、14年11月に東証2部上場の(株)RVH〔港区〕の子会社になった。

そして、翌年2月に国税が正式にDSCと兒嶋氏を1億3000万円の脱税(法人税法違反)容疑で東京地検に告発する事態となり、同年4月には「法律の窓口」のサイトを含む事業の受け皿会社としてリーガルビジョンが設立された経緯がある。

つまり(株)RVHの子会社がリーガルビジョン(旧DSC)という構図となる。

代表に就任した霜田氏は、兒嶋氏の武富士時代の後輩で、DSCでも部下だった人物。

表向き「兒嶋氏とは縁を切った」と話していたが、裏では兒嶋氏が絶対権力者の「会長」として支配する体制が続いていた。

兒嶋氏は、DSCとは別に淡路島で実質経営していた貸金業者で、出資法違反(違法金利)容疑での逮捕歴もあるいわく付きの人物だ。

消費者金融から返還された過払金を流用?

リーガルビジョンもDSCと同様に経営が苦しい弁護士事務所に近づき、過払い顧客を集めるための広告プランを作成。

「武富士の社員が破綻時に持ち出した大量の顧客リストをもとに営業しているのはないか」とささやかれるほど、兒嶋氏は集客がうまかった。

さらに「士業専門の総合アウトソーサー」を標榜し、関連会社のキャリアエージェンシー(株)〔渋谷区〕が事務員や相談員を派遣し、経理業務も含め事務所の運営は、事実上、リーガルビジョン任せになってしまっていた。

東京ミネルヴァの場合、「オフィスをはじめ通信回線、サーバー、事務所ロゴの商標権など、なにからなにまでリーガルビジョングループから兒嶋氏の言い値で借りていた」(事務所関係者)ため赤字が累積。昨年3月末時点の債務超過額は実に31億8100万円に達していた。

実は東京ミネルヴァが返還前の過払い金(預かり金)に手を付け始めたのは、かなり前からのことである。

初代代表の室賀晃弁護士が15年に死去し、後継者の河原正和弁護士も体調不良で辞任した末、川島弁護士が3代目代表に就任した17年8月には「預かり金に4億円の穴があいていた」(同)という。

だが、過払い金返還請求の依頼者は消費者金融との交渉をすべて東京ミネルヴァ任せにしているため、資金の返還が遅れてもそれほどせっついてこなかったようだ。

川島弁護士は状況を打開するため、集客アップで収益改善を図り、依頼者へ返す資金を捻出しようと計画した。

だが、そのためには結局兒嶋氏の力を借りざるを得ず、同氏への依存がますます深まる悪循環に陥っていった。

本来消費者金融から過払い金が入金される銀行口座は、事務所の運営経費とは分別管理する必要がある。

ところが、兒嶋氏が送り込んだ経理担当は指示されるまま兒嶋サイドへの送金を繰り返した。

川島弁護士はことあるごとに是正を試みたが、兒嶋氏は「広告をストップする」「派遣社員を引き揚げる」などと脅すような態度を取ったり、「一蓮托生よろしくお願いいたします」といったメールを送ったりするなど、一切逆らうことができない状況に追い込んだという。

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川島弁護士が資金流出の責任を問われるのは当然だが、兒嶋氏も罪深い。

ライブドアは関係ないのか?

さてリーガルビジョンの完全親会社であるRVHとはいかなる会社なのか?

調べてみると、元々は医療用画像機器の会社で、東証二部上場を果たしたが、そんな業務は早々に辞めてしまって、株式マーケットので仕手筋のおもちゃのようになってしまった、そんな会社だったのです。

株価のチャートを見ると面白いのですが、最高値は平成16年に1500円を超えるほど高騰していますが、現在の株価は115円です。(チャートは↓)

この株価の高騰はミネルヴァからリーガルビジョンが吸い上げた分がRVHの連結利益として乗っているからではないかと筆者は考えている。

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気になったので主要な株主名簿を調べてみた。

すると、大株主にユーキトラストという会社があった。

このユーキトラストは「S K Oグループ」とも言われる旧ライブドアの関係者の企業で、社長は旧ライブドア史上最年少社長の熊谷史人氏、幹部にライブドアの取引先にいた岡田英也氏が在籍する企業である。(写真は熊谷氏)

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そして、リーガルビジョンの完全親会社であるR V Hの社長は和田佑一という人物であるが、その前の社長は沼田英也という、これまた旧ライブドアマーケティングの監査役をやっていた人物なのです。(写真は沼田氏)

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この事件についてライブドアの創設者であるホリエモンのコメントがyoutubeにあったので添付しておきます。


第二のミネルヴァ事件が起きている可能性は?

リーガルビジョンの親会社がRVHであったことはすでに述べたが、RVHはリーガルビジョンへの貸付金負担が重いなどの理由で株式を売却し、18年11月にトラストフィナンテック(株)〔渋谷区〕なる投資会社が新たな親会社となった。

トラストフィナンテックは、長野市で税理士事務所を経営する兼子修一氏が同年3月に設立したばかりで、TBSテレビ「サンデージャポン」にレギュラー出演する細野敦弁護士(元東京高裁判事)が監査役に就任している。

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取材によれば、リーガルビジョングループの売り上げの7割は東京ミネルヴァに依存していたため、いちばん太い金づるを失った同グループも大打撃だ。

昨年3月末の東京ミネルヴァの未払金20億500万円の相手先はリーガルビジョングループの広告会社(株) Lawyer’s Agent〔港区(東京ミネルヴァと同所)〕が16億8800万円、キャリアエージェンシーが2億6000万円、DSCが5500万円となっている。

また、同グループについては業務の一部が非弁活動にあたる可能性も指摘されている。

一弁ならびに上部団体の日本弁護士連合会(日弁連、荒中会長)も、弁護士が広告会社に業務を丸投げしているうちに操り人形になってしまうという想定外の事態を問題視。

すでに東京ミネルヴァの社内資料をすべてリーガルビジョンの管理下にある事務所から運び出し、全容解明に乗り出しているもようだ。

一弁の寺前会長は「全国で広報活動を展開し、多数の依頼者から過払い金の請求やB型肝炎の裁判を受けたまま業務を停止した。調査の結果、過払い金の保管状況に不明な点があり、依頼者に返還することが困難な状態に陥っている疑いがあることも判明した。多数の依頼者に甚大な不利益を与えるもので弁護士法人として到底許されるものではなく、弁護士会としても厳粛に受け止めている」とのコメントを出した。

しかし、前出の事情通によれば「兒嶋氏の実質支配下にある事務所は東京ミネルヴァだけではない」という。

都内や大阪のいくつかの弁護士事務所と司法書士事務所が実質的に支配下にあるとされ、同様の問題が起きている可能性が高い。

士業の資金管理や外部業者への業務委託のあり方、弁護士法人や司法書士法人の財務諸表の会計監査・公開制度の必要性なども含めた抜本的な制度改革の議論が求められる。

「東京ミネルヴァ事件」は多数の被害者を出すことになっただけでなく、法曹界に難しい課題を突き付けたといえそうだ。

関連年表

2004年 4月 (株)D S C(リーガルビジョンの前身)設立

2014年 11月 (株)D S Cが(株)R V Hの完全子会社となる

2015年 4月 リーガルビジョン設立

2017年 8月 川島弁護士 ミネルヴァの3代目代表に就任

2018年 11月 (株)R V Hがリーガルビジョンをトラストフィナンテックに売却

2020年 6月 東京ミネルヴァ法律事務所 倒産

まとめ

この事件、表面だけ見れば、元武富士の敏腕支店長がミネルヴァ法律事務所をだまくらかして大量の資金をかすめとった事件と見えるだろう。

しかし、深掘りして株式という側面にフォーカスしてみると、リーガルビジョンがミネルヴァを使って過払金を回収して大きな利益を上げた事によってその完全親会社であるR V Hという会社の株がハネ上がり、その筆頭株主であるユーキトラストが持ち株の一部を売り抜ける事によって莫大な利益を上げていたという事件なのである。

そして、その関係者を当たってみると元ライブドア関係者が続々と出てくるのである。

この事件、非常に面白いので、更に分かったことがあれば、随時追加します。

また、期間を置いて有料にするかもしれません。

・・おしまい・・

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