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文字で繋がっている

小説、自己啓発、漫画などを今まで読んできた。そこまで数は多くないとは思うけれど、もし売らなかった本が手元にあったら三段収納の本棚はもう入りません勘弁してください、とべそをかいていたかもしれない。

今まで読んできた本のジャンルで一番好きなのはエッセイだ。もちろん、書いてあることが人生の全てです!な本はきっとない。添削などが入って、一冊の本になるのだ。全てを書こうとすれば広辞苑も負けるくらいのページ数になるだろう。

それでも、人生の一部を読ませてもらうのは様々な価値観、倫理観を知り自分の生き様に影響を与えてくれる。自分では思いつかないボキャブラリーを知ることが出来るのも面白い。

11月に文フリに行き、購入させてもらったなかむらさんの『「ぽあだむ」のMVに出てくる女の子、みんな好きでした。』を読了した。

https://x.com/my_free_t?s=20

なかむらさんのことはTwitterで知った。なんのツイートがきっかけだったのかは忘れてしまったが、繊細で純粋な言葉を並べる方なんだなとフォローをさせてもらったのだ。

『椎名いとし』の人物像が出来る数年前からフォロワーが6人しかいないアカウントがある。そこでフォローさせてもらっていて、そのアカウントの存在を口頭でしか伝えていなかったはずなのに、サブ垢でフォロバをされた時は文字通り目が丸くなった。

おこがましいと思いつつも、少しだけ引用させてもらって私の思考も一緒並べさせてもらいたいと考えた。本章というよりも、間にあるおぼえがきの部分を二つ抜粋する。

歯並びの悪い友達がいる。

彼女の歯並びはいわゆる整えられた綺麗さではなかったけれど、笑ったときにはみ出る前歯は彼女だけが持っている魅力だと思っていた。

しかし、彼氏に「歯並びが悪い女の子は好きじゃない」と言われたことで彼女は今度歯列矯正をするらしく、どうにもこうにも寂しくなってしまった。

「ぽあだむ」のMV出てくる女の子、みんな好きでした。おぼえがき/なかむら より

まず、目に留まったのは『歯並び』という単語だ。電車の広告や会話の中など、この単語を発見するたびに条件反射で気になってしまうくらい私も歯並びが悪い。

コンプレックスの題材として以前の記事にも書いたが、年を重ねて完全にアイデンティティに変身させた。でも、この女の子は彼氏に言われて歯列矯正をすることに至っている。私も寂しくなった。

彼氏から言われるというのは、それはそれはショックなことだろう。どことなく似つかわしい境遇に陥ったことがある私にとって、彼女の心情は想像がつく。

別に、歯列矯正をするなよとは思わない。歯並びが良くなることに関しては良いことしかないから。しかし、彼氏のその一言は何故付き合う前に言わなかったのかだけが引っかかった。

「こういう外見はタイプではない」と考えるのは一般的に誰しもが持つ感覚ではある。でも好きになって交際に発展してから言うのはトラップカードすぎる。中身で好きになりました、と言っても外見が許容範囲だからこそどんな思考を持っているのか気になるルートに行くのではないのか。え、違う?

なかむらさんのように魅力的に感じてくれる人がいることを彼女には知っていてほしいなとは思う。その人たちの中に私もいるよ、むしろ仲間だよ、肩組む?ということも伝えたい。いやでも距離感バグ起こしてるか。すみません。

会ったことも話したこともない二人の事情に首をねじ込むのはお門違いではある。お節介ババアムーブをかましてるインターネットの人間って嫌すぎる。それでも外見の悪評をダイレクトアタックしてくるのってどうなんだ、と思うなどした。それだけです。

好きな人のためだけに息切れをしても全力で走れる人ってかっこいい。

小学生の女の子が足の速い男の子のことを好きになるのって、いつか自分のために全力で走ってくれる男の子に夢を見ているからなんじゃないだろうか。

「ぽあだむ」のMV出てくる女の子、みんな好きでした。おぼえがき/なかむら より

小学生の頃を思い返してみた。たしかに体育の授業や運動会でリレーの選手になるような男の子はモテていた。

かく言う私も、小学1年生で好きになった男の子は足が速かった。それだけでなく、跳び箱も鉄棒もヒョイヒョイこなす子だった。他の運動神経の良い男の子もキャーキャー言われていた。数十年経って、好きな女の子のためにあの頃の男の子たちは走ったことがあるのだろうか。

スポーツをプロとして活躍している選手も、もれなくカッコいい。大人になってもそう思うのだから、子どもの頃から潜在的に『運動神経がいい=カッコいい』というのはインプットされているのかもしれないな。

なかむらさんのこの文章で、知らない俳優が走っているドラマのワンシーンが脳内に浮かぶ。それくらい、綺麗な伏線回収をした気分になれた。

どちらかというと、私自身が全力で駆けつけてしまうことが多いくせに、「彼女のために全速力で走ってきてくれる男の子、良すぎる」と天を仰いだ。


…と、なかむらさんの本を通して、直接ちゃんと会話がしたくなるような部分もあった。銀杏BOYZも、大槻ケンヂも名前しか知らない人間とはお断りだろうなと思いながらも、読者に情景を思い浮かばせられる文章を書けるなかむらさんの発する言葉ってどんな感じなのだろう、と気になっている。

鬱病からいくつかの精神病と付き合いがあり、休職を経験している私。なかむらさんの出会ったあの男の人に「きっと中村くんだからこそ、その子の気持ちがわかると思うんだ」と言われたように、私も友人に同じようなことを言われたことがある。

自分の生きている道中で人の救いになれるならと思っているなかむらさんと同じくそう思っている自分を重ねながら読んだ。

いつか、再会する機会があって「文フリの時、ティッシュを渡してブースの張り紙を貼った奴です!!」と言ったら思い出してくれる気がする。あと支払いでグダッたことを謝罪したい。

「死なない程度に頑張りましょうね」とガッツポーズをしてくれたなかむらさんに、「死なない程度に生きられたから再会できましたね」って言いたいな、と思っています。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
また来週!

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