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夢をかなえたのは、やめなかった人たち

お笑いが好きだ。
特に『M-1グランプリ』は毎年楽しみにしている。
芸人たちが一番面白い漫才師という称号を目指し、人生をかけてする漫才は、演芸をこえた感動がある。
それゆえに何回も見てしまう。
もちろん面白いから何回も見ているというのもあるが、ネタの構成やセリフ、演技やコメントなど、1回見るだけではとらえきれない部分もあるから何回も見てしまう。
特に、コーンフレークで一世を風靡したミルクボーイが優勝した『M-1グランプリ2019』が好きで、もう10回くらい見た。
誰もが共感できるあるあるネタと、予想の1つも2つも上をいくツッコみのワードセンスは、まさに王者。
当時、世間にはほとんど知られていなかったミルクボーイが、爆笑をかっさらっていく流れは、とても爽快で、シンデレラストーリーという言葉がぴったりだった。

ミルクボーイはネタの最初に、ボケの駒場が客席の方に歩み寄り、ツッコみの内海が

「あー、ありがとうございます~。今、〇〇を頂きました~」

と、何かプレゼントをもらった体で笑いをとる”掴み”を入れる。
当日は、〈ベルマーク〉と〈ねるねるねるねの”2”の粉〉を頂いていた。
絶妙にいらない、と思わせるワードセンスは抜群だ。

そして、優勝が決まりM-1が終わる10秒前。
コメントを求められた彼らが発したのは、"あの掴み"だった。

「あー、ありがとうございます~! 今、トロフィーを頂きました~!」

そこには笑いの要素は一つもない。
ずば抜けたワードセンスを持つ彼らが、何のひねりもない一言をいい放ったこの瞬間に、純粋な喜びや苦労といった”人間臭さ”を見た気がした。
会場は、今までにないような温かい拍手に包まれ、エンディングを迎えた。

m1優勝


後日放送される『M-1アナザーストーリー』という番組がある。
出場者の背景や、M-1にかける想いなど、大会を裏側からとらえた番組だ。
その中で、ミルクボーイの意外な一面を知った。

大阪芸術大学の落語研究会で出会った2人は、2006年からM-1へ挑戦。
しかし、鳴かず飛ばずの日々が続く中、だんだんとすれ違いがちになり、漫才からも離れていったのだ。
駒場は先輩に連れられ飲み会に、内海はギャンブルに出向く日々。
そんな2人を変えたのは、後輩芸人の霜降り明星が『M-1グランプリ2018』で優勝したことだった。
刺激を受けた2人は、もう一度漫才に真剣に向きあうこととなる。
結果は、ご存じのとおりである。

番組の最後。
優勝後、多忙で何日も家に帰れなかった駒場。
M-1史上最高得点を出したシーンで、テレビの前で家族が大喜びする動画を奥さんから見せてもらう。
今までかけてきた苦労を思い出してか、駒場の頬には静かに涙がつたっていた。
このシーンを見て、僕はひとりジーンとして鼻をすすりながら思った。

「お笑い芸人の人生って、笑えないな」


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大学で金属の研究をしている。
研究室に入る前は、「ノーベル賞を目指せるような立派な成果をあげるぞ!」と意気揚々としていた。
しかし、現実はそう甘くない。
研究というのは、思っているより地味だ。
地味で、大変で、つらいことが多い。
(それでも楽しいから続けていられるのだが)
小さな小さな金属をピンセットで操り、何時間もかけて実験準備をしたり。
やっと実験がはじめられたと思っても、トラブルで1日延期することになったり。
そして、実験にも何時間、ときには何日もかかったり、ということの積み重ねなのだ。

そんな日々の中、悟った。
ノーベル賞などの華やかな業績は、こんな作業を延々と繰り返してきた研究者の好奇心や意地、忍耐によって生み出されてきたのだ、と。
研究室に入るまでの僕は、ノーベル賞という”点”しか見ていなかった。
だけど、実際は違う。
それは、普段の研究という線の中の一点、に過ぎないのだ。

それ以来、僕は研究をいかに長く続けるか、を考えた。
そして、思い至ったのは「いちいち期待しないこと」だった。
実験結果に期待すると、思うような結果じゃないとき、それまでの苦労が報われなかった気分になる。
そんなことでは続かない。
大切なのは頭の中のロマンを追いかけることではなくて、その日その日を泥臭く、ちゃんと生きていくことなんだと思う。


このnoteアカウントは、僕にとって2つ目になる。
(詳しくは別の記事に書いた。)
先日、久しぶりに昔のアカウントにログインした。
もう2年近く更新していなかった。
当時の記事、当時のフォロワー。
その中は時が止まっているようだった。

「この記事は恥ずかしすぎる。もう墓場まで持っていくしかないな」
「そういえば、こんな人フォローしてたなー」

学生時代のアルバムをめくるような懐かしい気持ちで、ひとつひとつを振り返っていた。
ふと気になった。
他の人たちは、記事を更新しているんだろうか。
フォロー・フォロワー含め、色んな人を確かめてみた。

僕は、時計は止まったと思っていた。
だけど、この2年間ずっと動き続けている人がいた。
しかも、当時とは比べ物にならないくらい影響力を持っている人もいた。
止まっていたのは、僕の方だった。

夢をかなえる人や、大きな成果を上げる人は、やめなかった人たち。
ツラいことや苦しいことがある中にも、わずかな光や楽しさ、喜びを見出して、日々をちゃんと生きていける人なのだろう。

そんな人に近づくために、毎日コーンフレークを食べることからはじめたいと思う。



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