読書感想文 #11 希望の国のエクソダス

こんばんは、
isukです。

今回読んだ本はこちらになります。

村上龍:希望の国のエクソダス

読もうと思ったきっかけ

先日も読書感想文で紹介した「古市憲寿:絶望の国の幸福な若者たち」のなかでこの本が「中学生がネットビジネスで建国をする」物語だと紹介されていて、興味を持ったために購入しました。

あらすじ

海外の取材もできないような辺境の地で生活していることがわかった日本人の少年通称「ナマムギ」の存在をきっかけに、日本中の中学校で不登校が発生。

彼らはインターネットを駆使して情報をやりとりするなか徐々に勢力を拡大。さらには自分たちに手でビジネスにまで手を出して...

感想

読んでいて一番強く感じたことは、「本当に2002年に発行された本なのか」と思ってしまうくらい、作中と今の日本の現状が変化していなかったことです。

以後、ネタバレになってしまいますが、

当時も現在も、「バブル」が弾け飛んだ後の日本の弱さというか、「希望」の無い様子が変わっていないと感じました。

中学校をはじめとした教育の現場では、戦後に決められた内容のまま現在の社会を生き抜くための知恵とは無縁のことしか学ぶことができませんし、手に職を付けようとして語学などのスキルや資格だけを取得した人間が価値がないと切り捨てられる様は少なくとも物心が2002年以降についた私がこれまでの人生において感じていたこととあまり変わっていないように感じました。

つまり、「脆い部分」や「危機感」というものがこれだけの時間-約20年-をかけても変化をしていないということと変わりないのかもしれません。
そういった意味で言えば、こうした「事実」は時代が変わっても変化をすることのない、ある種の「正解」なのではないか、と感じました。

時代の流れや世界の国々との関係があれど、本質的には、作中にも出てくるように「日本という国に希望はない」のでしょう。

なので、自分で意見を持たなかったり、周りに流されて生きてきた私のような人間はその道の先に「希望」がないことを悟り、悩み、苦しんでいるのかなと感じました。

また、全く別の話になりますが、作中には金融市場に関する細かい供述が出てきます。ストーリーにも大きな影響を与える内容なのですが、経済学に全く知識のない私はほとんど理解をすることができませんでした。
ですので、自分で経済学を勉強する、またはこれらの分野を理解しており、わかりやすく解説してくれるような人物と友達になって教えてもらう、といった行動を起こしていきたいとも感じました。

作中の最後、中学生たちが自分たちの力だけで作り上げた「理想郷」のような場所の記述があります。そこは2020年を生きている私からしても理想と思えるような環境でした。こうした環境が2002年の時点で空想されていながらも、事実この国にはそのような場所が存在しないことに疑問を感じると同時に、著者のガバガバな設定であれ実現できたのだから、本気で作ろうと思えば作れてしまうのではないかとも思いました。


今あとがきを読み直して気がついたのだが、本作の中学生たちの原動力となったとも言えるものが「無気力で自分の背中を示せない大人たち」だということを思い出した。

これは先ほどの「希望がない」という表現とも重なるが、誰かから批判をされたり、失敗が許されないという世の中でおそらく、「なんとなく諦めて無難にやること」が社会の暗黙のルールというか、そうしていれ自己肯定ができるだとかという感覚が広まってしまったことが原因だと思います。作中に中学生が政治家に対して「俺のように生きてみろ!となんで言えないんですか?」というシーンがあります。まさにその通りだと思いました。

今の世の中の中で「俺のように生きてみろ!」と自信を持って言える人はどれくらいいるのでしょうか?少なくとも、これまでの私の人生で出会ってきた大人の過半数以上はそういった発言を自信を持ってできない人たちだったように思います。

子供は大人を見て育ちます。
それは私や、大人たちがそうであったように普遍の事実であると思います。

そうした状況に置かれた中で、未来の可能性しかない子供たちにどんな背中を見せてあげられるかが私の人生にとって大切なピースともなり得るのではないかと思いました。

まとまりのない文章ですが、以上で終わりにしようと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。



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