サイトウマサフミ

「社会全体が狂っているときに正しい生活というものはあり得ないのである。」(Th.W.ア…

サイトウマサフミ

「社会全体が狂っているときに正しい生活というものはあり得ないのである。」(Th.W.アドルノ『ミニマ・モラリア』 § 18, 42頁)

最近の記事

個人的読書2022年「今年の3点」

 年末の新聞書評欄では「今年の3冊」的な記事が載っている。その年に発売された本の中から有識者が良かった本を選ぶ企画だ。例えば朝日新聞は12月24日付の紙面で12字×27行で21人の書評委員の3冊を紹介している。  専門書がある大型書店まで車で40分以上かかり、唯一ある地元のTSUTAYAの書店コーナーには嫌韓本しか並んでいない地方に住んでいると週末の新聞書評欄を読む時間が唯一の文化的な時間である。  個人的には本との出会いを「年単位」で区切るのは違和感ある。本との出会いは年代

    • 『平成転向論』についての覚え書き

       7月中旬に札幌駅前の紀伊國屋書店で新刊本を漁っていたら「SEALDs」と題にある本を手に取ってみたら以前自分が書いた文章が元メンバーのものとして引用されていて驚いた。とりあえず買い、2~3日で読みきった。  同書への応答でもないけどもこの本についてnoteで文章をまとめたいなぁ、と思っていたが、考えがまとまらず、仕事が忙しくなり完全に忘れていた。8月くらいに毎日新聞の記事で著者が取り上げられると「プチ炎上」していた。  私の文章は「好意的」に何度か引用されている(ようだ)。

      • 「8月ジャーナリズム」と植民地主義的な”欲望”

         8月15日が近づくと戦争(ここでは主にアジア・太平洋戦争)についての記事を量産する所謂「8月ジャーナリズム」の社内企画の一環として、強制労働の歴史を伝えてきた朱鞠内の「笹の墓標展示館」を再建するために京都から深川に移住して活動する金英鉉さんを取材して記事を書いた。  記事を書くまでの過程に”様々な”ことがあったが、改めて感じたのは日本社会一般において「戦争」とは基本的に大日本帝国臣民が悲惨な目にあったという範囲でしか理解されないのであって、(日中戦争をはじめとした)アジア

        • ホリエモンがプライベートジェットを使い2日間で排出するCO2量は日本人の年平均以上

          海外セレブの二酸化炭素排出量は一般人の100倍以上 ドイツの政治経済学者のマーヤ・ゲーペル(Maja Göpel)が書いた『希望の未来への招待状』(大月書店、2021年)の第9章にはプライベートジェットに関する興味深い研究が紹介されている。  2019年に生態学者のシュテファン・ゲスリンク(Stefan Gössling)はセレブや経済界のリーダーなど有名人の飛行機移動について調べた。その多くがプライベートジェットの保有し、世界各国を飛び回っている。面白いのはその調査方法だ

        個人的読書2022年「今年の3点」

          【読書メモ】C・ライト・ミルズ『社会学的想像力』ちくま学芸文庫、2017年

           「社会学」に少しでも触れた人なら聞いたことはあるだろう「社会学的想像力」という言葉。1959年に出されたミルズの著作は「社会学」が持つべき「想像力」と同時に「社会学批判」として書かれている。 目次と概要目次は以下の通り。 第1章 約束 
1社会学的想像力の効用――三つの問いかけ/2公的問題と私的問題/3不安と無関心/4新しい知の公分母をめぐって/5社会科学の危機/6社会学の伝統――社会科学の焦点としての社会学 第2章 グランド・セオリー 1『社会システム論』を翻訳する/

          【読書メモ】C・ライト・ミルズ『社会学的想像力』ちくま学芸文庫、2017年

          【読書メモ】富永京子『みんなの「わがまま」入門』左右社、2019年

           昨年、多くのネット記事や書評になっており、「社会運動」の本ということもあり大学図書館で借りて読んでみた。目次などは下記リンクを参照。  本の冒頭でも書いてる通り、中高一貫校での講演を元にしている(高校の名前はあとがきに書いてある)。  「はじめに」で本著の目的が簡潔に書かれている。 「わがまま」をはじめとした社会運動に対する悪口の背景をひもとくことで、それを明らかにしようと考えたのが、この本です。(10頁)  そして、本書につながる問題意識は「あとがき」に書いてある

          【読書メモ】富永京子『みんなの「わがまま」入門』左右社、2019年

          【読書メモ&データまとめ】WiMN編『マスコミ・セクハラ白書』文藝春秋、2020年

           2月13日に発売されたばかりの本。  概要は以下の通り。 「胸触っていい?」「抱きしめていい?」 テレビ朝日の女性記者に対する財務省幹部のセクシュアルハラスメント事件は、世間に大きな衝撃を与えた。しかし、この記者を自分と重ね合わせた女性たちがいた。声なき声をすくいあげ、社会に届けるジャーナリズムに携わってきた多くの女性記者たち。彼女たち自身が、声なき声の当事者だったのだ。 事件をきっかけに、2018年春に「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)」が発足。100人超(

          【読書メモ&データまとめ】WiMN編『マスコミ・セクハラ白書』文藝春秋、2020年

          【考察メモ】新型コロナと『ショック・ドクトリン』 上がる株価と日本的・参事便乗型資本主義

          ※2020年3月2日の社会状況で考えたことを断片的にまとめたものです。コロナウイルスに直接言及したものでありません。  現在の新型コロナおよびそれに対応する政府を見るなかで既視感を覚えたのが、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』(岩波書店、2011年)の「第五部 ショックの時代ー参事便乗型資本主義複合体の台頭」だ。新自由主義的な政府機能の縮小の結果起きた、「ショック」を経済成長に転換していく様子は現在の日本とも重なる。  日本政府の新型コロナの検疫体制が不十分でもある

          【考察メモ】新型コロナと『ショック・ドクトリン』 上がる株価と日本的・参事便乗型資本主義

          【読書メモ】ジョン・ホロウェイ『権力を取らずに世界を変える』同時代社、2009年

           ジョン・ホロウェイ『権力を取らずに世界を変える』(同時代社、2009年)について。 ※メモとして単純化している部分があるので時間がある方はぜひ原著を読んでください。  目次は以下の通り。 1叫び/2国家を越える?/3権力を越える?/4物神崇拝―痛ましいディレンマ/5物神崇拝と物神化/6反物神崇拝と批判/7科学的マルクス主義の伝統/8批判的・革命的主体/9反権力の物質的リアリティ/10 反権力の物質的リアリティと資本の危機/11 革命?/エピローグ 立ち向かいながら乗り越

          【読書メモ】ジョン・ホロウェイ『権力を取らずに世界を変える』同時代社、2009年

          【読書メモ】エリック・ブロナー『フランクフルト学派と批判理論ーー〈疎外〉と〈物象化〉の現代的地平』(白水社、2018年)

           個人的に他人の読書感想文よりもどんなことが書かれているかの方が気になるのでエリック・ブロナー『フランクフルト学派と批判理論ーー〈疎外〉と〈物象化〉の現代的地平』(白水社、2018年)の抜粋メモを作成した。(立命館大学生存学研究所のHPのarsvi.com蔵書検索エンジンのように蔵書と基本情報、抜粋が載っているものをイメージした)  目次情報などについては出版社のリンクを参照。  なお、出版社の本著のページからは訳者解説が全文読むことができ、本著の問題意識や訳者のコメント

          【読書メモ】エリック・ブロナー『フランクフルト学派と批判理論ーー〈疎外〉と〈物象化〉の現代的地平』(白水社、2018年)