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国際ブッカ―賞にノミネート:ノーベル文学賞に繋がるか?金井美恵子は?(令和6年3月29日付「日高新報」掲載ブックレビュー
国際ブッカ―賞という文学賞をご存じだろうか。イギリスの文学賞である。選考の対象となるのは英語以外の言語で書かれて英語に翻訳された作品である。昨年ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセはノルウェー人の劇作家でこの賞を受賞した。つまり原作はノルウェー語というわけである。この賞を取るとノーベル文学賞の可能性が高いということだ。この国際ブッカ―賞に金井美恵子がノミネートされた。つまり、ノーベル賞も取る可能性が出てきたというわけだ。 日本人作家でノーベル文学賞の可能性があるのは村上春
有料100〜割引あり史上最高の投手サチェル・ペイジ「2000勝投手はこうして誕生した」佐山和夫著ブックレビュー・令和6年3月22日「日高新報」掲載
野球において最も偉大なピッチャーは誰かと問われて、サチェル・ペイジと答えることができる人はかなりの大リーグ通である。2000勝もの勝ち星を上げノーヒット・ノーランも100回を超えている。この数字は大リーグだけのものではないが、戦前に存在した黒人リーグとオフシーズンに諸外国を回ったその合計数である。この勝ち星の理由は、黒人リーグでは、ほぼ毎日投げていたからである。しかも1日1試合とかではなく2試合の日もあれば3試合の日もあった。オフシーズンにはメキシコ、キューバ、ハイチ、ドミニ
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傑作ミステリー「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン著・ブックレビュー(令和6年2月23日『日高新報』掲載)
「九マイルは遠すぎる。まして雨の中ならなおさらだ」。 そういって安楽椅子探偵は座ったまま事件を解決した。 ふつう、人はどれくらいかかるのかと訊かれると、 「十マイルくらいかな、とか、二時間ぐらいかかるのかな」とか答えるものだ。九マイルというのは実際に本人が歩いたに違いない。しかも、これから向かうのではなく、こちらに向かって歩いて来たから正確に距離が分かったのだというのである。しかも、雨の中である。歩く理由もまたある。電車もバスもない。つまり、終電が終わって始発もまだ出ていな
有料100三百年の難問!「フェルマーの最終定理」多くの数学者が敗れたのは何故か?ブックレビュー(令和6年2月9日(金)「日高新報」掲載)
受験シーズンである。そこで今回は数学の問題を提議してみようと思う。 その前に著者のサイモン・シンについて少し略歴を記しておこう。 インド系イギリス人としてイギリスの南西部サマーセット州に生まれた彼はケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学を学び博士号を取得する。しかし研究者の道へは進まずイギリスのテレビ局のテレビ局BBCに就職をした。BBCのスタッフとしてドキュメンタリー番組「フェルマーの最終定理ーホライズンシリーズ」を制作し放送することになった。この番組によりドキュ
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ブックレビュー・ある俳人の孤独な晩年・吉村昭著「海も暮れきる」自由律俳句の尾崎放哉を描く(令和5年12月8日高新報に掲載)
俳句というものは五・七・五という世界最小の定型詩であるとして多くの人に知られている。後、決まり事としてはこれに季語を入れるということ。最近では芸能人がこの俳句を作って優劣を競うというテレビ番組まである。 さて、この「海も暮れきる」である。これは小説のタイトルであるが、これを読んで、何かお気づきになることはないだろうか?。もし、あなたが「おや?」と思われたなら、あなたはかなり感性の鋭い、俳句作りに適した才能をお持ちの方かもしれない。 - 海も暮れきるー。 実はこれは俳句な
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