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6年ぶりの新作:村上春樹「街とその不確かな壁」5月10日付「日高新報」掲載ブックレビュー
村上春樹といえば、毎年ノーベル文学賞の候補としてマスコミを賑わせる日本を代表する国体的作家である。ノーベル文学賞発表の日は書店にファンが集まりテレビ局が中継するお馴染みの光景となっている。そのノーベル文学賞を受賞する大きな要因の一つがノーベル図書館における貸し出し冊数だというのはご存じだろうか?。ストックホルムにあるノーベル財団の図書館であるが、この図書館はノーベル財団関係者だけが利用できる図書館ではなく一般の市民も利用できる図書館なのである。ここで毎年どのような作家の本が数多く貸し出しされているかが公表されている。昨年ノーベル文学賞を受賞したノルウェーの劇作家ヨン・フォッセは近々の五年間は必ずベスト5に入っていた。これが重要なのであるが村上春樹の名前は最近は見当たらない。そうはいっても日本では大変人気のある作家である。村上春樹ほどの作家になると作品が出来上がるまで出版社は待ってくれるらしい。前作「騎士団長殺し」から6年後に発表されたのが本作品である。
私が読もうとして和歌山県図書検索システムで検索すると県立図書館には4月14日時点で12件もの予約が入っていた。仕方なく御坊市立図書館で検索してみると幸いにも予約がなかったので早速借りて読んでみた。
ーぼくときみはエッセイコンクールで出会った。ぼくは17歳できみは16歳だった。コンクールは、ぼくは4位できみは5位であった。表彰式では隣同士の席に座っていたのでそれがきっかけで付き合うようになった。公園でのデートのとき、きみはここにいるわたしは影で本当のわたしは壁に囲まれた街にいると言った。その街には誰も働いていない工場と幾つかの集合住宅と本の置いていない図書館があると言った。本当のきみはその図書館で働いているという。そしてぼくにもその図書館で働いて欲しいと言った。ぼくの仕事は図書館に所蔵されている「夢」を読むことだという。そう、図書館でのぼくの仕事は「夢読み」なのだ。
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