【詩】ロックンロールくん
深夜、俺はロックンロールくんに話しかけてみた。
なんで、君はそんなに堂々としていられるんだ、ってな。
そしたら彼は、俺はロックンロールを済ませたからだ、と言う。
そんなところへ閉じ込められて、死ぬのが怖くないのか、と問うと、
俺はこれからもう一度ロックンロールしにいくから、
そんなくだらんことは考えないよ、と言って、ガサゴソと土へ潜った。
さすが王者だなと妙に感心して、俺は眠りについた。
翌朝目を覚ますと、息子が、カブトムシが死んでいると泣いていた。
飼育カゴをのぞくと、オスとメスが重なり合って、オスの方は、足が取れて死んでいた。
敷いていた腐葉土のところどころに、小さな白い粒を確認した。
あぁ、彼のロックンロールだ!彼の生きた結果だ!
俺は、感嘆して、息子のあたまを撫でながら言った。
「泣く必要なんてないじゃないか」
そのオスのカブトムシに<ロックンロール>と命名したのは、俺だったか息子だったか、死んだ後だったかどうか、今ではもう思い出せない。
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